投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 9 月 15 日 01:10:34:
東大医科学研究所の中村祐輔教授と国立がんセンター分子生物学研究室の田矢洋一室長らの研究チームが、がんの発症を防ぐ細胞の「自殺」(アポトーシス)について、主役を果たす遺伝子を世界で初めて見つけた。細胞は遺伝子に傷がつき異常増殖する前にアポトーシスを起こして、生体をがんから守っており、ほとんどのがんでは、この遺伝子を働かせる仕組みが失われている。
今回の成果は、がんの新たな治療法につながる可能性があり、詳細は、十五日発行の米生命科学誌「セル」に発表される。
中村教授らが今回、突き止めたのは「AIP1」と呼ばれる遺伝子で、この遺伝子が働かなくなった細胞ではアポトーシスが起きなかったが、この遺伝子を戻すと再びアポトーシスが起きた。マウスの腫瘍(しゅよう)にAIP1遺伝子を注入したところ、実際に増殖が抑えられた。
AIP1は、がんを抑制する様々な働きを持っている「p53」と呼ばれる遺伝子により活性化されるが、その場合、p53が作り出すたんぱく質の特定の三か所に、「リン酸」と呼ばれる物質が結合することが必要なことも、田矢室長らによって突き止められた。
細胞内に修復しきれないほどの遺伝子の傷がある場合にのみ、リン酸が三か所に結合し、アポトーシスを起こすスイッチが入る。傷が少ない時は、リン酸は二か所しか結合せず傷を治す遺伝子「p53R2」を働かせる。
がん抑制に多彩な役割を持つp53が、細胞の状況に応じてどのように制御されているかナゾだったが、今回、それがリン酸の結合によることを初めて示した。