万引き少年の警告

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投稿者 Boy 日時 2000 年 11 月 23 日 16:16:49:

万引き少年の警告
2000.11.9

著作者はゆとじである。


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なんでだろうな?
いつからか、オレはこんなに世の中の事を考えるようになっていた。
なんだか、この世の人達みんなに話してきたくなった。
でも、オレが気が付いた事は当たり前の事なのか?
オレがただやっとその事に気が付いた、というわけで、実際この世の人達はみんなわかっているのか?
わかっているかもしれないな。
でも、わかっていながら身を流れに任せているのか?
そうなのか?そんなもんなのか?人間って。。

ああ、ええと、じゃぁまず何から話そうか。
最初から話さないと、オレの想った事は上手く説明できないよな。
まず、最初に行っておく。
オレは万引きのプロだった。プロっていうのもなんだかおかしいけど。
自分で言うのもなんだかてれるけど、オレは万引きを極めまくってた。
オレにパクれないものはなかった。(パクる→万引きする)
スーパーにある商品すべてがオレの手中にあるんだ。
食品売り場に並ぶ、様々な食べ物。。。
本屋売り場に並ぶ色とりどりの本。。
ゲーム売り場に並ぶ警報機つきのソフト。。
洋服売り場のあざやかな服。。
なんでもタダで手に入れる事が出きる。
オレがあんなになったのはまず4ヶ月くらい前の頃からだ。

・・・オレは緊張している。
誰かこっち見てないかな?
いや、あんまり見すぎると怪しまれる・・
オレはスーパーの本屋売り場のすみっこに、一冊のマンガを持って立っていた。
ちょうど今、まわりには人がいない。
背中の方には本屋のレジがあり、店員がいる。
本屋に入った時点で、天上にカメラが無いかは見まわして確認した。
問題は店員だけだ!!
オレは別に金に困っていたり、特にめちゃめちゃ本が欲しかったわけではない。
ただ単に、学校の友達が万引きをしまくっていて、色んなものを見せびらかしてくるもんだから、自分もとってみたい、と思ったのだ。
”「絶対不可能」と言われているモノを盗み出す怪盗”
そんなイメージにあこがれている部分があった。
オレはマンガが好きだ。
本屋にならぶ色とりどりのマンガ。
新刊からシリーズもの、キレイにそろって並んでいる。
その美しさは壮大だ。
眺めているだけでうっとりするようにきれいにあざやかにそしてかっこよく並ぶ本達。
ある日いつものように本屋にきて、そんなものを眺めている時、ふと例の友達の言っていた言葉が思い浮かんだのだ。
「あそこの本屋、余裕余裕♪店員ほとんど見てないし、端っこにいってレジの方にちょうど背中向けて、さっと服のなかに入れて普通に出ていったら余裕でGET~♪」
そして、気が付けばマンガを一冊持ちながら、本屋の端っこに、レジを背中に立っている。
こんなに緊張した事は無い。
長い間、オレはそこに立っていた。
実際、数分だったかもしれないが、オレには1時間くらいに感じた。
よし、いれるぞ。上着の服の中に下からサッと本を入れて、ずぼんの中に入れて固定する。
そして、さりげなく出ていくんだ!
何度も何度も入れようとする。入れるぞ!
しかし、後ろから見られているという圧迫感がして、ためらう。
ふと後ろを向こうと思うが、コソコソ辺りを見まわしていたら、余計怪しまれる。
今日はやめておこうか・・・
いや、客は今いない!!今しかないんだ!!こんなチャンスは二度と来ないぞ!
オレは自分に勇気を振るわせた。
オレの服の中はまさに汗でべっとり。
心臓はドキドキ。
何度も何度もためらって、ついに、ついにオレは服の中に本を入れた・・・・
ゴクン。
オレの喉を通るつばが、ものすごく大きく聞こえた。
入れた・・入れたぞ。
とてつもなく緊張しながら、オレはそぉっと後ろを向いた。
ここで店員に見られていたら・・
どうしよう。。
おそるおそる振り向くオレの結果は、
大丈夫だった。
店員は、気にもせずぼぉーっと洋服売り場の方を見ていた。
ふぅーー
オレは心の中で大きくためいきをして、ゆっくりと店を出ていった。
店を出る瞬間も、誰かにつけられている感じがしてあせった。
店を出たが、誰にも止められなかった。
やった!やったぞ!!
しかし、まだ油断はできなかった。
家に帰るまでの自転車での道でも、何度も振り返った。
実は店員はオレの家を突き止めてから、オレの家へのりこんでくるのではないか!?
とかなり用心していた。
家に無事到着したオレ。
オレの心の緊張の塊が、一気に解放された。
オレはやった。
ついにやった。
オレは一冊の本を万引きしたという、緊張からの解放感と、やったという達成感と満足感。
オレは生きている幸福を実感できた。
その後オレは夢中でそのマンガを読んでいたが、マンガの内容より、「これをやった!」という達成感がとてつもなく嬉しかった。

