投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 21 日 12:20:02:
ロンドン(ロイター)
クローンを繰り返した世代のマウスは老化の速度が遅くなったり、逆に若返る可能性もある――。ハワイ大学の研究チームが行ったこんな実験結果が20日、科学誌『ネイチャー』に発表された。
実験を行ったのは、若山照彦博士が率いる研究チーム。成体のマウスの体細胞を使ってクローンマウスを作り出し、そのマウスからさらに次の世代のクローンマウスを作る実験を繰り返して、細胞の状態などを調べた。
クローンで作られた生物としては、1996年に英国で生まれた羊の「ドリー」が有名だが、ドリーの場合、若いうちから細胞が老化してしまう現象が見られた。しかし、若山博士は『ネイチャー』誌の中で、「クローンを繰り返した世代では、若いうちに老化する現象は見られなかった」と報告している。
細胞老化の仕組み
細胞の老化は、染色体の末端にある「テロメア」と呼ばれるDNA(デオキシリボ核酸)の状態によって判断される。細胞が分裂を繰り返すごとにこのテロメアの長さは短くなり、最後には細胞が死に至る。このプロセスは、がん細胞や生殖細胞など一部を除き、生物の体内のすべての細胞で起きている。
クローン羊のドリーの場合、同年代の羊に比べてテロメアが短く、若いうちから中年に相当する細胞年齢だった。しかし、若山博士らのクローンマウスでは、「テロメアが短くなる様子はなかった。実際、わずかながら長くなっているようだった」(若山博士)という。
同様の結果は、米国のバイオテクノロジー企業が行った牛のクローン実験でも報告されており、老化に関連した病気や臓器などの移植に対応できるクローン技術につながる可能性があると期待されている。
母ネズミに食われて実験中断
ただ、若山博士によると、クローンマウスのテロメアが長くなる原因はまだ不明で、これが寿命の伸びにつながるかどうかも分からないという。実験に参加したロックフェラー大学のトニー・ペリー氏は「細胞の寿命を制限しているメカニズムが、クローンでは働かないのかもしれない。しかし、寿命を決めるメカニズムはこのほかにも存在している可能性がある」と話す。
クローンを繰り返した5代目のマウスは、ネズミの年齢でいえば中年まで生存。しかし次の6代目のクローンマウスが育ての母ネズミに食べられてしまったため、実験はそこで中断してしまったという。
ペリー氏は「実験はまだ初歩的な段階だが非常に重要なものであり、もし可能なら再び繰り返す必要がある」と指摘している。