奇怪な三角関係 フッ素と歯,そして原爆

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投稿者 f-poison-alert-net 日時 2001 年 1 月 09 日 14:07:57:

公文書研究はクリフォード・ホニカーによる


 
訳者あとがき 
 
村上 徹
                                      
 本編は、アメリカの環境系の雑誌ザ・ウェイスト・ノット♯414 号( 1997年9 月) に掲
載されたFLUORIDE,TEETH AND ATOMIC BOMBの完訳である。
 ウェイスト・ノット誌はほぼ8 年前より定期的に刊行されている環境問題の専門誌で、ニ
ューズ・レターの形式で年間48回出版されており、海外からも講読することができる。同
誌が現在力を注いでいる問題は、日本でも深刻になりつつあるゴミの焼却で排出されるダイ
オキシンの問題であるが、フッ素にも関心を寄せるようになってきていることは冒頭の「掲
載までのいきさつ」で明らかであろう。同誌の連絡先は次のとおりである。
 
 編集長・Ellen & Paul Connet
 住 所・82 Judson Street, Canton NY 13617 U.S.A.
 Tel  ・315-379-9200
 Fax  ・315-379-0448
 E-mail・wastenot@northnet.org
 
 本原文のコピーライトは、著者であるジョエル・グリフィスとクリス・ブライスン両氏が
所有しており、この翻訳は編集長であるエレン・コネット氏の許可の下に行われた。コネッ
ト氏のご好意に改めて感謝する。
 また、雑誌には掲載されていないが、原文には155頁に及ぶ膨大な証拠書類が添付され
ており、ウェイスト・ノット誌に発注すれば20ドルで入手が可能である。この記事が、わ
が国のジャーナリズムでよく見かけるフィクション混じりの煽情ルポなどと全く類を異にす
るものであるのはこれでも明らかである。アメリカのジャーナリストの良心を見る思いがす
る。
 
             ★    ★    ★
 
 本編は、単にアメリカばかりではなく、世界中の関係者に強い衝撃を与えずにはおかない
だろう。
 フッ素論争の歴史的文献をじっくり検討してみると、日本人にはどうしても納得できない
事項が幾つか浮かびあがってくる。そのうちの一つは、むし歯の予防などといういう保健上
あまり緊急ではない施策が、国際政治が急迫した第2次世界大戦の直前の時代に、なぜ、ア
メリカで、あれほどまでの国家の肩入れの下に「水道フッ素化」となって実施されたのかと
いうことである。そしてもう一つは、戦後の冷戦の時代に、なぜアメリカ政府は、WHO
(世界保健機構)やアメリカ歯科医師会を操って、あれほどまでの知的暴虐や人権侵害を行
ってまでウォルドボット博士らの臨床データを抹殺しようとしたのかということである。
 フッ素の批判者には周知のことであるが、アメリカの医学や歯学の世界でフッ素反対者に
投げつけられる悪罵,中傷、言論弾圧、様々なイヤガラセは、自由を標榜するアメリカで、
しかも、「むし歯予防」の一手法などをめぐって、何故こんな陰険な仕打ちが行なわれるの
か、どう考えても理解できない{1} 。しかし、これは、フッ素がアメリカ軍部の虎の尻尾で
あると分かってみれば理解できよう。
 しかし、奇怪なのは、程度の差こそあれ、わが国の推進者がこのやり口をそっくり真似し
ていることである。
 フッ素批判者として活躍している成田憲一歯科医師の上に、新潟大学堀井欣一教授(当
時)が 昭和63年と平成2年の二度にわたって公然と加えた人権侵害事件については、成
田先生自身が新潟県弁護士会に人権侵害救済の申立てを行い、その結果の同教授に対する
「警告書」の写しとともに、彼自身が直接事実を公開{2}しておられるので改めては言及し
ないが、いやしくも国立大学教授が、研究発表をめぐって村営診療所の勤務医にあからさま
な人権侵害を加えるなどということは、科学の他の分野では決してあり得ぬことであろう。
 また、かつて、フッ素推進者に気鋭な論評を加えて きた高橋晄正氏や柳沢文徳教授(東京
医科歯科大・当時)などが、日本におけるフッ素反対者として、日本歯科医師会の調査をつ
うじてFDI(国際歯科連盟)に氏名を通知されたという事実もあった。アメリカ政府の関
係部局は、フッ素批判者に対して、公然とブラックリストすら作成しているのである{3}。
 また、私は平成7年2月に、沖縄県教組の要請に応じて、那覇市と石垣市でフッ素批判の
講演を行ったが、これに対して、全県的なフッ素洗口運動を企図している沖縄県と新潟県歯
科医師会は、当時群馬県歯科医師会副会長の職にあった私に臆面もなく抗議文めいた公文書
を送りつけ、同時に私の上司であった群馬県歯科医師会会長に対して、暗に、部下である副
会長にフッ素反対の講演をさせるなと言わんばかりの文書までよこした。
 いうまでもなく私の地元の群馬県歯科医師会では、歯科医師としての思想信条は一切自由
であって、ここには会は立ち入らない。当前である。そして、歯科医師の集団である歯科医
師会の内部に、一つの学説をめぐって賛否の意見があれば、その意見はできるだけ公開して
患者側の判断材料とするのが妥当ということになっている。これも当り前だ。そのため、私
は県内外のどこでも要請があれば、フッ素の危険性について講演をする。その依頼者には、
市民の組織もあれば、公的な教育委員会も混じっている。講演者の肩書が会の役員であろう
が、平会員であろうが、そんなことも少しも関係がない。使用する薬物の毒性に目をつむっ
て、いいことづくめの宣伝を行うのは歯科医師の倫理の上からも許されることではないの
だ。
 まだある。朝日新聞社編集委員の長倉 功記者は、長年フッ素問題の取材をしておられる
わが国では数少ないジャーナリストであるが、世評の高かった彼の連載記事「現代養生訓」
に、フッ素には反対意見があると書き、その内容を少し詳しく解説したためか推進派の怒り
を買い、抗議文やカミソリの刃まで送りつけられたという。彼はその記事を本{4}にする際
に、かなりの分量のコメントを書き加え、「フッ素神話を疑う」と題してこの経緯を述べて
いる。
 長倉氏をなだめるわけではないが、日本だから氏はカミソリの刃程度で済んでいるので、
アメリカだったら、おそらくクビがとぶ騒ぎになったかもしれない。フッ素の歴史には、そ
んな受難劇の被災者が累々と横たわっている。そして、その原因がどこにあったのかを、こ
の原文が世界で初めて明快に抉り出したのである。

