投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 9 月 18 日 14:41:47:
東京スパイ騒動の政治的意味
●実は1ヵ月前に、UPIがちょっと気になるニュースを配信していました。 「東京は世界最大の“スパイの都”だ」というショッキングな表題だったんで、さっそく訳しだしたんですけど、とっかかるなりお蔵入りと決めてしまった。 だって「日本はスパイ防止法がないから世界のスパイの楽園になっている」なんて記事を日本語にしたら、その日本でスパイ活動や霊感商法を幅広く展開してきたドコぞの国の邪教カルト集団に悪用されそうでね。不本意ですもん。 連中、90年代には自民党をはじめとする国会議員たちのもとに「ボランティア秘書」として潜入し、政治上の機密や政治家たちの“キンタマ”をだいぶ掴んでいたと思うが、その後どうなってんのかな? それから84年ごろ、オウム教団の勢いが頂点にあったとき、今は草野キャスターに突っ伏すコメンテーター文化人として完全に去勢されてしまったアリタさんなんかが、週刊文春あたりで、オウムと例の邪教カルトのコネクションを盛んに告発していたもんだが、沙汰やみになって真相はヤミの中……。
●ところが今月早々、プーチン“一過”の東京スパイストーリーだ。 バカ報道番組が騒ぐ騒ぐ【笑】。 ……で、案の定、「スパイ防止法」を言い立てる輩[やから]が、啓蟄[けいちつ]の虫どもみたいに、もう秋だってのにまたもぞ〜ろぞろ。 だけど、あのスパイ逮捕のタイミングは、誰が見たってアヤシイっての。 万引きの現行犯とはワケが違うぜ。「二人の接触は、警視庁が監視を始めた昨年九月以降だけで十回前後」(8日19:44共同電)だってさ。 警察はとうの昔から逢い引きの証拠を掴んでいたわけ。「警視庁と神奈川県警は今年一月に合同捜査本部を設置し捜査」」(8日13:12共同電)していたとも報じられている。 パクろうと思えばいつでもパクって“事件”に出来たはずだが、それをプーチン訪日のタイミングにぶつけたわけ。 政治的作為性が、ナイわけナイだろって。
●仮に「スパイ防止法」が出来たら真っ先に退治しなきゃならないのは、某外国邪教カルトやそれに通じた連中と、政府中枢に陣取って日本の資産を英米系や欧州大陸系のエスタブリッシュメントに垂れ流している売国奴エージェントたちだろうけど、どういうわけか、「スパイ防止法」制定のかけ声は、そういう部分から上がってくる。
先手必勝ってやつですな。 泥棒が縄を編む、ともいう……。 で、よくよく考えてみると、83年の大韓航空機「撃墜」事件の時に露骨に見られたように、日本の防衛情報はワシントンに筒抜けになっている。日米安保条約のせいなんだろうが、国際軍事体制は「日米安保」だけで回っているわけではない。さがら直美の『世界は二人のために♪』じゃないっての。(あまりにも古い流行歌を引き合いにだして、知らない人がいたら勘弁。『ラジオ深夜便』でも聞いて下さい。 ちなみにこの歌は、愛し合うと他のことがナ〜ンも見えなくなり世界は二人のために回っているという錯覚を起こすという、異常心理を歌ったもの。) 要するに、スパイ防止法で守られるのは、日本の国益なんかじゃなく、日本も末席を汚しているアングロアメリカン・エスタブリッシュメントの――エシェロンなんかを使って文字どおり卑怯なやりかたで運用している――グローバル安保体制の“支配の秘密”だということになる。
●だいたい、今回冒頭に紹介する「東京は世界最大の“スパイの都”だ」って記事も、ニュースとしての出方に必然性がなくて、きわめて唐突。 不自然で、なんらかの作為性さえ感じてしまうわけですよ。 日本のスパイ防止法制の“欠陥”を騒ぎ立てることでトクするのは、もちろん直接的には米国なんだけど、アングロアメリカン・エスタブリッシュメントの傘の下でグローバル支配を謳歌――ないし画策――している「公共」および「民間」セクターや「オモテ」および「ウラ」社会は、みんなこの「防止法」で利益が守られるわけ。 おそらくUPIの背後にある利益集団もね。
●そういうわけで、一度はお蔵入りにしていた記事を、冒頭に翻訳紹介しました。 次に東京スパイ騒動の記事を時系列順で列挙しましたが、これで事件の――というかニュース宣伝と世論および政治状況の――動きを追いかけることが、すこしはできるはずです。 残念ながら当方、原因不明のトラブルで、騒動さなかの阿修羅投稿や共同記事などを大部分受信できなかったのですが、入手できたぶんだけで再構成しているので、事件の最初の頃の報道が抜け落ちていると思います。 最後に、英国BBCのアナリストが、今回の東京スパイ騒動を一種のちゃちな「政治陰謀」として解説しているので、その記事も邦訳紹介しておきます。 事実がどうであれ、少なくても英国とその影響圏の読者たちは、この記事を読んで。日本の警察が――よりによって「あの神奈川県警」だぜ【笑】――チャッチい茶番劇でスパイ逮捕芝居を演出したと認識したはず。 もし、本当に警察の諸君がそういうケチな陰謀で逮捕のタイミングを合わせたなら――神奈川県警ならヤリそうだ――ちったぁ〜恥ずかしく感じれよ!!【笑】
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分析:東京は世界最大の「スパイの都」だ
●● http://www.vny.com/cf/News/upidetail.cfm?QID=109889
2000年8月17日(木)の2:10(東部標準時)
分析:東京は世界最大の「スパイの都」だ
エドワード・ニーラン記者
東京、8月11日(UPI)――世界の外交官や企業重役の間では公然の秘密になっていることがある。それは「東京は世界最大のスパイの都(the spy capital of the world)になっている」ということだ。 産業スパイ活動やインターネット上の暗号メールの解読から、旧態依然たる監視活動や(敵を騙すための)偽情報ばらまき活動まで、分析官たちは、これほどスパイ活動が行ないやすい場所は世界に他にないと、声を揃えて証言する。
「ここには、あらゆる国からあらゆる種類の情報が、大量に入ってきて、使い放題に使えますからね」と、西側国家のある外交官は語っている。 「スパイ防止法が不十分なせいで、外国のスパイはほとんど危険を冒さずに活動できるんですよ」
最近発覚した事件を一つ紹介しておこう。日本警察の発表によれば、4人のロシア人諜報員が日本の未公開の電子製品の情報を収集していたという。 この活動には日本人が共犯者として関与していたが、ここから窺[うかが]えるのは、SVR(旧ソ連KGBからの後継機関である対外情報局)が産業スパイに興味を持つほど、ロシアの現在の経済状況が順調ではないということだ。
ロシアの国内保安対策担当機関である連邦保安局のニコライ・コヴァリョーフ局長は、この3月に、28人の外国人スパイの諜報活動を停止したと発表した。これらのスパイは全員日本で接触を続けてきたが、その過程で米国・英国・中国・スペイン・日本の諜報機関に雇われていた7人の諜報員を逮捕したという。
冷戦の終了によって、東京という “スパイ業界のマーケット”で生じるに至った大量のスパイの“過剰在庫”は、解雇されることになった。そのあおりを受けて、用なしのスパイたちは、在留ビザの奪い合いを起こす羽目になった。これらのスパイの多くはコンピューターの専門訓練を受けており、おかげで「IT」すなわち情報テクノロジー分野の民間企業に就職先を見つけることができた者たちもいる。
かつて「ビッグブラザー」といえばソ連や中国の諜報機関の盗聴・監視活動を象徴する言葉であった。しかし今では、米国のメリーランド州フォートミードに本拠を置き、世界中の全ての通信活動を監視することができる「エシェロン」という名の“スーパー・インターネットシステム”を駆使してスパイ活動を行なうアメリカ国家安全保障庁(NSA)こそが、世界で最も高度なスパイ組織である。
しかし、NSAの独走はいつまでも続くだろうか?
