投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 23 日 11:53:49:
ワシントン(ロイター)
ネット先進国の米国は、デジタル世界の「盗聴」推進にかけてもリーダー的存在――。米国の市民グループがこのほど「プライバシーと人権2000」と題する調査報告書をまとめ、こんな指摘を行っている。それによると、米連邦捜査局(FBI)などは率先して、「盗聴にやさしい」国際的な通信基準づくりを各国にはたらきかけてきたという。
報告書をまとめたのは、プライバシー保護団体の「電子プライバシー情報センター」と「プライバシー・インターナショナル」。報告書では、「米国政府は、個人のプライバシーの制限や、警察や情報機関による個人の会話の盗み聞き能力の強化に向けた世界的な動きを率いてきた」と指摘。米国政府は強力な暗号機能を備えたハードやソフトの開発・販売を抑制しているほか、当局の監視の目を逃れるため、通信にスクランブルをかけるノウハウにも制限をかけている、としている。
日本の通信傍受法にも圧力?
また、米国政府は他国に対しても捜査機関による盗聴の拡大を要求していると報告。FBIトップがハンガリーやチェコスロバキアなどに対して働きかけを行ったほか、報告書をとりまとめた弁護士のデビッド・バナイザー氏によれば、日本で8月から施行された通信傍受法の制定の陰にも、米国政府の圧力があったという。
FBIではこの報告書についてコメントを避けている。ただ、1990年代にFBIの働きかけで、通信機器に外部からの盗聴を防ぐ機能を持たせることを禁じた法律が制定されたのは事実。当局側は、犯罪者が捜査の目を逃れるために高度な技術を使うようになっており、これに対応するためにそのような法律が必要だと主張している。
これについて報告書は、「FBIは米国内で同法の制定を求める傍ら、盗聴のための国際技術基準の策定に向けて、欧州連合(EU)と協力していた」と指摘。また、FBIが犯罪捜査を目的に導入した電子メール傍受システム「カーニバー」についても触れ、ロシアのセキュリティー専門家の話として、米国当局がロシア政府に対しても同様の監視システムの導入を呼びかけたとしている。
なお、カーニバーはプライバシーを侵害しているとの非難が高まり、現在専門家によるシステムの見直しが行われている。
スパイネットワーク拡大を警告
報告書はさらに、国際スパイネットワークの疑いが持たれている「エシェロン」についても解説。同システムは米国家安全保障局(NSA)の統括の下、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報当局が共同で運営しているとされ、欧州などで問題になっている。報告書では「シームレスな国際諜報・捜査監視システムを作り出すことで、結果として、国家情報当局による国内通信の監視を禁じた既存の法律や規制を無効化するような、巨大な国際ネットワークが築かれる可能性が出てきた」と警告した。
「プライバシーと人権2000」の報告書は、イタリアのベネチアで開かれるプライバシー国際会議で発表される予定。