投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 23 日 11:58:18:
ロンドン -- 腹部で結合して生まれたシャム双生児の分離手術をめぐり、1人を犠牲にしてもう1人を助けることを認めるかどうかが問われた裁判の控訴審で、英国上訴裁判所は22日、分離手術実施を認める判決を下した。この問題は医学界や宗教界も巻き込み、英国の世論を2分する大きな論議になっていた。
手術の是非が問題になっているのは、生後6週間の双子の姉妹「メアリー」と「ジョディ」。8月8日、イングランド北部のマンチェスターの病院で、地中海東部から来た両親の下に生まれた。2人は腹部で結合しており、心臓は2人で1つのみ、2つの肺も共有している。診察した医師は、分離手術を行わなければ数カ月以内に2人とも死亡するだろうと診断。しかし手術を行えば、血流をすべて「ジョディ」に依存している弱い方の「メアリー」を殺害することになる。
裁判では、双子それぞれが法的に個別の人格を持った人間として扱われるべきなのか、あるいは心臓と肺を持っているジョディの方が、より大きな生きる権利を持つのかが焦点となった。
殺害の選択を迫るジレンマ
判決の言い渡しに当たり、英国上訴裁のアラン・ワード裁判長は「イエスと言えばメアリーを殺害することになり、ノーと言えばジョディを殺害することになる。これは恐ろしいジレンマだ。(判決を出すのは)絶えがたいほど困難だった」と述べた。
双子の両親は裁判の中で「自分たちの子供に最善の場所で、生きる最善のチャンスを与えるために英国に来た」と告白。敬虔なクリスチャンでもあるため、双子の生死は「自然のままに任されるべきだと信じている。私たちの子供が2人とも生き永らえないことが神の意思であれば、そのようになるべきだ」と主張していた。
今後、両親は今回の判決を受け入れるか、英国あるいは欧州人権裁判所に上訴するかを選択することになる。両親の弁護士は、もし今回の判決が信仰に反するものであれば、上訴するだろうと語った。
宗教界を巻き込む論争
今回の控訴審判決に先立ち、一審でも、両親の意思に反してでも分離手術が行われるべきだとの判断が出されていた。
これに対してローマ法王庁は、両親の意思に反して分離手術を行うのは間違っていると反論。イタリアの専門病院内にこの家族のための「安全な場所」を用意することを提案していた。また、英国の医学倫理雑誌の編集長は「もし分離手術が行われ、ジョディが生き延びたとしても、その生命の質は非常に低いものになるだろう」と指摘している。