円盤に対するある科学者の見解(同じく『四次元の謎』から)

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投稿者 SP' 日時 2000 年 10 月 09 日 16:43:10:

回答先: フランク・エドワーズの円盤研究 投稿者 SP' 日時 2000 年 10 月 09 日 16:40:33:

 個人的体験から私は、政府のかなりの要職にある人間が、空飛ぶ円盤と呼ばれる物体の性質や目的を、公衆の前で認めている以上に良く認識していることを知った。私は、政府に雇われている物理学者のグループからきた一九五〇年中頃の日付の手紙を持っている。その中で彼らは、「円盤」は、我々人類よりも優れた工学的知識をもつ知的生物が考案し操縦するリモート・コントロール機械である、という彼らの結論を述べている。さらに、米国政府から提供された資料を研究し、検討した末にこの結論に達したのだとも手紙には書いてある。
 しかし、事実を知る人々の周囲にはりめぐらされた政府の緘口令の壁をいかにして通りぬけるのか。なるべくはっきりした資料源に近づこうとして何度か失敗し、じれったい思いをしたのち、ついに私は、前述の手紙を書いた当の科学者達に直接会ってみようと決心した。彼らは、こちらを心から信用して、この問題について語ってくれる誰かを、私に紹介してくれないだろうか? また、誰か、わざわざ−−いや、あえて−−そうすることを承知してくれる人がいるだろうか。
 数か月待ったのち、やっと返事が来た。私が決して取材源を明らかにしないなら、ある権威者が、私と対談してもいいと言うのだ。しかも相手が満足するところまで取材源をぼかせという。承知し難いことではあったがその通り約束した。
 次の対話は、相手の言うなりの条件下で行われた会見の模様を、その場でテープレコーダーに吹きこんだものであるが、原稿を一九五七年九月『フェイト・マガジン』上に初めて公表する前に、資料提供者自身が削除した約二百語を除き、このときのインタビューの全貌を忠実に再録している。私はこれこそ、自分の十四年間にわたる当問題の探究生活中最も重要で、最も有益な討論だったと考えている。

 「すると、貴方は、空中におけるこれら未確認物体について私と話しあうために、わざわざ遠方から来て下さったわけですか?」
 サツマイモに似た不恰好な節だらけの古いパイプをつめかえるため、一息ついたとき、彼は私にこう尋ねた。
 「ところで私自身は、いまだかつてそんなものを一つも見たことがなく、何とか一度はみてやろうと、ずいぶん、望遠鏡のぞきに時間をかけたものです。でも、私には、空飛ぶ物体を見たという友達がいます。いや、もっと正確に言いますと、そいつらを目撃した友人が以前いたというわけです。
 八十四歳にもなると、全くの話、生き残っている友人も少なくなり、ついてきてくれるのは楽しい想い出だけということになりますからね……そして、ときたま、詮索好きな若者が、突拍子もない質問を携えてやって来る! さて、どこから話を始めましょうかね?」
 「貴方は、この太陽系の中に、我々以外の知的生命がいるという可能性を認めますか?」
 「どうして認めないわけがありましょう。貴方がたがこの問題で従来の考えにしがみつこうと主張するのは、ちゃんとした証拠を見ていないからですよ。しかし、私にはそういう傾向はありません。この太陽系内の他の惑星に生物が−−知的な生物が−−いることも充分あり得ることだと思います。証明ですって? いや、貴方がたが、そのような生物をつれてきて調べさせない限り認めないと主張なさるのでしたら、私らは手をひくより仕方がありませんな。でも証拠をと言うんでしたら、ちゃんとありますよ。ただしそれを組み合わせ、ありのままの価値を認識するだけの忍耐強さを持っている人だけのためにね」
 彼はほこりだらけの靴をぬぎ、昔私の祖母がぼろ絨毯を作るのに使ったような、古い服地の端ぎれで作った手製スリッパにはきかえた。日は沈み、そよそよと吹きわたる風が、入江にまだら模様の波の影を作った。年老いた話相手があんまり長く黙りこくっているので、私はふと彼が話を忘れてしまったのではないかと訝った。しかし、彼は忘れてはいなかった。
 「私は貴方が火星のことを尋ねるのを待っていました。誰も彼も火星のことをきくんでね」
 「すると、貴方は火星に生物がいると信じているのですか」