欧州域内のいくつかの国家――それに日本と韓国および台湾――は、圧倒的優位にある米国のスパイ活動に、もっか急速に追いつきつつある。 米国連邦捜査局(FBI)の新たな“電子メール監視システム”として悪名高い「肉食獣」(Carnivore)は、事実上、日本でもすでに“クローン化”が済んでしまっており、スパイ活動なみに国民のプライバシーを侵害する恐れが出てきている。
諜報活動というと、最先端のスパイテクノロジーばかりが話題にされがちだが、昔ながらの「人力によるスパイ作戦」の需要はなくなっていない。 かつてスパイを務めていた経験者の“秘密工作”の手並みがあまりにも鮮やかだったため、それが見込まれてロンドンの経営コンサルティング会社にヘッドハントされ、現在はオマーンの巨大多国籍企業で活躍しているという例だってある。 この男の現在の収入は、東京でトップクラスの諜報員として祖国のために働いていたときの給与額を凌いでいる。
日本は現在「世界有数のスパイ天国」であるが、そうなった理由の一つは、スパイ防止法がないからだ。ではなぜスパイ防止法が今もってないかといえば、最大の理由は、第二次大戦中の憲兵隊の暴走の、二の舞を恐れる声が強いからである。 しかも日本は、なまぬるい特許法しか持っていないし、海運関係の規則もだらしがないので、海外から「出入りが容易に出来る」国なのである。 たとえばカナダから米国に直接送ることが許されていないコンピューターソフトはでも、「ありふれた包装で」まず日本に直送し、日本から米国に送れば難なく規制を突破できる。最近では、セックス強精剤の「ヴァイアグラ」の密輸が見つかった例もあった。
さらに、多くの外国人が在留しているので、スパイの疑いを掛けて追跡するのが困難だという事情もある。なにしろ1億2590万人の総人口を抱える日本には、朝鮮人65万7000人、中国人23万4000人、ブラジル人20万1795人、フィリッピン人8万4508人、米国人4万4168人、ペルー人3万7000人、タイ人1万8000人、英国人1万3000人、ヴェトナム人1万人、インドネシア人8000人、イラン人8000人、「その他の外国人」10万人が住んでいるから、警察の監視能力を超えている。
日本の警察では、たいていのスパイは「ビジネスマン」「外交官」あるいは「ジャーナリスト」を騙[かた]って入国してくると見ている。「ラップトップ・コンピューターを使うことができる外人は誰でもスパイの恐れがある」と、警察当局のある人物が語っているほどだ。 「ビジネスマン」を自称し、東京に家族と同居し、電話や電子メールや手紙で世界各地と定期的に連絡を取っている外国人は、少なく見積もっても20万人はいる。
東京には124ヵ国の在日大使館、国際通商機関など24機関の代表事務所、さらに事実上は北朝鮮の“大使館”と見なされている朝鮮総連などが集中している。 信任を受けた外交官だけでも1534人が東京に住んでいるが、日本人の中には彼らを「合法的なスパイ」だと呼ぶ者もいる。
それに東京には48の国や地域を代表する280種類の報道機関の、832人におよぶニュース特派員がいる。外国人記者クラブに登録している報道特派員は次のような数になる――米国が334人、英国が159人、韓国が52人、フランスが46人、ドイツが40人、台湾が21人、オーストラリアが19人、香港が18人、ロシアが15人、そしてベルギー、フィンランド、ハンガリー、イスラエル、マレーシア、ナイジェリアおよびノルウェーなどの国々が各1人。
1998年の8月に北朝鮮が日本の領海をこえてロケットを飛ばす“事件”が起こり、これが“寝た子を起こす”かたちとなって、日本では諜報能力強化への関心がとみに高まった。 政治家たちは、戦域ミサイル防衛(TMD)システムの日米共同研究や日本版「スパイ衛星」の建造を合法化するための法案を矢継ぎ早に提出している。
日本はこれまで、米国の衛星諜報活動の報告の“ゴミ”を回してもらって満足していた。 この“儀式”によって日本が米国の国益に参加させてもらえていたことは間違いない。しかし、こうして“ゴミ情報”を戴いたところで、日本の諜報活動にはほとんど役に立たなかった。
北朝鮮のロケット打ち上げ事件で日本の諜報能力の脆弱さに関心がむかう以前から、一人のアメリカ人が当地の状況を観察し続けていた。彼の名はアンドリュー・L・オロス。 オロス氏はニューヨークのコロンビア大学に政治学博士号を申請しているが、その論文のテーマは『ポスト冷戦時代の日本の対外諜報関連活動の制度的進化における変貌と継続性』。 彼は、東京で日本の諜報能力が強化されつつあるという未確認情報をいろいろと耳にしている。 その実態を知るために、彼は東京大学の大学院(法学・政治学専攻コース)の研究生になった。
彼はアイヴァン・ホール著『精神の独占協定集団』(Cartels of the Mind)[邦訳は『知の鎖国』という表題で98年に毎日新聞社より出版]が詳しく紹介していたような日本の「知識人サークルの排外主義」を知っていたので、それを覚悟していたのだが、それでも実際に冷淡な迎えられ方をしたので、面食らったという。 「これほどたくさんの“門戸”が、こんなに即座に閉じられた経験は、これまでは一度もなかったですよ」と彼は語る。 「こんな体験をしたんで、論文の考察対象を、もっと拡げる必要があるかも知れないですね」
東京を舞台にしたスパイ活動を知る上で最も参考になるのは、米国ワシントンで88年に出版されたスタニスラフ・レフチェンコ著『On The Wrong Side My Life in The KGB』であろう。[訳注:これは『レフチェンコ回想録』という邦訳が出ていた記憶があります。立ち読みした覚えがあるけど、どこの出版社から出ていたかは失念……。文藝春秋社だったかも……。] この本と、それ以降に行なわれたインタビューで、レフチェンコはスパイの目から見た東京の暮らしよさや、日本の新聞記者を籠絡[ろうらく]して情報を入手することがいかに簡単かを語っている。 「(新聞記者の連中は)私に重要 な情報をタダで提供してくれた。その理由は単純なもので、気に入らない上司に仕返しをしたり、配偶者を裏切ったり、自暴自棄になって、などというのもあった」と彼は告白する。
こうした事情は冷戦が終わってもほとんど変わっていないに違いない。 だから、日本はこれまで自ら視線を背けてきた諜報能力の充実を、今後やりとげることになるかも知れないが、そんな努力の甲斐もなく、あいかわらず東京は、他の列強がスパイ活動を悠々と展開できる“開かれた楽園”であり続けるだろう。
(エドワード・ニーランは東京を拠点に北東アジアの情勢分析を行なっているアナリストである)
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【共同通信が報じた東京スパイ騒動】
記事は時系列の順に並べたが、
逮捕の“瞬間”を伝えた記事は入手できなかった。
●●316 09/08 01:36 情報漏えい罪とは 社会156
情報漏えい罪 自衛隊員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないとする自衛隊法五九条の規定で、その職を離れても適用される。違反した場合は一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処せられる。
●●312 09/08 02:00 海自幹部を取り調べ ロシアへのスパイ容疑 防衛研 社会155#01
海上自衛隊の三佐(38)がロシアに情報を流していた疑いが強まったとして警視庁公安部は七日、自衛隊法違反(情報漏えい)の疑いで三佐の取り調べを始めた。
ロシアに対する本格的な情報漏えい事件はソ連崩壊後初めて。日ロ交渉にも影響を与えそうだ。
調べでは、この三佐は昨年ごろから、在日ロシア大使館の武官に海上自衛隊などの防衛関係の情報を流していた疑いが持たれている。
三佐は現在、防衛庁防衛研究所の研究員。以前は海上幕僚監部に所属、調査担当をしていたという。
●●311 09/08 02:00 海自幹部 社会155#02