次の日から、オレの万引き日誌が始まった。
もう一度同じ本屋に行き、本を一冊パクる。
昨日とは断然と違うが、まだ少し緊張が解けていなかった。
最初の方はマンガしかパクらなかった。
1冊。
2冊。
3日。
4日。
日がたつにつれ、オレの余裕は増していった。
初めての時は1時間ほどかかったのに、もう今では一瞬だ。
普通に、本を棚からとる。
そして本の表紙や値段を見て、また元に戻す。
はたから見れば、そんな普通にある情景に見えただろう。
実際には、2冊とって、さりげなく1冊を左手にもって、右手でもう1冊を持つ。
右手にある本の表紙や裏に書いてるストーリーのあらすじ、それを丹念に見ているように見せながら、左手の本を見えないように左腰の方から服の中に入れていく。
普通にやる動作と、パクってる(万引きしてる)動作を、他人から見たら全く同じように見せなくちゃいけないんだ。
オレは回数を重ねる内になれていった。
一回行くにつき1冊だったのが、いつのまにか一回行ったら5冊はパクっていた。
そして、パクり終わった後は、満足だった。
本当は何百円もする高価な本が、たったの0円でオレの手に入るのだ。
オレの本だなのマンガはすさまじく増えていった。
オレは本以外にも、服、食べ物、ゲーム、と、どんどん手を伸ばしていった。
それぞれパクるものによってやり方が違ってくるが、どんどん上達していった。
増えるかばん。
増える洋服。
結構大きいものでも 、大きなかばんを利用したら余裕だった。
増えるお菓子。
増えるゲーム。
オレは、いれる瞬間がうまかった。服もどんどんそろっていった。
昔なら、1つの服を買うのに、何度も何度も悩んで悩んだあげく、大事な大金をはたいて手に入れたものだ。
今思うと馬鹿らしい。
こんなに簡単に無料で手に入れる事ができるのに、今まで買ってて損した・・・
そしてオレは万引きを完璧にこなせるようになった。
オレの寂しかったたんすには、カッコイイ上等の服が並ぶようになった。
とぎれとぎれに集めたマンガも、すべてシリーズそろっていった。
そしてサイフの中身は減らない。
オレの物質は増えていく。
ゲームソフト。
時計。
ビデオ。
サイフ。
音楽CD。
本。
服。
MDウォークマン。
ブランド。
様々なスーパーや専門店を回り、すべてを観察そして暗記。
カメラの位置店員の位置。
死角。
タイミング。
よし!
オレの部屋はどんどんにぎやかになっていた。
普通に買ったら5万する手袋。
普通に買ったら2万はする時計。
色んな店を回り、様々な品を手に入れる俺。
すべて無料。
そして増える罪。