 「信じているかですって?」と、彼はくっくっと笑った。「私が信じようと信じまいと誰が問題にするんです? 科学の世界では、信念なぞ何にもなりません。理論がすべてです。最も大切なことは、貴方に私の理論をきかせるべきだということだ。その後で、なぜ私が自分の理論を支持するかお話ししましょう。我々はたいてい、まず理論を持ち、しかるのちにそれを裏づける証拠を探し求めるのです。ところが、私の場合、まず証拠をみつけてしまいました。それから、それを中心にして理論を組み立てたのです。科学というものは理論に反対する人間はほとんど相手になってくれませんし、ましてや理論のない人間にはなおのことです。だから……私が証拠と呼ぶものを、一緒に調べてみようではありませんか。第一に、我々は、宇宙のどこか他の場所、それもここからあまり遠くない場所での生命の可能性を考えなければなりません。正しい条件さえ与えられれば、どんな惑星でも長年のうちには必然的に生命体を発達させるというのが、広く認められている仮説なのです。一度発達すれば、生命体はたくさんの形態をとることができ、なかには我々が生命体として認知できないものもあるでしょう。多くの困難を前にして自分の存在を永続させるために、知的生命は支配下にあるあらゆる手段を使って闘うでしょう」
 「貴方は火星のことを考えているのですね」
 「ええ、そうです。火星は地球より古く、地球がまだ若い頃に繁栄し、そして滅びた惑星としてのあらゆる徴候を備えています。また今まで知的生命を育てたことがあるという徴候も……」
 「あのいわゆる運河ですか」
 彼は微笑んだ。
 「運河……いつも運河だ! ハイウェイと呼んだほうがいいんじゃないかな。自分の理論のために、私は他のことを考えているのです……長い目でみればもっと重要なことをね。火星の月ですよ。
 ホール教授が火星に月があることを発見するまで、既に二百年以上もの間、人間は望遠鏡で火星をのぞき続けていました。その六日後、彼は火星の月は二個あることを発見したのです! 貴方はおかしいとは思いませんか。これら二個の月が、常に存在していたとするならば、それまで目撃されなかったのはおかしいとは思いませんか。しかも、二百年間も火星のまわりには何も見えなかったのに、突然二つもきらきら光る衛星が見えだした−−みんな一八七七年のある一週間のうちにですよ。
 これらの月は、火星の錆びたような赤い光は出しません。一つはほとんどまっ白ですし、もう一つも青みがかった白色です。二つとも火星にとても近く、とても小さい。あまり小さいので人工衛星、つまり宇宙の踏み石じゃないかと思われるほどです」
 「いつか我々が建設したいと思っている宇宙基地と同じようなものですか」
 「その通り! 火星から出発したり、火星を訪れようとするときには、とても役に立つような場所にあるのです。ご存じのように衛星というのは、両方から通れる道路のようなものです。貴方が使わなければ、誰か他 の人が使えるというような」
 「すると、貴方は何らかの知的生命が、既に地球の月を使っているかも知れないと仰るんですか」
 「貴方はばかに私をせかしますね。話をひとまず火星と、我々が月と呼ぶところのあの光る小さな物体のことに戻しましょう。仮に我々が、だいぶ以前に天然資源の大部分を使い果し、もはや全人口を養いきれないところまで年老いた惑星に住んでいると仮定します。我々はたとえ一滴の水でも粗末にせずに使わねばならないと悟り、とけていく極冠から必要な地域まで水を送りこみます。我々はむき出しの溝もしくは〈運河〉を使ってそれを行うでしょうか? 私は違うと思います。多分、パイプを使って水を運び、そのパイプ・ライン沿いに食糧用その他の植物を−−恐らくは樹木を植えるでしょう。これは、二つの極冠からのパイプ・ラインが交錯する点をコントロール・ポイントとする緑色もしくは青緑色の長い線になるでしょう。我々の英知すべてを結集しても、いつの日にか、我々は重大な決意を迫られるでしょう。生きてゆくために必要な物質を確保しない限り、我々の文明は滅びるということです。だいぶ以前に我々の天文学者たちは他の惑星を調べました。最初は好奇心から、次には、ある目的をもって、彼らは植物がおい茂り、水や鉱物資源がふんだんにある〈若い〉惑星をみつけました。住民はいるのだろうか? 天文学者たちにはわかりません。その答を出す唯一の道はできるだけその星の近くへ行って観察することです。つまり、宇宙を越えて旅することです」
 「どこか、現在の我々の計画と似ていますね?」
