投稿者 SP' 日時 2001 年 5 月 15 日 08:23:11:
回答先: 悪の世の写し鏡 投稿者 SP' 日時 2001 年 1 月 18 日 09:23:50:
(原題 「意外な組合せに新事実続出──統一教会とオウム真理教が急接近」)
『「オウム真理教」追跡2200日』(江川紹子著、文藝春秋、1995年)第三章より。
資産家拉致事件で、なぜか統一教会系の『世界日報』が全面擁護の記事を掲載した。勧誘方法でも奇妙な類似点がみられるのは何故? |
●統一教会信者ライターによるオウム擁護記事
A氏とは、この事件の被害者で宮崎県で旅館を営むXさん(63)のこと。四人の娘のうち、次女と三女、それに次女の夫が熱心なオウム真理教の信者となっていたが、今年三月、Xさんの土地が売れて六千四百万円が入ることになった直後、次女やオウム関係者によって東京に運ばれ、約五カ月間オウムの施設内に軟禁されていた。オウム側は「Xさんは病気だった」「Xさんはたくさんの持病を治してもらったと感謝していた」と主張するが、Xさん自身は記者会見やテレビのインタビューなどでも「帰りたくても帰れない状況だった」「オウムは地獄のような所だった」などと繰り返し述べてきた。
にもかかわらず、『世界日報』記事では〈オウム側の多数の証言によると、退院するとき父母ともに感謝し喜んで帰ったというのである〉など、被害者Xさんの証言には、まるで耳を傾けようともしない。しかもその内容たるや、事実に反していたり、細かい部分的な事柄をことさらに誇張したり、歪曲する記述が多い。
特に、長女夫妻や四女らの方がXさんの財産を狙っていたという主張をするあたりになると、にわかに矛盾した記述が繰り返されることになる。
オウム真理教が自分の財産を狙っていると感じていたXさんは、自分自身がある銀行の地元支店に出向かない限り、預金を下ろせない措置を取っていた。しかしオウムの施設内で次女が強く求めてきたため、やむをえず、一部に限りこの措置を解くことを了承。三女らがその金を下ろした際、四女は「これはお父さんのお金だから、お父さんの意思を確認して、直接渡す」と預かっている。
その金の行方について、『世界日報』の記述はこうだ。
〈「文春」にも書いてある通り、四女が持ち逃げしたままであって、いまだに返してこない〉
この記述部分には、二つの大きな過ちがある。第一に、『週刊文春』では四女が持ち逃げしたなどと書いていない。もちろんそんな事実もない。
第二に、この金は父親のものであり、四女が渡すべきは父親に対してである。次女や三女、ましてやオウム真理教に「返す」義理も義務もない。しかも現実に金は父親の元にすでに戻っているのだから、第三者がとやかく言う筋合いのことではないのだ。この金をオウムに渡すかどうかは父親の意思の問題であって、本人は「オウムには一銭も渡したくない」と言明している。
このほか同新聞は、長女の夫や四女の人格を散々けなしているが、いちいち反論していたらきりがないほどだ。
この記事を書いたのは、黛建文(本名・亨)・宗教新聞編集長。同氏は『宗教新聞』でも連載記事三回、社説一回を費やして、同様のオウム擁護のキャンペーンを張った人物である。
「苦しんでいる人を助けるのは当然でしょう。正しい動機であれば多少はみ出す面があってもいい、と思っている」と、黛編集長は、最初からオウムを擁護するつもりで記事を書いたことを認めている。
本誌を批判していながら、本誌編集部に取材を申し込むことさえ行っていない。それに関しては、「私もやらなきゃいけないとは思ったけど、時間がなくて……」と取材の杜撰さは自覚しているらしい。
黛氏は、麻原彰晃教祖をはじめ、オウム幹部には何度も会い、「あの人はヨガや仏教をまじめに考えている。この記事が出て、オウムの人たちは大変喜んでくれましたよ。私も功徳を積んだと思った」と手放しの褒めようだ。
この黛氏は、一九七〇年に韓国・ソウルで行われた七七七組合同結婚式に参加した、熱心な統一教会信者だ。また、宗教新聞社自体も社是の一つに、統一教会の目標である「地上天国の建設」を掲げている。ある宗教ジャーナリストは、「宗教新聞は統一教会の諸宗派対策を目的とした新聞です」と断言する。
黛氏自身、「記事については統一教会の指示はない」としながらも、「統一教会は、すべての宗教を統一するということを言っている。それは宗教同士手をつなぐということ」と、『宗教新聞』の方針に統一教会の考えが色濃く反映していることは認めている。
ちなみに、統一教会信者が宗教統一のための活動の一環として、別の宗教団体に入り込んだという事実もある。