警視庁によると、ロシア大使館の武官については外交特権があるため、立件は難しいという。
現職自衛官がスパイ行為で立件されれば、平和条約締結や北方四島の返還を目指している日ロ交渉にも影響が出そうだ。
海上自衛隊とロシア海軍は一九九六年以降、相互訪問などで交流を深めており、七日には海自の艦隊がロシア極東の太平洋艦隊の基地に入港している。
●●309 09/08 08:00 番外2 警視庁は八日、駐日ロシア大使館の駐在武官 社会
警視庁は八日、駐日ロシア大使館の駐在武官に防衛関連の情報を漏らしたとして自衛隊法違反容疑で、防衛庁防衛研究所研究員の海上自衛隊三佐、萩崎繁博容疑者(38)を逮捕した。
●●261 09/08 10:04 防衛上の「秘密」は14万件 重要性に応じ3種類 社会29 #01
自衛隊員の守秘義務を定めた自衛隊法五九条の対象となる「防衛上の秘密」について、防衛庁は重要性に応じ三種類に分け指定しており、指定文書類などは現在計約十四万件に達するという。同庁は「数を減らすよう努力している」と強調するが、効果は上がっていない。
最も重要な秘密の「機密」は、漏えいした場合に国の安全保障または国益に重大な損害を与える恐れのあるもので、次いで「極秘」、関係職員以外の者に知らせてはならない「秘」の順となっている。
隊員が職務上知り得たこれらの秘密を外部に漏らした場合は「一年以下の懲役または三万円以下の罰金」。
一九八○年の元陸将補による旧ソ連大使館員への機密漏えい事件をきっかけに、「量刑の軽さ」や隊員以外の者によるスパイ行為に対する罰則規定の不備が指摘され、政府は「防衛秘密に関するスパイ行為等の防止に関する法律(スパイ防止法)」案を国会に提出したが、反対が強く成立しなかった。
●●232 09/08 10:32 スパイ活動は軍事の本質 社会31
軍事評論家の藤井治夫氏の話 冷戦終結後も各国の軍隊は多かれ少なかれ秘密機関などを使った情報収集やスパイ活動を行っているが、それが軍事の本質だろう。先進国は公開された情報の収集や分析、電波の傍受、偵察衛星などを使うのが一般的になりつつあるが、今回の事件でロシアは「人を介した」旧ソ連時代からの古典的な手法を続けていることがよく分かった。
●●190 09/08 11:29 交流の一方、情報戦衰えず 冷戦時代そのままに 社会42 #01
警視庁公安部と神奈川県警が八日摘発したロシア駐在武官と海上自衛隊の幹部自衛官による「スパイ事件」は、旧ソ連崩壊後、日ロの防衛交流が広がる中で、冷戦時代を引きずったままの水面下の情報戦が依然続いていることをうかがわせる形になった。
防衛庁は「各国の軍事力や国防政策の透明性を高め、対話・交流を通じて信頼関係を深め、無用な軍備増強や不測の事態の発生、拡大を抑えることが重要」(防衛白書)と、ロシア、中国などとの防衛交流の意義を強調。冷戦後の安保政策の柱の一つにしている。
日ロの場合も、防衛庁長官と国防相、制服トップの統合幕僚会議議長と参謀総長の相互訪問というハイレベルの接触から、実務者同士の定期協議、部隊同士の交流まで幅広い関係が実りつつあった。
海自は一九九六年、護衛艦をウラジオストクでのロシア海軍三百周年記念式典に参加させて以来、毎年艦艇を互いに派遣し、共同救難訓練も進めるなど、陸海空自衛隊で最も積極的に取り組み、七日もカムチャツカ半島沖での共同訓練のため、護衛艦がロシア太平洋艦隊の潜水艦基地ペトロパブロフスク・カムチャツキーに入港したばかりだった。
しかし、冷戦時代のような旧ソ連の情報収集艦の頻繁な活動などはなくなったとはいえ、今も日本周辺でのロシア原潜や偵察機の行動が確認される一方、海自側も海峡の警戒や対潜哨戒機による監視活動を続けており、軍事的な「情報収集」の重要性は変わっていない。
防衛関係者は「防衛交流の活発化は、冷戦構造の崩壊の一つの断面にすぎない。今回の事件は『笑顔で握手を交わしながらも相手の腹を探り合う』という現実が顔をのぞかせただけ」と話している。
●●137 09/08 12:35 いまなぜ「スパイ」 「国民の不信恐れる」 防衛庁 社会71
冷戦が終結し、日ロ間の交流が進む中で起きた八日のスパイ事件。「国民の信頼を失うことを最も恐れる」と、記者会見で虎島和夫防衛庁長官は話した。逮捕された三等海佐 、萩崎繁博容疑者(38)は捜査員の監視に気付かず、居酒屋などでロシアの駐在武官と接触を繰り返していた。現金授受の場面も確認されたという。「握手しながら腹を探り合う」と専門家は日ロ関係を表現する。「どんな情報が」「最初の接点は」。ロシア語に詳しい学究肌とされる萩崎容疑者の逮捕に、防衛庁関係者らはショックを隠しきれない。
●●116 09/08 12:49 熱心にロシア資料を収集 社会75
防衛大学校(神奈川県横須賀市)によると、萩崎繁博容疑者(38)は一九九八年四月から今年三月までの二年間、総合安全保障研究科国際安全保障コースに在籍していた。
在籍中から、卒業論文のテーマに旧ソ連海軍の戦略を選ぶなど、在学中からロシアに強い興味を示していたという。ロシア語の読み書きもでき、専門誌に発表された論文などロシア側の関係資料を熱心に収集していた。
しかし、学生の立場で自衛隊側の機密情報に触れることはできず、ロシア関係者との接点についても、防大の公式行事としてロシア軍やロシア大使館関係者と面会する機会はなかったという。
●●119 09/08 12:49 いったい何が漏れたのか 「信用失墜怖い」と長官 社会66 #01
「冷戦が終わって、旧ソ連が崩壊してもまだこんなことが…」。
ロシアへのスパイ容疑で八日未明、海上自衛隊の三佐が逮捕された。防衛庁の海上幕僚監部や内部部局では制服幹部や職員が硬い表情で確認に追われた。経歴から見ると「学究肌」だが「変わり者」との評価もあった三佐。「秘密にアクセスできる立場にはなかった」「いったい何が漏れたのか」。防衛庁は重苦しい雰囲気に包まれた
。
自衛官のスパイ事件は、一九八○年の元陸将補らによる旧ソ連への機密漏えい事件以来二十年ぶり。閣議後の記者会見で虎島和夫防衛庁長官は「国民に深くおわびする」と陳謝。庁内に調査機関を設置する方針を明らかにし「国民の信用を失うことを最も恐れる」と語った。
自衛隊法違反容疑で逮捕された萩崎繁博容疑者(38)は、防衛大学校在学中は国際関係論を専攻。九八年春から二年間、防大の修士課程で学び、今春から防衛研究所の研究員となった。
午前十一時すぎ、同庁で記者会見した防研副所長の吉川洋利陸将補は「秘密文書は金庫に保管しており、(同容疑者は)アクセスできる立場にはなかった」と説明。「何が漏れたのか想像もつかない」と困惑の表情を浮かべた。
ロシア、独立国家共同体(CIS)などが研究テーマだが、刊行物や学会資料などが主な材料という。
同容疑者は七日も通常通り勤務。周囲は「(ロシアの駐在武官と会っていることは)全く気付かなかった」という。
東京都目黒区の防衛研究所には午前七時ごろから所員らが続々と出勤。研究所と同じ敷地内にある海上自衛隊幹部学校の教官は、萩崎容疑者について「十数年前に彼が防衛大の学生だったころ教えたことがあるので驚いた。周囲には変わり者と見られていたようだ」と口が重かった。
「経歴を見る限り学究肌のような面もあるが、特に出世は早くない。どこでロシア側との接点ができたのか」と海自幹部は首をかしげた。
●●108 09/08 13:12 機密漏えいで海自三佐逮捕 ロ大使館武官に内部資料 社会73 #01
在日ロシア大使館の駐在武官に防衛関連の内部情報を漏らしたとして、警視庁公安部と神奈川県警は八日、自衛隊法違反(情報漏えい)容疑で防衛庁防衛研究所研究員の三等海佐、萩崎繁博容疑者(38)=東京都世田谷区池尻一ノ四=を逮捕した。萩崎容疑者は大筋で容疑を認めているという。
駐在武官はビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)=東京都港区三田二丁目=。公安部などは外務省を通じ大佐への事情聴取をロシア大使館側に要請するが、大佐は外交特権を理由に拒否し同日中にも出国する可能性があるという。