 「ええ。しかし一つだけ重要な違いがあります。我々がこの旅行を計画した目的は、科学的調査に名を借りた好奇心です。様々な企てを隠すにこれほどすばらしい覆いはありません、科学調査! しかし私は、この名のもとに多額の金を注ぎこんで行ってきたいろいろなことについての長話をここでおきかせしようとは思いません。私は自分の理論をおきかせするのです。
 ええと、そうそう。我々は例の若い惑星、地球を訪れなければならぬというところまででしたね。技術者たちは我々がこの旅行をなし得ることを信じており、この大旅行のための機械を作りました。第一次宇宙探険隊は何かおかしな話を持って帰りました。あの緑色の惑星にはかなり原始的な生物が住んでおり、その一部は探険隊に敵意をみせ、かと思うと一部には探険隊を超自然的な存在とみたりするというのです。探険隊は長期にわたって地球に滞在し、これらの生物の二つのグループに、例の単純なピラミッドを含む建築技術の原理を二、三教えてやりました。しかし火星人は、支配しようとか教えようとか思って地球に来たのではありません。学びに来たのです。
 彼らの訪問の記録は、原始的な地球人たちの伝説として残りました。ピラミッドの痕跡や言語の相似などは、大西洋の両岸に分かれて住む二つのグループ双方に見出せるはずです。同じような建築形式、同じ語源に基づく単語などに気づく度、どうかこれらの二グループは、お互いに大洋を隔てているのだという事実を思い合わせて下さい。これらの相似点は火星の第一次探険隊の訪問によるものだというのが私の持論です。
 初期の探険では、この緑の惑星の衛星には人がいないということがわかりました。適当な大気こそありませんが、火星がひどく求めていたまれな物質源が全く未開発のまま放置されているのです。そして最も重要なことは、月にないものは何でも、比較的近距離に位置する地球から調達できるということです。月を開発し、同時に地球の資源でそれを補うという至極簡単なプロセスで、火星人は生き続けることができたのです。この私の説は馬鹿げているでしょうか?」
 「なかにはいくつかよく理解できないこともありますが……どうぞ話をお続けになって下さい。月の開発隊はどうなりました?」
 「どうぞ、そうせかないで! せいてはいけません。これからが最も肝要なところなんですから。彼らにしたってあまり力みすぎて火星にもいられなくなり、一足とびにあの世行きで元も子もなくしたのでは馬鹿らしいですからね。理論的には火星から数千マイルのところに宇宙基地つまり人工の月を造ることです。これら人工の月は、つまり月鉱山から運ばれてくるかなりな量の物資を冷凍保蔵し、これらを分配するのに充分な大きさのものでなければならないが、上空からの分配は比較的簡単だったため、直径五マイルもしくはそれ以下のダイモスのような小さな衛星でも充分だったのでしょう」
 老科学者のパイプはとうに燃えつきていた。それで彼は話をやめて、それをつめかえ、パイプに火をつけるとまた話を続けた。
 「すいかずらのような匂いを嗅ぐとしたら、これは正にそうですな。私は自分のパイプで実験しました。自分ですいかずらの花をつんできて、乾かし、タバコの中に刻みこんだのです。こうすれば匂いがよくなると思いたいですな。一度、バラの花びらをもみほぐして試してみたことがありましたが……とんでもない味でね……舌の皮がはがれるかと思ったものです」
 「確か、火星の衛星のお話では……」
 「そう、その通りです。それらは私の理論では非常に重要な役割を務めています。一八七七年初めホール教授によって発見されて以来、その発見時の数年前まで存在していなかったという説がかなり強いのです。ホール教授は非常に感度のいい、ワシントン海軍観測所の二六インチ・クラーク反射望遠鏡を使いましたが、一八七七年の少なくとも二十年か三十年前から、他にいくらでも高感度の望遠鏡はあったのですからね。私は、ホール教授が初めて衛星をみつけたとき、あの衛星はあそこに生まれてからまだ日が浅かったと信じているのです」
 「何か裏づけとなる証拠でも?」
 「ええ……私なりのですが。火星の月を建設する以前は火星と地球の月との間の旅行は、必然的に非常な制約を受けておりました。火星の衛星ができたのちは、その旅行も増えたはずで、当然、地球の月面における活動も活発になったはずです。ここ百年近くの間、天文学者たちは、光などみえようはずのない月面に小さな光の点々が見えたとしきりに報告しているのです。それらの報告は、せいぜい、山頂の反射か、火山の噴火だろうぐらいの説明しかつけられず、ほとんどの場合、無視されてきました。いいですか、この報告はどうみても、月には何の生物もいないとする今までの理論には合いません。私の説以外、どの説にも合わないのです。