「教団復帰(他教団を統一教会の支配下に置くこと)をめざしていることは、よく聞かされていました」(元信者)
●暗躍するオウムのダミーサークル
『世界日報』が統一教会系のメディアであることは周知の事実。要するに、一連の記事は、統一教会サイドからオウム真理教への「共闘宣言」とも読み取ることができるのだ。
これら統一教会系のメディアが、なぜここまでオウム擁護を展開するのか。
もちろんオウム真理教と統一教会とは、別個の独立した宗教団体である。ところが、最近オウム真理教にいささか気になる変化がある。新入会員の勧誘方法が、統一教会のやり方と似てきているのだ。
今年、早稲田大学の学園祭に『日本印度化計画』なるサークルが参加していた。校舎内に、インド風のミルクティーや揚げパイを売ったり、占いをやったりする店を出した。占いはアンケートに答える形で、「現在気にかかっている、あるいは興味ある項目に○をつけて下さい。複数可」として「対人関係、美容、健康、恋愛
、性格改善(後略)」などの選択肢が列挙され、「今の自分に満足していますか。また環境や性格を含めて今の自分を変えられる、変えてみたいと思いますか」などといった質問が十一項目並んでいる。
店内の様子は一見、ごく普通のサークルのようだ。宗教色など一切見られない。しかし、現実はオウム真理教の新会員を勧誘する、一種のダミーサークルなのである。
昨年も東大、早稲田などの学園祭で、同様のサークルがコーナーを作った。ある大学の学園祭で、その占いを見て貰った私立女子大生の体験はこうだ。
「普通のサークルだと思ったんです。その時住所や電話番号を書かされて、後日『占いの結果を教えるから』と誘いがありました。最初ちょっと胡散臭いなと思って、『宗教じゃないんですか』と聞いたら、『そんなんじゃないわよ』と。それでもいったんは断ったんですけど、今度は男の人から電話がかかってきました。押しが強いというか、何となく断れなくて会う約束をしてしまいました」
その男性は、K・Mと名乗り東大OBだと自己紹介した。雑談をしているうちにヨガ教室に参加するようになり、さらに学生サークルにも勧誘され、その後勧められるままにオウム真理教の会員となった。
オウム系のサークルは学園祭のシーズン以外でも活動している。大学構内にチラシを貼り、学生たちを勧誘するのだ。
●ビデオを見てすごく不安に
都内の私大生B君は、今年六月、ヨガ・気功のサークル「アシュラム'94」のビラを見て、電話をかけた。
「K・Mという男の人が出て、自分が責任者だと言っていました。大学の近くのセミナーハウスに週一、二回通ってヨガを習ったり、そのうち駒場にあるK・Mさんの家に連れて行かれました。目につく場所にオウムっぽいものはなかったけど、二階には絶対上がらせてくれなかった。後から分かったんですけど、オウムに関するモノは全部二階にあって、信者にならないと上げてもらえないんですよね」
「K・Mさんの家」というのは、東京・駒場の東大教養学部近くのマンションだが、実際の借り手はK・M氏でなく、オウム真理教の幹部。東大生と英語塾を開くという名目で借りている。東大OBを自称するK・M氏も、「その名前の人物が入学した記録はない」(東大教養学部)。
この部屋で、最近勧誘されたほとんどの学生が、同じビデオを見せられている。全体で約二時間だが、どこにもオウム真理教の名は出てこない。
その冒頭と末尾には、若者たちの関心を集めた尾崎豊の死が、無断使用のコンサートフィルムの映像をまじえて取り上げられている。ストーリーは、尾崎はアメリカによる日本崩壊のシナリオを見抜いていたために狙われ、CIAが金と永住権をエサに繁美夫人を丸め込み、結局彼は殺されたというものだ。
そしてビデオは、「(この現状に対し)僕たちはなすすべはないのか。いや、そんなことはない」と、何やら救いの道を匂わす言葉で終わる。ストーリーそのものは荒唐無稽だが、オウムの信者と一緒に見せられると、全く印象が違うらしい。B君はこれを見て「すごく不安になった」と言う。
宗教名を隠し、ビデオセンターなど教団管理の施設内でビデオを見せ、不安感や危機感を煽るのは統一教会の勧誘の常套手段でもある。
●「前世、君は僕の妻だった」
B君は八月初めに行われた、四泊五日の合宿に参加した。
「途中でひょっとしてオウムかなとも思ったりはしましたけど、合宿に行っている間はすごく不安感を煽られていたし、あまり考える余裕がなくて、いま日本を救えるのはここだけじゃないかという気になった。自宅に帰るとなんだか変だなと思うんですけど、またアシュラムに行くと気持ちが引き戻されて、その繰り返しでした。危機が迫っていると不安だったし、ここなら空疎な日常を打ち破ってくれるんじゃないかという期待や怖いモノ見たさのようなものもあって、結局オウムに入会しました」
