投稿者 10/26 朝日 日時 2000 年 10 月 27 日 13:35:04:
戦略核弾頭の大幅削減可能 米研究所幹部が提案し波紋
米国の核開発の拠点になっているロスアラモス国立研究所の幹部が、「命中精度の高い最新鋭の通常弾頭を使うことで、戦略核弾頭数を大幅に減らすことができる」と提案し、米国の核専門家たちの波紋を呼んでいる。ロシアと中国に対する核抑止は必要だ、との立場は保ちつつも、戦略核の照準は中ロの軍中枢部などにとどめ、一般の軍施設や移動ミサイル、イラクなどの大量破壊兵器については、弾道・巡航ミサイルに搭載した破壊力のある精密通常弾頭で十分対応できる、という主張だ。
ヤンガー副所長が、21世紀の核兵器のあり方をめぐる研究の一環としてまとめた。ただし、具体的な削減幅は示していない。
クリントン政権は、「核抑止力を維持するには、第3次戦略兵器削減条約(START3)の削減目標である『2000〜2500発』がぎりぎりの弾頭数だ」として、ロシアの打診した大幅な削減案を拒んだいきさつがある。このため、提案が核戦略の変更につながる見通しはない。ただ、大統領選の中で、共和党のブッシュ候補は「核戦力の最小限の水準までの削減」「核ドクトリンの見直し」を公約しており、次の政権の論議に影響を及ぼす可能性はありそうだ。
米政府は、冷戦後の核の使い道として、イラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)など、最近まで「ならず者国家」呼ばわりしてきた国々に、生物・化学兵器などの使用を思いとどまらせる抑止効果も期待している。ヤンガー氏はこれに対して、中ロ以外の小国の「脅威」については「圧倒的な通常戦力で十分だ」と反論している。
さらに、戦略核ミサイルの標的のうち、ミサイル格納庫などは、広島型原爆の半分以下の威力の新世代の小型核弾頭でも破壊できる、と述べており、「通常弾頭の使用」「小型核弾頭の開発」の2つによって、相当数の戦略核の肩代わりは可能だ、と強調している。そのうえで、戦略核による報復攻撃の標的を、厚いコンクリート壁に守られた地下の核司令部などの少数の中枢部に限定するだけでも、中ロに対する抑止力は維持できる、と説いている。
第2次戦略兵器削減条約(START2)が発効していないため、米国はいまも、約7200発の戦略核弾頭を配備している。このうち、2260発は、ロシアの核戦力施設や通常戦力施設などに対する報復手段として、高度の警戒態勢に置かれている。米国の元政府高官や核専門家の間には、「数百発」「1000発以下」まで減らしても抑止力の維持は可能だ、との声が出ている。(18:44)