 アサフ・ホールが火星の小さな衛星たちを発見する十年ほど前、天文学者は地球の月の上で別の奇怪なものに気づき始めています。性能のいい機械を使って観測すると、今までは見当らなかった光や線や築山や窪みなどを発見して驚いたものです」
 「都市の道路に似た線をみたというグルイトイゼンの主張のようにですか? 貴方の理論に使うには早すぎるのではありませんか」
 「いや、必ずしもそうではありません。グルイトイゼンは、一八二一年に、シュレーター火山のすぐ北に都市の道路と思われるものを発見したと発表しました。そこに幾何学模様を描く幾本かの線が あるということには、たくさんの天文学者が賛成しました。ちょうど火星の運河のように、人によって見える場合と見えない場合があるのです。しかし、貴方、グルイトイゼン以外にも、そのようなことを報告して、従来から認められている理論に楯突こうとした者がたくさんいたことを思い出して下さい。確かに、グルイトイゼンは早かった。しかし、早すぎるのだろうか? いいえ。もし私の説が正しいならば、地球人が疑いだす何千年も前から月を訪れるものがいたということが、貴方にもわかるはずですから。ただ、グルイトイゼン以後の何千という出来事によって初めて、我々が自分らの写真に焦点を結ばせることができたということは言えますが……」
 「何千という出来事ですって?」
 「そう。文字通り何千です。グルイトイゼンの時代……一八二〇年としますか……から、火星をめぐる二つの小さな物体が発見されるまでの約五十五年間に、天文学者たちは月面の暗黒部分で千五百件以上の光を目撃しているのです。
 ときには、これらの光は模様になって見えます。矩形で長いまっすぐな光の線でできています。バートやシュミットやネイソンやその他たくさんの優秀な天文学者たちが、それらを目撃しています。ちゃんと記録されているんですぞ。しかし我々がそれを無視してしまうのだったら、記録なんて何の役にたつんです?
 年老いた惑星は隣人の衛星を開発するために探険隊を送り出した。一方、当の隣人は何千年もの間、その事実を知らないでいる! しかもそれも無理のないことなんです。
 何千年もの間、ヨーロッパの人々は大西洋の向う側に他の人々が住んでいるとは知らずに過ごしてきた。信じられないからって、なぜ月に人が住んでいるということを疑うんです? 十九世紀になり、先ほど話したようなことが目撃され、報告されてから初めて、一部の人々が、私自身とうに真理だと信じていることに目を向け始めたのです。つまり、月の上では何千年もの間組織的な開発作業が行われ続けている。そのような事実を認めて初めて、今までしばしば報告され今でもなお報告され続けている月面の徴候や光や変化を説明できるのです」
 「ちょっと、お話についていけなくなりました、博士。私に思い出せるのはオニールの『月橋』と二年ほど前にピッコロミニでフランク・ハルステッドその他の人々が報告した黒い線だけですが、まだ他にもありますか?」
 「何百となくね。つまり現れたり消えたりする小さな火山のことです。プラトーの近辺に特に多いようですな。メシエとメシエAは望遠鏡によると活発なところです。何よりも重要だと私が思うのは、月面に見える何百という白い小さなドームです。非常に小さいのでなかなか目撃しにくいようです。直径一五〇〇フィートぐらいでしょう。これらが初めて報告されたのは十八世紀の末頃です。この頃、シュレーターは一八七〇年以来ずっとリンネの研究にかかりっきりでした。それ以後日ましに報告は増えて、現在では少なくとも二百個は知られています。これらは固定されておらず、永久的なものではありません。ときには一か所に群がるかと思うと、ときにはそのうち何個かが姿を消し、また別の所に現れたりします。これらを、月面の開発者たちが安全な大気下で作業するために作った巨大なポータブル式建造物だと考えると、全く私の説にぴったり合うのです。貴方、お腹がすきましたか?」
 実をいうと、私は空腹であったが、そう答える前に相手は言った。
 「もうちょっと、辛抱して、私とつき合って下さらんか。もうじき、私の第二番目の理論に入るところですから。そうしたら、お腹のすいたのなど忘れてしまいますよ。
 さて、年がたつにつれて、これらの月への訪問者たちは地球上の都市の発達に注目しだしました。彼らはまた、我々の緩慢ではあるが勤勉な、飛行しようとする努力を見守ってきました。恐らく、彼ら自身の歴史も同じような経過を辿ったのでしょう。彼らが必要とするものはほとんど月で手に入れていたので、彼らはめったに地球へは来なくなっていたのです。地球上空で巨大な飛行物体を目撃したという報告が一八七〇年以後、増えていることはお気づきになっているでしょう?」