ビデオの次に合宿というのも、統一教会の典型的な勧誘の手順と同じだ。
教団名を名乗らないまま、罪の意識を植え付け、危機感を煽り、この危機から脱出する道は一つしかないと、入信以外に実質的に選択肢がないような心境に追いつめていく場が、統一教会の合宿だ。
国立大生のC子さんの場合、二月に『日本印度化計画』のビラを見て、参加するようになった。やはり「K・Mさんの自宅」でカレーを作ったり、ヨーガやフリーメーソンの話を聞いたりした。
「サークルの雰囲気は和やかだったし、K・Mさんからは『何か聞きたいことはない?』とか『何か悩んでいることはない?』とかしょっちゅう電話がかかってきました。『前世、君は僕の妻だった』とも言われたし、すごく親身になってくれるという気がしたんですけど、この人、いろんな女の子にそう言ってたんですよね」
その後C子さんは、サークルで知り合った女性と一緒にオウム真理教の道場に連れて行かれ、初めてオウムと知った。
「彼女はサクラだったんです。本当はすでにオウムの信者だったのに、『へー、オウムだったんだ』とか初めて来たみたいなことを言っていました。その時お金を持っていないと言ったら、彼女が貸してくれて、結局入会金を払いました」
私大生D子さんも、ビラを見て『日本印度化計画』に入った一人。
「途中でオウムかなと疑ったことはありました。九月になってからです。やたらと超能力を売り物にしているし、宮崎の資産家監禁事件を報じるテレビ番組でその資産家がオウムにいる間に喋ったテープが流されていたんですけど、その後ろで流れていた音楽が、K・Mさんの所で聞いていたリラクゼーションテープと同じだったんですよね。以前私も買いたいなと思ったことがあったんですけど、K・Mさんが『これは非売品だ』と。非売品のテープがなぜオウムで使われているのか、と考えると何かおかしいなと思いました。最初からオウムだと知っていたら、私は関わらなかったんですけど」
教団側は「各信者の自主的な判断に任せているので、すべての信者の勧誘活動について、教団としてすべて把握しているわけではない」というが、一連の勧誘はかなり組織的だ。
それにしてもサークルでは、なぜ最初にオウム真理教との関わりを隠すのか。私大生E子さんは、今年四月に新入生の勧誘活動の手伝いをするよう指示された時、先輩会員に聞いてみたところ、こんな言葉が返ってきた。
「(オウムと)言ったら誰も来ないじゃない。まず『日本印度化計画』に入れて、たくさんオウムに入れるんだから」
かつてのオウム真理教の信者は、書店で本を買った人が自分の方から問い合わせて入信したり、知り合いの信者に誘われて道場に通うようになる、といった形がほとんどだった。大学内で学園祭の時にオウムの名前を伏せたサークルで催しをやることもあったが、それは学校当局の目を欺くため。校内で麻原教祖の講演会を開き、教団をPRすることが目的
のサークル活動で、実質的にはオウム真理教であることを隠すことはなかった。
今はまるで逆だ。「オウムと言わずに導く方法」なるマニュアルまで出回っている。教団側は「当教団が発行したものではありません」と言うが、実際に元信者が持っていたものだ。統一教会でも、個々の信者や地区などが、教団の基本方針に基づいて個別に独自のマニュアルや資料を作ることはよくある。
このマニュアルはまず、〈なぜ今導かなければならないのかを常に意識する。動機づけをしっかりする〉などと勧誘の心構えを示し、勧誘相手のリストを作り実際の対応をしていくまでの方法を説明。〈「誰でも真理の実践をしなければ、いつかは必ず苦しみが生じるんだ」と考える。たとえ現在幸福であっても、例外ではない〉とし、現在悩みを持つ者に対しては〈苦しみを脱却する道〉を説き、なんの悩みも持っていない人には〈楽の裏側の苦しみ〉に気づかせるか、〈今以上の喜びがあること〉を説くように勧めている*1。
●「全く関係なし」とオウム
このような勧誘方法は、統一教会ではお馴染みの手法である。マニュアルの内容は、統一教会がFF伝道と呼ぶ方法と、用語が違うだけでほとんど同じであり、サークル伝道も統一教会ではかなり行われてきた。
霊感商法で霊能者役まで経験した元統一教会信者は、サークル伝道の目的は二つあった、と証言する。