いつからか、次第にオレはある事に気が付いていたのだ。。。
パクった瞬間はすごい得した気分♪
高価な物をタダで手に入れたんだからな。
しかし、オレはだんだん虚しくなっていくばっかりだった。
高価なものを無料で手に入れて、満足していると思いながら、心のどこかで虚しさを隠していた。
オレは物を大切にしなくなった。
どんなものでもタダで手に入るんだから。
いくら壊れても次があるんだから。
物をパクっても嬉しさがわいてこなくなってきた。
なぜだろう。
最初は、有料のものを無料で手にいれたという事が嬉しかった。
得をしているんだ。
なのになんでだろう?
なんだか寂しい。
オレは物に対する大切さや、愛着がなくなっている事に気がついた。
自分が苦労して貯めたお金をはたいてまで”買った”、ものは必ず大切にする。
でも、同じ物にしても、タダ無料同然で手に入れた物を大切にするわけがない。
言ってみれば当たり前だ。
お金を出して買った物の方が大切にしたいと思うに決まっている。
タダで手に入れたもの、しかもそれがなくなってもまたタダで手に入れる事ができるものを、どうして大切に扱えるだろうか?・・・
オレは一日、じっくり考えてみる事にした。
オレはこんなに服を持っている。
でも、全部パクったやつだ。
もしこれが全部自分の貯金で買ったものだったら?
もうめちゃくちゃ大切に扱うだろうな。。。
そうだ。
買ったものには、自分が一生懸命働いて貯めたお金と交換したという“こころ”が入ってるからだ。
同じ服にしても、買った服だと、「自分が1ヶ月バイトで一生懸命働いた」という気持ちが入っているんだ。
ただの服にしても、買った人の苦労の気持ちが入っているんだ。
自分の“一生懸命苦労したという気持ち”を物にかえる事が、どうやら“買う”という事らしい。
買った“物”は、自分の努力の気持ちの結晶なのだ。
同じ服にしても、オレの服には“気持ち”がない。
自分で貯めたお金をはたいてまで買ったという“気持ち”がない。
だから、その服を持っていても嬉しくなかったし、大切にしようとする気持ちもうまれてこなかったのだろう。
みんなは、物をただお金で買っているのではなく、“一生懸命働いた”という気持ちの結晶を、物に詰め込んでいるんだと思う。
オレにはその気持ちがなかった。
だから、いくら物を手に入れても虚しいだけだったのだ。。。。


オレはあの時以来、万引きをやめた。
人のためにというのもあるが、自分のためにもやめたのだ。
「買う」という行為は、自分の「気持ち」があってこそ、できるものなんだ。
だから、人はショッピングを楽しみ、買うという行為をしているんだろう。


ここまではオレのなんていうかいい話、みたいな感じの話だ。
あの時に気が付いたおかげで、オレは寂しい人間にならずにすんだ。
オレの“買う”という事に対してもう理解してくれた人はもうこれでいいのだが、オレはその後色んな批判的な事を思うようになっていった。。。
「買う」っていうのはただ自分自身の満足感を満たすだけの・・・・
こっから後は、ゆっくりと考えながら読んでいって下さい。

あん時以来、オレはこの世の中に対して考え事をする事が多くなった。
色々な事に気が付いて言ったのである。

わざわざ高価なブランド品を買う人がいる。
普通の1000円のかばんを買ったらいいのに、10万もするかなり高価なバッグを買う人がいるようだ。
見た目なんかほとんど変わらないし、10万の方が特別に便利な機能が付いてるわけでもないのに。
かばんといえば物を入れるものだ。
1000円で十分に使えるものが手に入るのに、なぜ10万まで人は出すのか。
それは満足感だ。
わざわざ10万円というとてつもなく高い品物を買ったという満足感。
そこにそのかばんがあって、「これは10万円のバッグ♪」と思うだけで、満足する。
実際にはたいして普通のと変わらないのに。

現代人は要らないものを買い過ぎだと思う。
家具にしても、本当に必要な物まで買っている。
大金を出して、その大金の変わりの物を手に入れて自己満足しているのだ。

景気が悪いならなおさら。
「この大変な世の中で、ちびちび汗水ながして働いたお金で買った高価な洋服♪」
そう思うだけで、その服を着るとたまらないほどの満足感を得て、なぜか自分が偉く感じられる。
その服を着て町を歩くだけで、優越感を感じる。
そんな風に人は要らないものをどんどん買い、そして捨てる。

「あらまぁ、いつも20000円もする服が、今日は大安売りで6000円よ!!14000も安いわ!!」
いつも2万円の服を、安売りで6千円で手に入れた?だから1万4千円分も得をしたと思ってる??
それは違う。
あなたはただ消費社会の陰謀にはまって、ただ6千円損しただけだ。
そしてその服を「1万4千円分得した服」と思いこみ、いや実際に思っていなくても自分でも気が付かないうちに心のどこかで思っていて、満足している。
そして翌年の粗大ゴミの日に当然のように捨てられている。
そしてまた新しい服を買う。
その繰り返しだ。
ほとんどの人間がそのサークルの波にのっている。
自分自身からのっているのだ。
残るのは自分の損とそして捨てられた服。
地球の自然物をもぎ取って改 造し、売る。
買った方はまたすぐに捨てて新しいのを買う。
地球の資源は減ってゆき、人工的に作られた廃棄物がただただ増えていく。。。