ロシアへの本格的な情報漏えい事件は旧ソ連時代の一九八○年、元陸上自衛隊陸将補が逮捕されて以来で、旧ソ連崩壊後は初めて。
日ロ間の防衛交流が進む中で明るみに出た現職の幹部自衛官とロシア駐在武官による事件は、今後の日ロ交渉や防衛政策にも影響を与えそうだ。
同部などは八日未明までに、目黒区の防衛研究所や萩崎容疑者の自宅など四カ所を家宅捜索し書類など約六百点を押収。自衛隊の内部組織に関する書類が含まれているという。
大佐はロシア軍の情報機関「GRU」に所属し一九九七年九月に来日、諜報(ちょうほう)活動に従事したとみられる。
調べでは、萩崎容疑者は少なくとも昨年九月から今年八月まで約十回にわたり、都内の飲食店で大佐と接触、部外秘の海上自衛隊の内部資料のコピーなどを渡した疑い。
萩崎容疑者は情報漏えいの見返りに飲食の提供を受けており、十万円単位の現金を受け取った疑いもある。
公安部などは防衛庁と連絡を取り、情報を流した動機を追及、流出資料の特定などを急いでいる。
公安部などは七日午後七時ごろ、二人が港区の飲食店で接触したのを確認し任意同行を求めた。萩崎容疑者は応じたが、大佐は外交特権を理由に拒否した。
防衛庁によると、萩崎容疑者の立場では機密書類の入手は不可能だが、防衛研究の報告書など取り扱いに注意を要する部外秘資料は入手可能という。
萩崎容疑者は、八六年三月に防大を卒業。護衛艦や補給艦に乗り組む一方、ロシア語専攻の情報の専門家として、海外の軍事情報をまとめる資料隊や潜水艦部隊の幕僚を務めた。
九八年四月から防衛研究所に移る今年三月まで、防衛大学校(神奈川県横須賀市)の修士課程に当たる総合安全保障研究科で論文研究をしていた。大佐とは防大の防衛交流の行事で知り合ったらしい。
警視庁と神奈川県警は今年一月に合同捜査本部を設置し捜査。押収資料の分析などから、漏えいした情報が自衛隊法に定めた「職務上知り得た秘密」に当たるとの見方を固めた。
●● 89 09/08 13:35 接触は居酒屋やすし店 会社員に交じり防衛情報 逮 社会85 #01
居酒屋、すし店、中華料理店―。警視庁と神奈川県警に八日逮捕された海上自衛隊三等海佐の萩崎繁博容疑者(38)は、在日ロシア大使館のビクトル・ボガテンコフ武官(44)と、会社員らがアフターファイブに立ち寄る東京都内の飲食店で接触、飲食接待を受けながら書類を渡し防衛関連の内部情報を漏らしていた。任意同行を求められたのも、港区の飲食店での接触が確認された直後だった。
七日夜、萩崎容疑者は港区の洋風居酒屋で四人掛けのテーブルを挟み武官と
向き合っていた。談笑する二人。「一緒に来ていただけますか」。午後七時すぎ、まず捜査員が武官に声を掛けた。武官は「外交特権がある」と任意同行を拒否して立ち去った。七時半ごろ同行を求められた萩崎容疑者は警視庁へ向かった。
知り合ったきっかけは防衛庁が信頼醸成のため積極的に進める゛国際交流″。大使館員の武官はロシア軍の情報機関「GRU」に所属する陰の部分を持ち、深まった関係はスパイ容疑にまで発展。逮捕状を執行された萩崎容疑者は捜査員の前で泣き崩れたという。
接触は、警視庁が監視を始めた昨年九月以降だけで十回前後。料理を注文した後、食事の前などに書類を受け渡し、食事中の会話の中でも情報を漏らしていたようだ。現金受け渡しとみられる場面も確認されている
漏えいする書類は、武官側が必要な項目を告げていたらしく、海上自衛隊と米海軍との密接な関係を考えると、在日米軍関係の資料が漏えいされていた可能性も否定できないという。
警視庁などは、萩崎容疑者の自宅などの家宅捜索で資料約六百点を押収。雑誌などに交じって訓令や通達で持ち出し禁止とされる部内資料が見つかっている。
萩崎容疑者は一九九八年四月からことし三月まで防衛大学校で論文研究。その後異動した防衛研究所ではロシアと東ヨーロッパを研究する部署にいた。 防衛庁は九三年からロシア軍の研究機関と情報交換会議を約十回開催。艦船の相互訪問などの交流も活発で、武官はこうした機会を利用して接近、関係を深めたらしい。
●●124 09/08 18:24 日ロ交渉に冷水 最悪のシナリオと困惑 政治32 #01
海上自衛隊幹部がロシアに機密を漏えいした疑いで逮捕された事件は、プーチン・ロシア大統領の公式訪日を受けて平和条約交渉に弾みをつけようとしていた政府に冷水を浴びせる形となった。
外務省の交渉関係者は「最悪のシナリオだ」と困惑。事件の今後の流れを(1)海上自衛隊幹部が機密を流した在日ロシア大使館駐在武官の追放(2)その報復として在ロシア日本大使館の駐在武官も追放される―と予測。日ロ関係は冷却化し、平和条約交渉どころではなくなると懸念している。
与党内には「日ロ関係に影響を与えてはならない」と沈静化を急ぐ意見もあるが、事実関係の全容が不明で、有効な手だてが見つからないのが実情だ。河野洋平外相も八日の記者会見で「事実関係の詳細が分からないのでコメントは控える」と口をつぐんだ。
政府は今回の日ロ首脳会談で、プーチン大統領が北方四島のうち歯舞諸島、色丹島の日本への引き渡しを明記した一九五六年の日ソ共同宣言を明確に確認したことなど「ざっくばらんな議論ができた」(政府筋)と評価。毎年相互訪問することで一致するなど、対話ムードが再活性化する雰囲気が出ていた。
政府部内では、十一月にブルネイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際の日ロ首脳会談で、新たな領土問題の解決策を提案する考えも浮上していた。
●●253 09/08 18:49 対抗措置もとロシア政府筋 外信101
【モスクワ8日共同】八日のインタファクス通信によると、海上自衛隊三佐の機密漏えい事件で、ロシア政府筋は「八日中に適当な措置を取ることもあり得る」と述べ、ロシア側が何らかの対抗措置を取る可能性を示唆した。同筋は事件について「挑発的で極めて非友好的な措置」と述べ、強い不快感を示した。
また、ロシア外務省のヤコベンコ情報局長は同日の声明で「現在の好ましい日ロ関係に不満を抱いている勢力がいることを示している」と強く反発した。
在ロシア日本大使館によると、ロシア側が大使を外務省に呼んで抗議するなどの動きは今のところ出ていない。しかし、今回の事件が日ロ関係に影響を与える可能性もある。
●●243 09/08 19:30 ロ外務省が反発の声明 対抗措置取る可能性も 外信108#01
【モスクワ8日共同】海上自衛隊の現職三佐による情報漏えい事件でロシア外務省は八日、「現在の好ましい日ロ関係に不満を持つ勢力がいることを示している」と、事件に反発する声明を発表した。
またインタファクス通信によると、ロシア政府筋は「八日中に適当な措置を取ることもあり得る」と述べ、何らかの対抗措置を取る可能性を示唆した。
事件発覚後、ロシア外務省が声明を発表したのは初めて。声明は「両国間のパートナーシップを築こうとする建設的な作業を、挑発的な方法で傷つけようとするものだ」と強く非難した。
●●242 09/08 19:31 ロ外務省 外信108#02
在ロシア日本大使館によると、ロシア側は今のところ、丹波実・駐ロシア大使を呼んで事情を聴くなどの具体的な動きには出ていない。
ロシアは、エストニアがロシア外交官二人をスパイ活動をしたとして国外退去処分にしたのに対し、ロシア駐在のエストニア外交官二人を退去処分にするなど、この種の事件では相手国への対抗措置を取っている。
●●280 09/08 19:44 洋風居酒屋で同行求める 逮捕に大泣きの萩崎容疑者 社会145#01
警視庁と神奈川県警に八日逮捕された海上自衛隊の現職三佐、萩崎繁博容疑者(38)は、在日ロシア大使館の駐在武官、ビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)から東京都心の飲食店で接待を受けながら接触を重ねた。居酒屋、すし店、中華料理店…。高級な店を避け、アフターファイブを楽しむ会社員やOLの中に紛れ込んで、書類のコピーなどを渡し、防衛関係の情報を漏らしていた。
