投稿者 倉田佳典 日時 2000 年 10 月 23 日 09:51:29:
防衛庁“サイバー兵器”開発検討
コンピューターウイルスやハッカーによる「サイバー攻撃」を防ぐシステムを構築するため、防衛庁は二十二日までに、次期防衛力整備計画(次期防、二〇〇一〜二〇〇五年度)で、試験用のウイルスやハッカー技術を独自に開発する検討を始めた。試験用とはいえ、ウイルスやハッカー技術は他国のシステムを破壊する威力を持つ“サイバー兵器”となりうる。
防衛庁では、これらの所持や使用が、戦略兵器の保有を制限する憲法に抵触しないか、法制面の研究も始めた。軍事面のコンピューター化が世界的に進む一方、国境がない電脳(サイバー)空間内でのシステム攻撃が武力行使に当たるかどうか、国際的な統一見解も定まっていないだけに今後の動向が注目されそうだ。
軍事中枢システムがウイルスに侵されたり、ハッカーに不正アクセスされたりした場合、指揮命令がまひしたり、偽情報の混入で指揮官が誤った判断をしたりする可能性があり、兵器による破壊を上回る深刻な影響が懸念されている。
このため、防衛庁は次期防の中に、陸、海、空の自衛隊をカバーする「サイバー部隊」を設置することを盛り込み、サイバー攻撃に対し、実践的な防御システムを構築する。
現在、予備的研究を進めている陸自や同庁の技術研究本部などでは、今後、防御システムを作り上げる過程で、実際にウイルスに感染させたり、ハッカー侵入を想定した実験を行ったりして、異常の感知や駆除の訓練を繰り返し行う必要があると判断。「過去の事例を参照しながらウイルスや不正にアクセスするハッカー技術の研究などに着手する」(防衛庁)とし、防御試験向けとはいえ、サイバー兵器の開発を検討することになった。
しかし、このサイバー兵器は、通信網などを経由して国外のシステムを攻撃する能力を持つ。通常兵器の場合、自衛隊は専守防衛を基本とする憲法上の制約から、他国への侵攻能力を持つミサイルや空母など戦略兵器を保有できないとされている。空中給油機も「近隣国に脅威を与える」との理由で導入が見送られてきた経緯があるだけに、サイバー兵器の保有自体が憲法違反にならないかという問題が浮上した。
一方、米軍は今年一月にサイバー攻撃を実戦採用する方針を打ち出したものの、電脳空間内で殺傷能力を直接持たない攻撃が軍によって行われた場合、それが、武力に当たるかどうかについては、国際的な統一解釈はない。
こうしたことから防衛庁では、〈1〉他国のシステムへの攻撃や兵器・技術の保有は憲法に抵触するか〈2〉電脳空間を活用した攻撃はそもそも武力行使に該当するのか――を中心に、基本的な法的研究を開始した。
(10月23日03:01)