投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 22 日 17:16:30:
ロンドン -- 英国情報部(MI6)の本部ビルに「小型ミサイル」のようなものが打ち込まれた事件で、ロンドン警視庁は21日、近くの公園で発射装置の一部とみられるものを発見した。
ロンドン警視庁の調べによると、グレネードランチャー(グレネード弾発射装置)の一部が、MI6本部から東に約200メートルの公園「スプリング・ガーデンズ」で発見された。警察は、このグレネードランチャーが実際に、MI6本部攻撃に使用されたものかは断定できないとしている。
20日午後9時45分ごろ(日本時間21日午前5時45分ごろ)、ロンドン・テムズ川南岸にあるMI6本部ビルの8階に、外側から小型ミサイルのようなものが打ち込まれ、窓ガラス1枚と壁のパネル2枚を破損させた。負傷者はなかったという。
「ある組織を重視しながら捜査」
ロンドン警視庁テロ対策部のフライ部長によると、今回発見されたと同種の発射装置は、これまでに北アイルランドやアイルランドでも発見されているという。同時に、同じような装置は、ロシアや旧ユーゴスラビアでも簡単に手に入るという。
フライ部長は、「今回の事件に使用されたとみられる武器類は、ある特定のグループがひんぱんに使用することで知られている。そのグループを常に重視しながら捜査を進めていく」と話し、北アイルランドのカトリック系急進派組織による犯行の可能性を示唆した。
今回の事件に犯行予告はなく、事後の犯行声明もないという。
フライ部長は、使用された「小型ミサイル」については、モルタル弾ではなかったようだと説明した。「モルタル弾だったとは考えにくい。モルタルだった場合、もっと大きな被害が出ていたはずだ」
グレネードランチャーが発見された公園のある地区は、ボクソール・クロスと呼ばれ、都市開発で新しい観光名所として建てられた「ボクソール・クロス」もある。
IRA過激派テロへの警戒つづく
ロンドンでは今年6月1日に、テムズ川にかかるハマースミス橋に仕掛けられた爆発。7月19日には、ロンドン西部のイーリングブロードウェイ駅や市中心部のパディントン駅などで、爆発物が仕掛けれているのが発見された。19日午後には市中心部の官庁街・ホワイトホールの街路でも爆発物らしい不審物が見つかった。
ロンドン警視庁は一連の爆発物騒ぎを、北アイルランド紛争の和平プロセスに反発する過激派グループによる犯行とみて、調べている。
北アイルランド和平問題では、1998年の和平合意に従って、カトリック系過激派組織アイルランド共和軍(IRA)は今年5月に武装解除を宣言。これに反発したIRA内の強硬派グループ「真のIRA」や「連続するIRA」などがIRAから離脱し、和平に反対するテロ活動の続行を宣言している。
MI6の警備体制にも疑問
MI6など政府機関の警備体制は、今年3月に情報部員のひとりが機密情報入りのラップトップ・コンピューターを、タクシーに置き忘れたことをきっかけに、英国のマスコミに批判されてきた。威風堂々としたその本部ビルそのものが、MI6の警備を難しくしているという声もある。
1994年の情報活動公開法施行以前は、その存在自体が公に認められていなかったMI6は、同法によって公的機関としての法的根拠を整備すると同時に、一定の情報公開と政府による監督を義務付けられた。また、ロンドン市内の各地に分散して、本部の所在も明確にしていなかったのを、1994年に現在の大規模な本部ビルに移転した。
MI6の元エージェントで歴史学者のドナルド・キャメロン・ワット氏は、本部を移転してからというもの、今回のような攻撃を受けるのは時間の問題だったと話す。「(本部移転は)ばかなことだったと、私を含めて多くの者が反対した。秘密の情報機関は秘密の存在であるべきだ」