七日午後七時すぎ、港区浜松町のビルにある洋風居酒屋店内。「一緒に来ていただけますか」。柱の陰の奥まった四人掛けテーブルに向き合って座り、飲み物を注文した直後の二人に、警視庁の捜査員が任意同行を求めた。
「外交特権がある」と同行を拒否するボガテンコフ大佐。萩崎容疑者だけが捜査員に囲まれるように店を出て警視庁へ。八日未明の逮捕の瞬間、捜査員の前で大声で泣き崩れたという。
二人の接触は、警視庁が監視を始めた昨年九月以降だけで十回前後。料理を注文後、食事に入る前に書類を渡し、食事中の会話の中でも情報を漏らしていたらしい。現金の授受とみられる場面も確認されている。
持参する書類は、大佐が必要な項目を告げていたとみられ、海上自衛隊と米海軍との密接な関係を考えると、在日米軍関係の資料が流れた可能性も否定できないという。
知り合ったきっかけは、防衛庁が信頼醸成のため積極的に進める日ロ防衛関係者の「国際交流」。一九九三年からロシア軍の研究機関と情報交換会議を約十回開き、艦船の相互訪問なども活発だった。
ロシア軍の情報機関GRUに所属していたとみられる大佐は、こうした機会を利用
して接近、関係を深めたらしい。
●●228 09/08 20:44 ロシア外務省声明全文 外信115
【モスクワ8日共同】海上自衛隊三佐による機密漏えい事件で、ロシア外務省のヤコベンコ情報局長が八日、発表した声明全文は次の通り。
ロシア外務省は事件の推移を注意深く見守っている。遺憾なことにこの事件は、最近の日ロ両首脳の会談で示された両国関係の好ましい傾向に不満を持つ勢力が日本にいるとの考えを抱かせるものだ。この勢力は両国間にパートナーシップを築こうとする建設的な作業を、挑発的な方法で傷つけようとしている。
●●209 09/08 21:54 ロ外務省が反発の声明 外信129
【モスクワ8日共同】海上自衛隊三佐による情報漏えい事件でロシア外務省は八日「現在の好ましい日ロ関係に不満を持つ勢力がいることを示している」と反発する声明を発表した。
インタファクス通信によると、ロシア政府筋も「八日中に適当な
措置を取ることもあり得る」と言明。しかし、具体的にどういう措置をとるかについては明言しなかった。
事件発覚後、同国外務省が声明を出したのは初めてで、「両国のパートナーシップを築こうとする建設的な作業を、挑発的な方法で傷つけようとするものだ」と非難している。
在ロシア日本大使館によると、ロシア側は今のところ、駐ロシア大使を呼んで事情を聴くなどの具体的な動きには出ていない。
●●227 09/08 22:01 「まるで刑事ドラマ」 客装い入店する捜査員 社会163#01
「まるで刑事ドラマを見ているようだった」。逮捕された海上自衛隊三等海佐、萩崎繁博容疑者(38)が警視庁の捜査員に七日夜に任意同行を求められた東京都港区浜松町の洋風居酒屋。ロシアのビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)との接触の模様をアルバイト店員(23)が証言した。
七日午後六時四十分ごろ、雑居ビル七階にあるしゃれた雰囲気の居酒屋に「ビクトリー」と名乗る小太りのロシア人が現れ、柱の陰になる窓側の席を予約した。身長約一六五センチ。日本語が流ちょうで愛想のよい男だった。
予約時間の午後七時。ロシア人は日本人の男と二人で店に顔を見せた。日本語とロシア語で会話をしながら、ジントニックとビールを注文。店内はカップル一組とサラリーマン三人で、客の姿はまばらだった。
午後七時五分すぎ、雑誌を手にした会社帰りのサラリーマンやOL風の客十四人が次々に入店した。四つぐらいのグループに分かれているように見えた。
別々のテーブルについた十四人の男女。一見違うグループと思われたが、なぜかテーブルをまたいで会話が始まった。
二、三分後、顔を見合わせ一斉に席を立つ。日本人とロシア人が座るテーブルは、たちまち十数人に囲まれた。警視庁の捜査員だった。
五、六人がテーブルの周りに残り、約十人はエレベーターホールで待機。「迷惑掛けるね。チャージは払うよ」。店員に警察手帳を見せた捜査員には、余裕すら感じられた。
十五分後、捜査員に囲まれた日本人が店を後にした。残されたロシア人はエレベーターホールの公衆電話で、三分ほどロシア語で電話をした後、一人で店を出ていった。
残された五人の店員は顔を見合わせ、首をかしげるばかりだった。
●●220 09/08 22:06 米軍関係の資料も押収 漏えい情報の特定急ぐ 社会164#01
海上自衛隊の現職三佐による駐日ロシア大使館武官への機密漏えい事件で、警視庁公安部と神奈川県警は八日、自衛隊法違反容疑で逮捕した萩崎繁博容疑者(38)=東京都世田谷区=の自宅などから押収した約六百点の資料を分析、ロシア側に流れた情報の重要度や内容の特定を急いでいる。
押収資料の中には、自衛隊法で漏えいを禁じた職務上の秘密に該当する文書が確認されたほか、米軍関係の資料も含まれており、海自と密接な関係を持つ在日米海軍や世界最強とされる米第七艦隊の秘密が流出した可能性もあるとして確認を進める。
萩崎容疑者は調べに対し、これらの文書をコピーするなどして駐在武官に渡したことを認めているという。公安部などは動機についても追及している。
萩崎容疑者とロシア側のビクトル・ボガテンコフ大佐(44)が接触したのは、警視庁が確認しただけで昨年九月から計十三回に上り、現金の授受を捜査員が現認していたことも判明。一回十万円程度が封筒に入っていたとみられる。接触は月に一回程度で、その度ごとに次に会う日時を決めていたらしい。
中川秀直官房長官によると、警視庁などは八日、大佐が事情聴取に応じるよう外務省を通じて要請したが、ロシア側は拒否した。
自衛隊の部内文書は重要度の高い順に訓令で定める「機密」「極秘」「秘」の三段階の秘密文書と、通達で定める「部内限り」「注意」の計五段階がある。
防衛庁、海上自衛隊は、萩崎容疑者の経歴から、艦艇の作戦責任者や潜水艦部隊の幕僚などを務めていた当時、秘密性の高い資料に近づけたとするものの、現在の勤務先の防衛研究所では「秘」以上の文書は金庫に保管され、萩崎容疑者の立場では入手するのは困難と説明している。
●●213 09/08 22:25 機密漏えいで海自三佐逮捕 ロ大使館武官に内部資料 社会166#01
在日ロシア大使館の駐在武官に防衛関連の内部資料を漏らしたとして、警視庁公安部と神奈川県警は八日、自衛隊法違反(情報漏えい)の疑いで防衛庁防衛研究所研究員の三等海佐、萩崎繁博容疑者(38)=東京都世田谷区池尻一ノ四=を逮捕した。萩崎容疑者は容疑を大筋で認めているという。現金の授受を捜査員が確認したケースもあった。
武官はビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)=東京都港区三田二丁目=。公安部などは外務省を通じ大佐への事情聴取をロシア大使館側に要請したが、ロシア側は拒否した。
ロシアへの本格的な情報漏えい事件は旧ソ連時代の一九八○年、元陸上自衛隊陸将補が逮捕されて以来で、日ロ間の防衛交流が進む中で明るみに出た現職の幹部自衛官とロシア駐在武官による事件は、今後の日ロ交渉や防衛政策にも影響を与えそうだ。
公安部などは八日までに、目黒区の防衛研究所や萩崎容疑者の自宅など四カ所を家宅捜索し書類など約六百点を押収。米海軍関係の資料や、自衛隊法で漏えいを禁じた職務上の秘密に該当する文書などが含まれていた。萩崎容疑者は、この文書をコピーなどして渡していたと認めているという。
大佐はロシア軍の情報機関「GRU」に所属し九七年九月に来日、諜報(ちょうほう)活動に従事したとみられる。 調べでは、萩崎容疑者は確認しただけで昨年九月から月に一回程度、計十三回大佐と接触、内部資料などを渡していた疑い。都内の飲食店で大佐側が接待し、封筒に入れた十万円単位の現金を渡しているのも確認されている。
公安部などは七日午後七時ごろ、二人が港区の飲食店で接触したのを確認し任意同行を求めた。萩崎容疑者は応じたが、大佐は外交特権を理由に拒否した。
防衛庁によると、防衛研究所では秘密文書は金庫に保管され、萩崎容疑者の立場では入手は不可能だが、防衛研究の報告書など取り扱いに注意を要する部外秘資料は入手可能という。