 「ええ。今、思い出せるのはボンハムの棉畑に急に舞い降りて来た巨大な物体です。あれは確か一八七三年、テキサス州でした。それから、一八七九年にウエスト・ヴァージニア州のシスターズヴィルに現れたものと−−」
 「時々、これらの物体はライトを装備していました−−サーチライトです。これらは宇宙基地でも簡単に製作し発着できるような形式の航宙機で、出現しだしたのは、我々が、人工的に建造されたかも知れない、そしてそれまでには、全く我々の目にはふれなかった二つの小さな衛星が火星にあることを発見するほんの数年前でした」
 私は、この著名な科学者が、すごい速度で、何やら彼が極度に重要視しているものに向って導いてゆくのを感じた。ちょっと前に、彼は自分の理論に言う「月面開発隊」が必要な物のほとんどすべてを月で手に入れていると言って、私の好奇心を煽った。ほとんどとはどういう意味だろう? 私は彼に尋ねた。
 わざわざゆっくりと、彼は古いパイプをつめかえた。
 「盲者の世界では片目の人間は王者だという古い諺があります。もちろん、お聞きになったことでしょうな」
 私はうなずいた。
 「水の乏しい惑星では水は高価な貴重品です。月で……いいですか、これは私の理論であって、神話ではありませんよ……訪問者たちは動力と熱を作り出すためのウラニウムは充分に入手できるかも知れない。アルミニウムその他の産業に必要な金属は何でも手に入るかも知れない。荒廃した土壌から食用植物を実らせるための化合物すべてを手に入れることができるかも知れない。しかし月から水を手に入れることはできまい。自分たち用にも、懸命に水を求めている母星のためにも。もし貴方が彼らの立場にいたらどうしますか?
 それこそ、少なくとも私の理論では、あの訪問者たちがやっていることなのです。今や小型化して、水中に潜りこんだり、水中や水面でライトを光らせているところを目撃されている怪物体の報告を、思い合わせてごらんなさい。決して大きなものではなくなりました。水中に潜りこみ、水をくみ、それを地球の大気圏外に出たら氷塊にして放り出す−−大気圏外はこの上なく便利な貯蔵場所ですからな−−それだけの機能を果すだけの小型のものでいいのです。時々、氷塊の荷おろしが早すぎると、地球に落ちてきてしまう。たいがいは誰にも気づかれずにすんでしまうのですが、ときには誰かの家の屋根を突きぬけたり、羊を殺したり、自動車のフードを叩いたりするのです。たまにこれらのきらきら輝きながら地球の周囲をまわる氷塊が誰かに目撃され、新しい衛星と間違えられたりするのです」
 「例えば、数年前にクライド・トンボーとラ・パス博士が位置を確認しようとした衛星などですね?」
 「多分、恐らくね。それに一九五三年にアドラー・プラネタリウムが報じた、約四七五マイルの高度で、しばらく地球の周囲をまわっていた一群の怪 物体もその一例でしょう。これらの物体群がまもなく軌道から姿を消してしまった事実は、正に、私の氷塊説を裏づけしていると思います。消えたのか、それとも他の氷塊と一緒にどこかへ運ばれたのか−−それはわかりませんが」
 「確かに、これは記録的に長い水路ですな」
 「全くです。それでも最後には、その結果も明らかになるべきです。これらの定期往復便はここ百年来二年目ごとに、つまり火星の衝(太陽と惑星が地球の正反対側にきたとき)の度に行われてきたと、私は信じています。また、最近の五十年間、火星の外観に何か変化が生じてきつつあるようで、これも私の説を裏づけるものです。つまり、暗い青緑色の部分が増えているのです。一九五四年にはサーテイス・メジャーが目にみえて大きくなりましたが、これは地球の水と月のミネラルがいわゆる空飛ぶ円盤によって運ばれ、充分に彼地の必要をみたしたことの長い目でみた結果であると、私は解釈しています。
 以上が私の第一の理論と、それを裏づける資料です。さて、それでは私の第二の理論を提起いたしましょうか−−何を隠そう私こそ、この国に住む第一級の塩キャベツ料理の名人だという説です。あちらの部屋へ行って、その証拠をお調べになりませんか?」
 私は勧められた通りにした。嬉しいことに、彼の第二の理論とやらは、まさに正しかった。しからば、彼の第一の理論はどうか? 時が答えてくれるだろう。



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