投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 10 月 20 日 12:31:02:
2000.10.20 Web posted at: 5:57 AM JST (2057 GMT)米ペンシルベニア州フィラデルフィア(AP)
フィラデルフィア市が管轄していた刑務所で1950年代から70年代まで、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)なしに、服役者を医薬品の臨床実験や商品テストに参加させていたとして、元囚人グループが市や実験に関与した大学や製薬会社を相手取り、損害賠償を求め提訴する騒ぎが起きている。問題の刑務所は1995年に閉鎖された。
フィラデルフィア民事裁判所に出された訴状によると、ホルメスバーグ刑務所の元囚人は実験の過程で、放射線やダイオキシンにさらされたり、向精神性薬物の投与やウイルス感染などの被害を被ったとして、一人につき5万ドル(約535万円)の賠償金を求めている。
フィラデルフィア市とペンシルベニア大学の皮膚専門医、アルバート・クリグマン医師が、にきびとしわ予防クリームの成分として現在、広く使用されている「レチンA」の開発実験を不当に行ったとして訴えられている。また、関連の商品テストを実施したとしてペンシルベニア大学、大手医薬品総合メーカーのジョンソン・アンド・ジョンソン、米化学大手ダウ・ケミカル社が訴えられている。
同刑務所に服役したことがある298人を代表するトーマス・ノセーラ弁護士は、「多大な利益を生む医薬品テストの被験者となりながらも、囚人は1日1ドル(約107円)から2ドル(約114円)程度の謝礼しか受け取っていない。また、投与されている薬品が何かをも知らなかった」と話している。
ジョンソン・アンド・ジョンソン社は、60年代後半から70年代初頭にホルメスバーグ刑務所の囚人に、化粧品とスキンケア製品の臨床実験を実施していた事実を確認したとしているが、訴状の中に挙げられている化学物質は同社製品には使用されていなかったとも主張している。クリグマン医師とダウケミカル社、ペンシルベニア大学は、提訴についての談話などは出していない。
1冊の本が提訴のきっかけに
今回の裁判の契機となったのは、テンプル大学で教べんをとるアレン・ホーンブラム教授が1998年に出版した「たくさんの皮膚(Acres of Skin)」(ロートレッジ社)だった。ホーンブラム教授が見聞きしたホルメスバーグ刑務所での出来事を基に、臨床実験が囚人の心身に与える影響について記した本だ。
ホーンブラム教授は1971年に大学院を卒業後、刑務所内での識字教育に携わっていた。そこで教授が見たものは、顔や腕、背中に無数にばんそうこうを張っている数十人の囚人だった。最初は、仲間内でのけんかだと思っていたが、すぐに囚人などから臨床実験に駆り出されていることを知ったという。
今回の裁判について沈黙しているクリグマン医師は、ホーンブラム氏の本が出版され、この問題が明るみになった時に、「私の知っている限りでは、(囚人を使った)実験結果は皮膚病の発病の仕組みを解明するのに大きな助けとなった。臨床実験に自発的に参加した被験者に、長期にわたって苦痛を与えることはなかった」と述べている。