萩崎容疑者は、八六年三月に防衛大学校(神奈川県横須賀市)卒業。護衛艦や補給艦に乗り組む一方、ロシア語専攻の情報の専門家として、海外の軍事情報をまとめる資料隊や潜水艦部隊の幕僚を務めた。
九八年四月から防衛研に移る今年三月まで、防大の修士課程に当たる総合安全保障研究科で論文研究をしていた。大佐とは防大の防衛交流の行事で知り合ったらしい。
警視庁と神奈川県警は今年一月に合同捜査本部を設置し捜査していた。
●●204 09/08 22:35 情報軽視の悪弊も背景に 脚光浴びぬポスト 社会169#01
海上自衛隊の現職三佐、萩崎繁博容疑者(38)はなぜロシア駐在武官に自衛隊の内部資料を漏えいしたのか―。冷戦終結後初めての本格的な日ロ間の「軍事スパイ事件」に、防衛関係者からは「旧軍時代からの情報担当者軽視の悪弊が背景としてあるのでは」という見方も出ている。
陸海空の三自衛隊を通じ、幹部自衛官にとって花形の任務はやはり第一戦部隊での指揮と、中央の幕僚監部勤務。逮捕された萩崎容疑者の経歴は、最新鋭艦の乗り組みや海上幕僚監部の配置は少なく、地味な情報担当や研究部門が並ぶ。
防衛大学校で一年先輩の海自幹部は「あまり脚光を浴びるポストを歩いてきたとは言えない」と率直に語る。
この先輩によると、萩崎容疑者は「スポーツより読書のタイプ。防大の成績も中位で、印象が薄く地味。積極的にリーダーシップをとることはなかった。船乗りではなくデスクワーク向き」だった。
「防大の修士課程から現在の防衛研究所勤務は、本人の希望があったのかもしれないが、やはり亜流。インフォメーション・ウオー(コンピューター情報戦争)の時代と騒ぐが、萩崎三佐に限らず自衛隊の情報畑の人は旧海軍と同じように、割を食い恵まれないのが実情」と、ある海幕の幹部は指摘した。
別の部隊指揮官は、萩崎容疑者が一、二年前、子どもを難病で亡くした、と明かす。「白血病とかいろんな病気が重なったと聞いている。治療費を同期生たちがカンパしたらしい」という。
警視庁なども、高額の治療費が必要だった事実を把握しているもようだが「ロシア側から受け取った金額では及ばない」と金目的は疑問視しており、萩崎容疑者が「スパイ行為」に陥った動機解明にはまだ時間がかかりそうだ。
******************ここから9月9日******************************
●●135 09/09 08:07 息子の香典契機に現金授受 ロシア武官、巧妙な工作 社会08 #01
海上自衛隊の三佐による駐日ロシア大使館武官への機密漏えい事件で、自衛隊法違反容疑で逮捕された萩崎繁博容疑者(38)が今年三月に長男を亡くした際、駐在武官のビクトル・ボガテンコフ大佐(44)から初めて香典名目で現金約十万円を渡され、これ以降、現金授受が継続的になったことが九日、警視庁公安部と神奈川県警の調べで分かった。
警視庁などは、現金が情報提供の対価で、金を受け取りやすくするための「タイミングを図った巧妙な工作だった」(捜査幹部)との見方を強めており、ロシア軍の情報機関「GRU」所属の大佐が諜報(ちょうほう)活動の一環として萩崎容疑者の取り込みを図ったとみて捜査している。渡った現金は計数十万円程度とみられる。
調べでは、萩崎容疑者と大佐は昨年九月ごろから月に一回程度の接触を続けていた。当初、大佐が要求する情報は簡単な内容が多かったが、現金授受が始まって以降、要求のレベルは徐々に高くなっていったという。
萩崎容疑者は、情報を漏らした動機は供述していないが、警視庁などは受け取った金額が高額でなく生活に困っていた様子もないことから、金目当ての可能性は低いとみている。
警視庁などは九日午後、萩崎容疑者を自衛隊法違反容疑で送検する。
●●109 09/09 09:03 機密漏えいで日本に照会 外信35
【ワシントン8日共同】米国防総省当局者は八日、海上自衛隊三佐による駐日ロシア大使館武官への機密漏えい事件で、米軍に関する情報がロシア側に渡っていないかどうかを「日本政府に問い合わせる」と述べ、米政府としても事件に懸念を抱いていることを明らかにした。
事件では、容疑者の自宅などからの押収物の中に米軍関係の資料が含まれているとされ、在日米海軍や米第七艦隊に関係する情報がロシア側に流出した可能性がある。
●● 12 09/09 17:55 武官がロシアへ向け出国 機密漏えい、聴取困難に 社会55 #01
海上自衛隊三佐による機密漏えい事件で、情報提供を受けたとされる駐日ロシア大使館武官、ビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)が九日午後零時半ごろ、成田発のアエロフロート機で出国した。
警視庁公安部と神奈川県警は引き続き、外交ルートを通じ事情聴取に応じるよう要請する方針だが、実現はほぼ不可能とみられる。日本で諜報(ちょうほう)活動をしていたとされる大佐の活動実態の解明は困難となり、今後、裏付け捜査に支障が出そうだ。
過去のスパイ事件でも情報提供を受けたとみられる外国の大使館関係者らは、事件発覚直後に多くが帰国、日本の捜査当局の事情聴取には応じていない。
公安部などは九日、自衛隊法違反(情報漏えい)の疑いで、防衛庁防衛研究所研究員の三等海佐、萩崎繁博容疑者(38)を送検した。
一方、萩崎容疑者が今年三月に長男を亡くした際、ボガテンコフ大佐から初めて香典名目で現金約十万円を渡され、これ以降現金授受が継続的になったことが分かった。
公安部などは現金が情報提供の対価で、萩崎容疑者が金を受け取りやすくするための「タイミングを計った巧妙な工作だった」(捜査幹部)との見方を強めている。
萩崎容疑者は情報漏えいの見返りとして、計数十万円の現金や飲食の提供を受けたという。動機は供述していないが、公安部などは受け取った金額が高額でなく、生活に困っていた様子もないことから、金目当ての可能性は低いとみている。
調べでは、萩崎容疑者は昨年九月から今年八月にかけ少
なくとも十三回にわたり、渋谷や六本木など都内の飲食店で大佐と接触、海上自衛隊の内部資料のコピーなどを渡した疑い。
萩崎容疑者は「(武官に)資料を渡すことは違法な行為だと認識していた」などと供述、ほぼ容疑を認めているという。
●●133 09/09 19:29 事件で早く帰国とロ高官 対日配慮で慎重対応 外信94 #01
【モスクワ9日共同】タス通信によると、ロシア外務省高官は九日、海上自衛隊三佐による機密漏えい事件で情報提供を受けたとされる駐日武官、ボガテンコフ海軍大佐の離日について「(武官の)駐在任期は一週間後に終了する予定だったが、周知の理由により、少し早く東京を離れた」と述べ、出国が事件と関係していることを認めた。
またインタファクス通信によると、ロシュコフ・ロシア外務次官はロシアが対抗措置を取るかどうか不明と指摘。その上で「日ロ関係も含め、すべての事情を考慮し、バランスの取れた決定をしなければならない」と述べ、対日関係全体への影響に配慮しながら慎重に対応する方針を示した。
しかし、タスによると、外務省高官はロシア側が進めている事件の分析結果によっては、対抗措置をとる可能性があると述べた。
警視庁の事情聴取を拒否する形で出国したボガテンコフ海軍大佐は九日夕(日本時間同日夜)帰国する予定。
●●121 09/09 20:48 領土交渉不調が背景と報道 外信100
【モスクワ9日共同】九日付のロシア有力紙、セボードニャは、海上自衛隊三佐による機密漏えい事件について、プーチン大統領が先の訪日の際に領土問題で強硬姿勢を示したことに対する日本側の「最初の反応」と指摘、成果なく終わった領土交渉への日本の不満が背景にあるとの見方を一面で伝えた。
またイズベスチヤ紙は、大統領訪日直後の事件摘発について、日ロ関係の発展を「快く思わない日本の警察幹部による(反ロの)宣伝キャンペーン」と論評した。