オレは万引きをしだしたのをきっかけにその事に気付き始めた。

自分の金と交換した、高級な家具ブランド洋服に囲まれて、満足して生きていく哀れな人達。
そしてぷらぷらとスーパーや家具用品店に足を運んでみると・・・
そこには様々な洋服があざやかに展示してあり、また色んなデザインの美しい家具が大量にある。
そして自分の満足心のためにぽんと軽く購入して、はみ出したものを捨てる。

本屋さんに行くと、様々な本が色とりどりに並べられている。
字ばっかりの本を読んでいるとなんだか自分が賢くなったように思えるしね。
そういえばこの前買った本まだ読み終わってなかたっけ?
まぁいいや。
買っちゃお。
と軽がるしく買う。
結局字だらけの本はいつのまにかほこりにうもれてる。
ただそれを“買う”という行為に満足しているだけで、本当に必要かどうかはどうでもよくなってきている。

まさに消費社会に躍らされた奴隷達だ。

しかも本人たちはそれに気が付いていない。

ブランド品を身にまとって宝石をじゃらじゃら持ってるからって上品な人間になれるって?

テレビのCMでやってるGパンをはいたからって、ブラピ並にクールになれるって?

カッコイイ服をいくつも持ってるからって、人気者になれるって?

もしそう思ってるんなら自分はヤバいと感じた方がいい。
オレは気が付いたからみんなに警告するが、このまま身を任せたら一生奴隷だ。
物を売ってる企業の奴隷にしかすぎない。
こんな不景気なのになんで人は高級なものを買うかわかったか?
ただの満足心のためだけ。
そして無駄が多すぎる、廃棄物が残ってゆくだけサークル・・・
このままではヤバい。
すべてがヤバい。
この消費社会の発展はマジでやばい。


これはあまり関係無いかもしれないが、言っておく。
テレビというメディアは非常に危険である。
おもしろいテレビ番組を見ていると、色んなCMが出てくるだろ?

例えば、シャンプーのCM。
髪の毛がサラサラで、髪とは関係無く肌も美しい女性が、ふわりと回ってその髪のサラサラさを強調する。
もうそのシャンプーを使えば、誰でもそのCMの女優並に美しくなれると思いこんでしまう。
結局、その真実と言えば?
ネズミの毛をそいで、有名会社のシャンプーをたらして見ると、ネズミの肌は数時間でみるみる赤くはれてくる。
有害だよ。
ネズミの肌でも赤くはれるような薬物を、いくら人間の肌でも悪くなるに決まっている。
そんなものがほとんどだ。

そして、そう、見てるだけで唾液が分泌しそうなチョコレートのCM。
おいしそうにとろけるほど甘そうなチョコレート。
CMを見ると無償に食べたくなってくるだろう?
製菓会社のCM製作チームが、視聴者が見てできるだけ買いたくなるような暗示的CMを一生懸命考えて作っているのである。

体の細菌を殺すためのボディーシャンプーのようなものがよくあるが、人間は基本的に体じゅうの細菌をそこまで殺しまくる必要はないのだ。
そんな事をすると逆に危険らしい。
O-157で細菌に敏感になった日本人の心理を利用した商品である。
それはCMを見ると、もう使ってみただけで体中かキレイに清潔になるように思えてくる。

とにかく、業者は数十秒という短い映像の中で、できるだけ大勢の人間に商品を買わせたいのである。
そのために必死に視聴者の心理を研究し、ひとつでも多く売れるアイデアの商品、暗示的なCMをどんどん作っているのだ。


ここまで長々と、オイラの万引きの話と、それから気付いた事についての話を聞いてくれて本当に嬉しいでござる。
本当に、最近の人は色んな物を買って、捨てすぎであると気付いたオイラは、必死にあなたにわかってもらいたくて長々と書きました。
テレビというメディアが盛んになってきてから、昔にはなかった悪い面がいっぱい出てきましたよね。
このままではマジでヤバい。マジでやばい。
どうか、あなたに消費社会の奴隷にならないで欲しい。
そして企業が、そういうところに重点を置くのではなく、本当に使用者のためを思って頑張って欲しい。
あなたのためにも、これからも未来のためにも。
どうか、ここであった話は、忘れないで欲しい。




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