「一切宗教色を出さないけれど、占いとか自己啓発とか、宗教に行くまであと一歩という段階のサークルで、人間関係を作り上げて、相手の情をつかむわけです。悩み弱みもつかむ。人間関係さえできればしめたものです。サークルは、献身(仕事や学業を捨てて統一教会の活動に専念すること)してバリバリやるのに向いた人とそうでない人とを見分け、選別する場でもあるんですね。この人は向かないと思ったら、それ以上勧誘はせず、経済要員として宝石や着物の展示即売会などに誘ったりするのにとどめるわけです」
両教団とも、問題行為が批判されると、必ずといっていいほど「信教の自由」を持ち出す。しかし、肝心の入口の所で教団の名前を隠し、相手を騙して誘い込み、悩みを聞き出したり、相手の不安感を煽って心を支配し、宗教団体に誘い込むという方法こそ、宗教を自由に選択し、信じる権利を侵す、まさに詐欺的勧誘といえるのではないか。
統一教会の場合、一九八二年秋から教団名を隠した勧誘方法をとるようになった。オウム真理教の場合も、新会員を増やすために、統一教会のやり方をまねたと見られても仕方がない。
ただここで疑問なのは、ここまでそっくりの手法をどうして会得したのだろうか、という点だ。オウム真理教外報部は「当教団と統一教会は全く関係がない」。統一教会は「オウム真理教との間にはなんら特別な関係はありません」と否定しつつ、「宗教は統一されるべきであるという立場に立ち、あらゆる宗教団体と垣根を作らず話し合い、互いの接点を求めています」(広報部)と語る*2。
しかしその一方で、気になる情報もある。統一教会幹部がオウムの麻原教祖と会談したことがある、というのだ。
「確かに私どもの幹部は麻原さんに会っています。宗教的に立派な人だと評価しております」(統一教会員)
*1 | =導き。勧誘に関しては、麻原教祖が「狂気の救済者になれ」と檄を飛ばし、信者を煽っている。教団自身もそのためのハウツーパンフレットを作っている。その一つ『マハーヤーナ2』では、勧誘を十段階に分けて、細かく方法を指導。例えば次のような調子だ。 〈◎導きのステップ3 誰を導くか─百名リストアップ (前略) オウム真理教の話をするということをいっさい忘れて、縁ある知人・友人リストを作りましょう。「あの人だったらいいだろう」などということはいっさい考えずに、自分の生きてきた人生の中から「こんにちは、○○です」とあいさつできる人をすべて挙げるのです。ポイントは年賀状でも書くつもりでリストアップすることです。たくさんの人が浮かんできたでしょう? ◎導きのステップ4 約束する─電話でアポをとる これは最も重要なステップです。ちゅうちょしながら電話をかけて、何か世間話で終わってしまって「ああ、今日も誘えなかった……」ガチャン、という経験はありませんか? 大切なのは、とにかく「会う約束をする」ことです。今日は何が何でも約束を取るぞ、というときには世間話はいりません。電話をしたら、「とにかく会おう」ということで約束します。このときに外してはならないポイントを四つ挙げましょう。 1 勇気(略) 2 主導権を取る(略) 3 電話では内容をいっさい話さない 「とにかく会おう、話があるから」と言ったとき、当然相手は「なになに?」と聞いてくるでしょう。ここで、オウム真理教のことはいっさい話しません。「やあ、ちょっと、真理の話をしたいので……」などというのもだめ。内容に関連することはいっさい話してはいけません。オウム真理教と言わなくても、「それって、宗教なんじゃないの?」などと言って会う前に拒絶されたのでは元も子もありません。「今はちょっと時間がないから」などと言って会う約束だけを取り付けます。 4 できる限り早く会える日をつくる(以下すべて略)〉 このパンフレットは、勧誘の実績のある「導きの達人」の体験談なども紹介している。 勧誘に成功した者にはご褒美も用意されている。 〈導きの功徳を積まれた方に、その功徳を称えて、導いた人数に応じたイニシエーションが授与されます〉として、次のような賞品が用意されている。この賞品は二つのコースから選ぶことができ、マハーヤーナ選択では〈導き一名ごとに、尊師のマントラで特別に修法された帰依を表す青い数珠、または尊師の二十六曲集(江川注・教祖の歌)のテープから一曲が授与されます〉とのこと。 |
*2< /FONT> | =その後オウム真理教は、統一教会の文鮮明教祖について、「フリーメーソンの一員」であり、「世界各国で今日も、従順に言うことを聞く『家畜』を製造し続けている」「家畜の父」と批難。統一教会側もオウム真理教に対する疑惑が高まり、強制捜査が入るや、改めてオウムとの関連性を強く否定し、むしろオウム批判の論調となっている。 |