一方で独立新聞は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)所属の駐日武官が関与した事件について、GRUやKGBの後身である対外情報局(SVR)の対外諜報(ちょうほう)活動が「最近数年間失敗が続いている」と指摘。作戦能力の改善策が「不可欠であることを事件は証明した」と報じた。
●●219 09/08 21:19 関係悪化回避で慎重対応か スパイ事件でロシア側 外信125#01
【モスクワ8日共同】海上自衛隊三佐による駐日ロシア武官への情報漏えい事件でロシアは八日、日本側を批判する外務省声明を出すなど反発したが、全般的な日ロ関係発展を目指すロシアは両国関係に大きなひびが入らないよう、事件の早期収拾をにらみつつ、慎重に対応するとみられる。
日本側がロシア武官の国外退去処分などの措置を取れば、ロシア側が日本の駐ロ武官への同様の措置を含め、何らかの対抗措置をとるのは確実な情勢だ。
しかし、外務省声明は日ロ間の関係好転に「不満な勢力が日本にいる」と指摘、日本政府を直接名指しで非難することを避けた。これは、日本政府が対ロ関係悪化を承知で事件を摘発したとはみていない、とのシグナルとも読める。
事件について、ロシア外務省幹部は「遺憾である。事態の推移を注視している」と述べ、プーチン大統領の訪日直後に起きた事件への当惑を隠さなかった。
大統領訪日で日ロ首脳は平和条約の年内締結を目指すとしたクラスノヤルスク合意実現の断念を事実上確認したが、ロシア側は、これを受けて日本側で対ロ強硬論が強まることを懸念していた。
このため、ロシア側は日本側の真意の見極めを急ぐ一方、今後事件が追放合戦などに発展しても、事件の余波が拡大しないよう、収拾の゛落としどころ″を模索するとみられる。
●● 80 09/09 23:12 ロシア武官が帰国 任意同行時に幹部教本所持 海自 社会83 #01
海上自衛隊三佐による機密漏えい事件で、情報提供を受けたとされる駐日ロシア大使館武官、ビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)が九日午後零時半ごろ、成田発のアエロフロート機で出国、日本時間の同日午後十時すぎ、モスクワに到着した。
警視庁公安部と神奈川県警は引き続き、外交ルートを通じ事情聴取に応じるよう要請する方針だが、実現はほぼ不可能とみられる。日本で諜報(ちょうほう)活動をしていたとされる大佐の活動実態の解明は帰国で困難となり、今後、裏付け捜査に影響が出そうだ。
また防衛庁防衛研究所研究員の三等海佐、萩崎繁博容疑者(38)=東京都世田谷区=は七日の任意同行の際、海自の幹部教育で使う教本のコピーを持っていたことが分かった。海自の幹部教育の内容やシステムが漏れていた疑いが浮上した。
一方、大佐側に渡った文書の中に防衛庁の幹部名簿があったほか、萩崎容疑者の自宅から押収された資料の中に、自衛隊内の重要度で五段階の二番目にあたる「極秘」扱いの文書があったことも判明。しかし大佐側には渡らなかったとされる。
公安部などは九日、自衛隊法違反(情報漏えい)の疑いで、萩崎容疑者を送検した。同容疑者は「(武官に)資料を渡すことは違法な行為だと認識していた」などと供述、ほぼ容疑を認めているという。
逮捕時に持っていたコピーは、海上自衛隊の幹部教育課程で使用する教本数冊分。内容は幅広く、部隊の運用や装備機材の仕様、取り扱い方法などが含まれている。秘密の重要度はそれほど高くないが部外秘の資料で、海自の教育体系なども分かる。萩崎容疑者が解説を加えようとした可能性もあるという。
また萩崎容疑者が今年三月に長男を亡くした際、ボガテンコフ大佐から初めて香典名目で現金約十万円を渡され、これ以降現金授受が継続的になったことが分かった。
公安部などは現金が情報提供の対価で、萩崎容疑者が金を受け取りやすくするための巧妙な工作との見方を強めている。
萩崎容疑者は情報漏えいの見返りに、計数十万円の現金や飲食の提供を受けたという。公安部などは受け取った金額が高額でなく、金目当ての可能性は低いとみている。
●● 76 09/09 23:14 幹部教育の教本コピー所持 任意同行時に海自三佐 社会84 #01
駐日ロシア大使館武官への機密漏えい事件で、防衛庁防衛研究所研究員の三等海佐、萩崎繁博容疑者(38)が、都内の飲食店で駐在武官ビクトル・ボガテンコフ海軍大佐(44)と密会中の七日夜、任意同行を求められた際に、海上自衛隊の幹部教育で使用する教本のコピーを持っていたことが九日までの警視庁公安部と神奈川県警の調べで分かった。
萩崎容疑者が任意同行に応じたためコピーは大佐に渡らなかったが、公安部などは部隊運用をはじめ海自の幹部教育の内容などが漏れていた疑いがあるとみて追及している。
また大佐側に渡った文書の中には、防衛庁の幹部名簿があったことが分かったほか、萩崎容疑者の自宅から
押収された資料の中に、自衛隊内の重要度で五段階の二番目にあたる「極秘」扱いの文書があったことも判明。大佐側には渡らなかったとみられるが、重要書類が持ち出されていたことで防衛庁側の管理の不備が問われそうだ。
一方、九日午後に日本を出国したボガテンコフ大佐は、日本時間の同日午後十時すぎ、モスクワに到着した。
公安部などは九日、自衛隊法違反(情報漏えい)容疑で萩崎容疑者を送検。同容疑者は「(武官に)資料を渡すことは違法な行為だと認識していた」などと供述しているという。
逮捕時に持っていたコピーは、海上自衛隊の幹部教育課程で使用する教本数冊分。潜水艦関係の記述や、組織編成の内容のほか、部隊運用や装備機材の取り扱い方法などが含まれている。萩崎容疑者が解説を加えようとした可能性もあるという。
秘密の重要度はそれほど高くないが部外秘の資料で、海自の教育体系や教育思想なども分かるという。
自衛隊の部内文書は重要度の高い順に訓令で定める「機密」「極秘」「秘」の三段階の秘密文書と、通達で定める「部内限り」「注意」の計五段階に分類されている。
公安部などは引き続き外交ルートでロシア側に事情聴取に応じるよう要請する方針だが、ボガテンコフ大佐の帰国で実現はほぼ不可能とみられる。日本での諜報(ちょうほう)活動の実態解明は困難となり、今後の裏付け捜査にも影響しそうだ。
調べでは、萩崎容疑者は昨年九月から今年八月にかけ少なくとも十三回にわたり、都内の飲食店で大佐と接触、海自の内部資料のコピーなどを渡した疑い。情報漏えいの見返りとして、計数十万円の現金や飲食の提供を受けたという。
●●<保守党>スパイ防止法制定を要請 野田幹事長が森首相に(毎日新聞)
保守党の野田毅幹事長は12日、首相官邸に森喜朗首相を訪ね、海上自衛隊の3等海佐が在日ロシア大使館の海軍武官に機密情報を流していたとされるスパイ事件に関連して、スパイ行為再発防止のための「スパイ防止法」制定を検討するよう要請した。首相は「検討を指示したい。よく研究し議論する」と応じた。
[毎日新聞 9月12日]
●●「スパイ防止法」制定へ、首相が前向きの姿勢(讀賣新聞)
保守党の野田幹事長、二階俊博国対委員長らは十二日、首相官邸で森首相に対し、海上自衛隊三佐がロシアに日本の防衛機密を流していた事件に関連し、国家機密の漏えいに加担した者を罰する「スパイ防止法」を制定するよう申し入れた。森首相は「検討、研究をしていきたい」と述べ、前向きの姿勢を示した。
野田氏らは、〈1〉ロシア政府に、情報を受けていた疑いのあるロシア海軍大佐の日本への引き渡しを求める〈2〉再発防止のため、自衛隊員の再教育、防衛機密保護のための組織再構築を行う――の二点も求めた。保守党はスパイ防止法制定に向け党内にプロジェクトチームを設置し、近く本格的な検討に入る。
(9月12日23:28)
●●110 09/12 19:58 スパイ防止法制定を―保守 政治53
保守党の野田毅幹事長は十二日午後、首相官邸で森喜朗首相と会い、在日ロシア大使館武官への機密漏えい事件で(1)武官の日本への引き渡しを求めるなど断固とした態度をとる(2)再発防止のため自衛隊員の再教育徹底と機密保護の再構築(3)スパイ防止法の制定検討―を申し入れた。
首相は「検討を指示する。よく研究、議論したい」と答えた。