 むし歯予防に使用されるフッ素の安全性が、「原爆」製造のマンハッタン計画を裁判から
守るために案出されたなどと、一体、誰に想像できただろう。まさに、事実は小説よりも怪
奇である。そして、フッ素に関しては、世界的権威者で通っているホッジやディーンが、深
くその極秘計画に関与していたことなど、著者らが丹念に収集した証拠書類がなければ、お
そらく誰一人信用しないに違いない。

 1988年に、アメリカ最大の学術団体であるアメリカ化学学会の機関誌「ケミカル・ア
ンド・エンジニヤリング・ニュース」は、特集としてフッ素問題に関する長大な特報論文
{5}を掲載し、「フッ素の安全性など確立されているどころか、40年以上放ったらかしに
されたままだ」と厳しくアメリカ政府を論難するとともに、フッ素にまつわる様々な暗黒面
を容赦なく抉り出した。この記事は、アメリカの理系の知識人に衝撃を与えるとともにマス
コミをも動かし、幾つもの全国紙が「フッ素は悪質な科学を育てた」(クリスチャン・サイ
エンス・モニター紙)というような記事を掲げた。フッ素の問題を歯科という狭い世界に閉
じ込めておかぬために、私は出来る限り忠実に、これらの動きをわが国に伝えてきた。
 しかし、本稿を読めば、フッ素の安全性などは「放ったらかしにされた」どころか初めか
ら意図的に捏造されたものであり、政府各機関も総力をあげてこれに加担してきたことが明
らかである。その目的は、原爆という最高の国家機密をあくまで護持するためであった。当
時アメリカにおいてフッ素中毒に関する最高の治療者であったウォルドボット博士の幾多の
臨床的データを、保健行政当局らがやっきになって否定し、手先をつとめるアメリカ歯科医
師会に機関誌で人格攻撃まで行わせて博士を封殺しようとした理由はまさにここにあったの
であろう。

