投稿者 倉田佳典 日時 2000 年 9 月 11 日 19:48:03:
「八十二銀行の地方公共団体担当者が、長野県内の市町村を回って『ウチの頭取は、田中康夫氏を支持する、などとは、一言も言っていません。その点を、よろしくご理解たまわりたい−−』と頭を下げているというのです」
長野県出身の国会議員秘書がこういう。
この秘書氏の言う八十二銀行とは、長野県に本店を置く地方銀行だ。そして、この“証言”の意味を理解するためには、少々の解説が必要だろう。
先週末の9月7日、作家の田中康夫氏(44)が、10月15日に投票日となっている長野県知事への出馬表明を行った。
前述の八十二銀行の茅野実頭取は、その田中氏擁立の急先鋒とされた人物だ。
「八十二銀行は、県下最大の金融機関であると同時に県の指定金融機関を務めるなど、“県の金庫”とでも言うべき存在の銀行です。さらには、地元財界の中心、と言っていいでしょう。その八十二銀行が、田中氏支持を打ち出したのですからびっくりしてしまいました−−」(地元財界人)
もともと、この県知事選は、これまで5期20年知事を務め、“長野県のドン”といわれた吉村午良知事が引退を表明し、その後任については、その吉村知事が指名した池田典隆前副知事で決定していた、と言っていいだろう。
「県議会についても、共産党を除く、すべての政党・会派が、“池田推薦”を決定して、県政界はまさに“オール与党”とでもいうべき状況だったのです」(前述の地元財界人)
そしてこう続ける。
「そうした状況に対して、『いくら何でもそれはおかしい−−』と一部有力県財界人が異を唱え、水面下で田中氏擁立に動いたのです。そして、その中心人物が茅野頭取だったのです」(前述同)
ところが、こうした“動き”に対して、実に驚くべきことが起こったのである。
「そうした茅野頭取サイドの動きが表面化するや否や、八十二銀行本店前に右翼の街宣車が押しかけ、連日大音量で茅野頭取批判を始めたのです」(地元財界人)
地元では、この右翼の背後には、地元建設業界が控えているともっぱらの評判だ。
「しかも、八十二銀行とライバル関係にある、第二地銀の長野銀行や長野信金などの地元金融機関が八十二銀行の優良取引先を回って、『田中支持に動いている八十二銀行は、全くけしからん。ウチに取引を変えてくれ−−』と営業しているのです。中でも、市町村といった地公体への攻勢は相当なものがあります−−」(別の地元財界人)
もっとも、そうした地公体の首長も池田支持で全面的に固まり、ここへ来て盛んに池田詣でを繰り返していたのである。
「そうした地公体の“公金”の取り扱いは、これまで八十二銀行が一手に引き受けていました。税金や水道料金等の公金収納や公金の運用は八十二銀行に一極集中していたのです。ところが今、そうした“一極集中”が見直されそうな雲行きとなってきたのです」(前述同)
そうした状況にあわてたのが、八十二銀行だったのである。
「ここへ来て預金流出は進むし、田中氏支持を引っ込めざるを得なかった」(八十二銀行幹部)