ただ、中川秀直官房長官はスパイ防止法について同日夕の記者会見で「検討はするが、現実問題として身柄の引き渡しを求めることなどは国際法のルール上は難しい」と述べ、同法制定は現実的でないとの認識を示した。
●●35 09/13 18:37 ロシア人脈求め深みに 駐在官夢見て傾倒 社会100#01
海上自衛隊三佐によるロシア側への機密漏えい事件で、逮捕された萩崎繁博容疑者(38)が情報を漏らすようになった背景に、地味な情報部門を渡り歩く中で専門のロシア問題に傾倒、モスクワの防衛駐在官を夢見て人脈を求める中で同大使館の駐在武官ボガチョンコフ海軍大佐(44)=九日に帰国=と接触、深みにはまった事情があることが、十三日までの関係者の話などで分かった。
警視庁公安部と神奈川県警は押収資料を基に漏えい情報の特定を急ぎ、動機を詳しく調べている。
萩崎容疑者は一九八六年に防衛大を卒業。護衛艦などに乗り組む一方、海外の軍事情報をまとめる資料隊や第一潜水隊群司令部(広島)などで情報幕僚として経験を積んだ。九三年四月から一年間と、九七年九月からの半年間は「スパイ養成学校」とも呼ばれる陸上自衛隊調査学校(東京都小平市)に在籍した。
一見エリートに見える経歴について、ある防衛庁幹部は「情報部門や研究職は決して出世コースではない。調査学校への入校も遅く、本人もモスクワ勤務は難しいと自覚していたはず」と説明する。
モスクワ駐在などの重要ポストにつくには部隊指揮官を養成する難関の「指揮幕僚課程」をパスする必要があるが、萩崎容疑者は不合格だったという。
職場の同僚らは「ロシア語が流ちょうで、非常にまじめな研究家」「防衛大修士課程の卒論テーマに旧ソ連海軍の戦略を選ぶなど、ロシアに強い興味を示していた」などと振り返る。
萩崎容疑者と大佐の接触について「ロシアの軍関係者と人脈をつくり情報通として認められることで、希望の実現を目指したのではないか」と推測する人も。
自衛隊の花形は一線部隊の指揮官や中央の海上幕僚監部で防衛計画や戦略を練る幹部。その中で萩崎容疑者があまり日の当たらない研究職を選んだのには「家庭の事情があったのではないか」と指摘する声もある。
関係者によると、萩崎容疑者夫婦には難病の長男がいたという。 「白血病とかいろいろな病気を併発し、かなりひどい状態だったようだ。同期生が治療費をカンパしたこともあった」「子どもの病院の関係で家を長く空ける一線勤務を避け、艦艇の乗り組みから地上ポストを希望したらしい」
長男はことし三月に亡くなり、香典の名目で初めて大佐から現金約十万円を渡されて以降、現金授受が継続的になったという。
捜査幹部の一人は「専門家として人脈をつくろうとした萩崎容疑者と、情報機関の諜報(ちょうほう)活動の一環として自衛官の取り込みを図った大佐の利害が一致して関係を深め、現金授受で泥沼にはまったのではないか」と話した。
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●●BBCニュース
http://news.bbc.co .uk/hi/english/world/asia-pacific/newsid_916000/916365.stm
2000年9月8日(グリニッジ標準時14:09)(金)
スパイ産業は冷戦後の今も元気でぴんぴんしている
英国放送協会・ロシア問題分析官スティーヴン・ダルツィエル
東京で日本海軍(海上自衛隊)の将校がモスクワに利益をもたらすスパイ行為をしていたとして逮捕されたが、ロシア当局はこれを「日本政府の挑発だ」と非難している。今回の逮捕劇は、おりしもロシアのヴラディーミル・プーティン大統領が訪日を済ませた直後に起きたものだった。プーティン訪日は日露関係の改善に向けた画期的な出来事となったが、長年続いてきた領土問題のなかで日本側が求めてきたものは、今回は得られなかったのである。
十年ほど前に冷戦が終焉を迎え、それとともにスパイ活動の時代も終わったと考えている人もいるだろう。しかし実際には、冷戦であろうがなかろうが世界中の国家は他国の“秘密”を知りたがるものだ、という単純な事実を裏付ける出来事が、これまでイヤというほど起きてきた。その最新の事例が、日本の海軍少佐(海上自衛隊三佐)である萩崎繁博の逮捕劇であった。 この事件は単に、スパイゲームがロシアと米国の専売特許ではない、という当たり前の事実を示した出来事にすぎない。
●●スパイの“お仕事”
それどころか、東京で騒動が起きたほんの一週間前にも、モスクワはエストニアと、スパイ事件で一悶着おこしている。エストニアといえば、ほんの十年ほど前(1991年)まではソ連の一部だった国である。
国家が、ほかの国に隠しておきたい事柄を抱えている以上、国々が互いから隠しておきたい秘密がある限り、“スパイのお仕事”は事欠かない。もっとも、その“お仕事”の性質は、かつてと比べればちょっと毛色が変わってきたが……。
今や、経済やテクノロジーの秘密を盗むことがスパイ活動の最重要課題になっている。ところが冷戦のさなかには、ソ連でも米国でも、スパイ活動の努力の大部分は、相手陣営の軍事計画を見きわめることに向けられていた。あの時代、両陣営とも、相手の秘密を知って攻撃しようと真剣に考えていたのだろうか?さらにいえば、両陣営が一目置いていた「敵側の軍事力」は、実際のところどのようなものだったのか?
●●見えてきた“秘密”を見ずに済ませる
……まったく皮肉なことだが、スパイたちは大いに信頼できる情報をせっせと掻き集めたのであるが、たいていは指導者たちに――それもよりによって軍事指導者に――無視されていたのだ。なぜならスパイが集めた情報は、指導者たちがすでに進めていたその時々の計画に、都合が良いものではなかったから……。
たとえばソ連の参謀たちが「NATOがモスクワ攻撃を本格的に準備している」というデマを国民に信じさせようと躍起になっているところに、スパイたちから、こんな報告が上がってくる――「NATOがモスクワ攻撃を準備している徴候はまったく認められない」。 かくして上層部はスパイの仕事を握りつぶしてしまうというわけ。
しかし最近の――たとえば東京の自衛官逮捕に絡む――事例から見えてくるのは、スパイ機関自身が“お仕事”自力で開拓しようとする場合も、ままあるということだ。
●●日本は腹立ちまぎれに事件を演出……?
萩崎“海軍少佐”逮捕の発表の――プーティン大統領訪日からわずか3日目という――絶妙なタイミングは、もちろん偶然の一致と考えられる。だが大統領訪日の成果なのであろうが、ロシアには対日関係改善を歓迎するムードがあったのに、日本側はこの訪問を歓迎する理由が乏しかった。それもまた否定できない事実なのだ。
ロシアと日本は、第二次世界大戦後、正式な平和条約をまだ結んでいない。日本側が平和条約の締結にすなおに取り組めない理由は、これまで一貫して、彼らが「北方領土」と呼ぶ――そしてロシアが「クリル諸島」と呼ぶ――島々の領有権にこだわってきたからだ。いま日本が「北方領土」と呼んでいる島々は、1945年にソ連に占領されてしまったのである。
ロシアと平和条約を結ぶかどうかは「北方領土」が返還されるかどうかにかかっている――これが東京政府の態度だ。プーティン大統領は、この領土問題が今回の議題ではないと明言した。しかしこうした障害を乗り越えて、両国の政治家たちは、いくつかの合意に達することができたし、日露関係は今回の大統領訪日で確実に改善されたのだった。
こうした外交上の前進が、日本の“保安機関”にとって愉快なものでなかった可能性は高い。“保安機関”の連中はプーティン訪日の“成果”を、日本のプライドを汚すものだと見ているだろう。こうした連中が考えつく“最善の策”――それはスパイ物語を宣伝して日露の蜜月ムードをぶち壊すことだろう。
だが、もしもそうした思惑で逮捕騒動を演出したのだとしたら、連中には見えていないことがあると言っておこう。それは、もはや冷戦時代ではない、ということだ。あの時代ならスパイ摘発劇はショッキングなスキャンダルにもなったが、今やそんな“事件”は、たいした政治的影響を持ち得ないのだ。
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