 この壮大なドキュメントの前には、一介の歯科医師にすぎぬ私は、ただ言葉を失うだけで
ある。政治と科学、官僚と科学などについて、この記事から派生してくる深刻な事象はおそ
らく山のようにある筈であるが、今、私がそんな事についてあれこれ口 走ってみても、確か
な意味などとても出てくるまい、そんな気がしてならない。
 フッ素問題に人生をかけて行政と対決しているジョン・イアムイアニス博士は、この点に
関して「科学は死滅した」{6}と断言し、故ジョージ・ウォルドボット博士は、フッ素に関
する行政を「汚辱にまみれた歴史」{7}と痛憤した。前記アメリカ化学学会の論文は、数あ
る環境汚染物質のうちフッ素だけが何故か政府によって特別扱いにされている実態を指摘し
たが、今にして思えばじつに慧眼といわざるを得ない。
 フッ素の安全性を世界中に力説してまわったホッジもディーンも、所詮は国家権力に奉仕
して自己保存を計る官僚であり、人間に奉仕する科学者などではなかったのだ。科学的真実
など、政治の前ではどうにでも曲げてみせる人間にすぎなかったのである。如何に精密な論
文の体裁を装っていようと、彼らの業績など、今日の科学としては一文の価値もないもの
だ。そう考えておく方がよい。
 私はしきりにそんな事を思っている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
訳者による脚注
1 この中国の疫学研究とは、次の文献を指すものと思われる。
  Li,XS.,Zhi,J.L.,Gao,R.O.: Effect of Fluoride Exposure on Intelligence of
Children, Fluoride 28,4;189-192, 1995.
2 この研究結果と科学雑誌とは、次の文献を指すものと思われる。
Mullenix,P.J.,Denbesten,P.K.,Schunior,A.,Kernan,W.:Neurotoxicity of Sodium
Fluoride in Rat, Neurotoxicology and Teratology 17,2;169-177,1995.
 
3 ここで何故フッ素が原爆の製造と関係するのか、簡単に解説する。
 鉱石として採掘される天然ウランは殆どがU238であるが、0.7%の割合で同位体のU235
が存在する。原爆に必要な核分裂に利用できるのはこのU235だけである。従って、多量の
U235を取り出すためには、この0.7%の割合を化学的操作で増加させる、つまり濃縮する必
要がある。このために考案されたのが、ウランをフッ化水素と化合させて気体の6フッ化ウ
ラン〔暗号名ヘクス〕にし、比重の差を利用してU235をU238と分離する方法である。こ
の方法はニールス・ボーアでさえ「合衆国を一つの巨大な工場にしてしまわないかぎり無理
だ」と思っていたというが、原爆の製造に関与した多くの天才的頭脳がこれを可能にした。
ちなみに、ヒロシマに投下された原爆の純U235の総量は64kgであった。(リチャード・ロ
ーズ、原子爆弾の誕生・上・紀伊國屋書店・1995年と、同著者(Richard Rhodes)DARK
SUN The making of the hydrogen bomb, TOUCHSTONE, 1996を参照) 。
 ここで著者が述べているのは、マンハッタン計画のために化学会社のデュポンがウラン濃
縮に必要な何百万ポンドのもフッ化水素の製造を請け負い、それが漏洩して作業員や工場の
周辺に深刻な公害を引き起こしたという、このフッ化水素の製造にまつわる秘話なのであ
る。
 さて、U235を分離した残りカスのU238は、当面何の利用価値もないまま廃棄物として
夥しい量が放置されていたが、固くて重い性質に着目され、最近になって無料で企業に払下
げられ、金属に精錬されて砲弾や戦車の装甲に使用されるようになった。これが劣化ウラン
である。
 劣化ウラン弾はイラクとの湾岸戦争で始めて大量に使用され、目を見張るような戦果をあ
げたのは日本でもよく知られていよう。厄介なことにこの劣化ウランには、余り強くはない
ものの放射能があり、その半減期は何と45億年である。
 現在、湾岸戦争の被災者や当事国の兵士に「ガルフワォー・シンドローム」という深刻な
健康傷害が起こりつつあるのは、この時の爆弾や砲弾の爆発から超微粒子となって飛び散っ
た劣化ウランを摂取したためであるが、何しろ大量に使用され、しかも半減期が45億年な
ので、全地球がやがてこれに汚染されるのは目に見えている。湾岸戦争がもう一つの核戦争
と言われ、アメリカの知識人らが問題にしつつある所以であるが、わが国でこの実体が殆ど
知られていないのはフッ素問題と同様であろう。( 新倉 修/ 監訳・劣化ウラン弾・日本評
論社・1998年を参照 )
 




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