投稿者 9/14 現代Online 日時 2000 年 9 月 14 日 14:52:33:
衝撃スクープ公開 自民党のために、「潰れてくれ!」と懇願
亀井静香政調会長がそごう社長にかけた「倒産要請電話」全会話をスッパ抜く
7月11日、社長にかかってきた1本の電話がきっかけで、そごうはあっという間に倒産した。電話をかけたの
は、亀井静香自民党政調会長だ。「自主的な倒産」という名目の陰の、巨大な政治的圧力。銀行が書いた巧妙なシ
ナリオ……。スクープ入手した“運命の電話”の記録から、事件の全貌が見えてくる!
山田氏との詳細な会話記録
7月12日に大手百貨店「そごう」が倒産してから、2ヵ月が過
ぎた。この夏、長野、多摩など閉鎖が決まった店ではバーゲン
が行われ、東京・有楽町の「東京店」も、現在、閉店セールの
真っ最中だ。
しかし、時間が経ったいま振り返ってみると、一連のそごう
倒産劇には、不可解な点があまりにも多い。
6月30日に、金融再生委員会と預金保険機構によって「債権
放棄」による再建が決まりながら、そのわずか12日後、一転し
て法的整理による倒産となった。いったいどんな経過で、こん
な重大な決定がひっくり返ったのか。
報道によると、最後に力ずくでそごうに“引導”を渡したの
は、亀井静香自民党政調会長だった。亀井氏は7月11日、そご
うの山田恭一社長(当時。以下同)に電話をかけ、「債権放棄
要請を取り下げてほしい」と説得したという。
この強引な“介入”の結果、そごうは翌12日、「自主的」に東京地裁に民事再生法の適用を申請。受理されて
倒産が決まった――とされている。が、亀井氏が電話で実際に何と言ってそごうを潰したのかは、まったく明らか
になっていない。
その後、7月26日には「再建請負人」として、元西武百貨店会長の和田繁明氏(66歳)が、次期社長含みで特
別顧問に就任した。和田氏は、大阪店の建て替えや東京店の閉鎖を次々と発表し、「将来、古巣の西武百貨店と提
携するのは間違いない」(全国紙経済部記者)といわれる。
8月2日には、「放漫経営の元凶」と批判を浴びた水島廣雄前会長(88歳)の、総額15億円と言われる資産の一
部が、日本興業銀行(以下、興銀)サイドに差し押さえられた。
8月3日には、そごうのメインバンク・興銀の西村正雄頭取が、国会で参考人の席に立った。西村氏は「貸し出
しで脇が甘くなった」と融資責任を認めながらも、「水島体制を一刻も早く脱皮しなければと願ったが、うまく行
かなかった」などと、水島氏一人に責任を押しつけるかのような弁明をしている。
水島氏の反撃も始まった。
「8月下旬、水島氏はそごうと興銀に対して、4月にそごうに無償譲渡した千葉そごう株の返還を要求しました。
千葉そごうは、そごうグループの持ち株会社ですから、水島氏がその株式の51.1%を取り戻せば、再びグループ
のオーナーに返り咲くことになります」(前出・経済部記者)
もちろん、そごうの現経営陣は拒否しているが、水島氏は戦闘意欲満々だという。そごう問題は、今後も大きな
波乱が起きそうなのだ――。
そんななか、本誌は自民党関係者から、そごう倒産にまつわる詳細な会話の記録メモを入手した。前述した7月
11日、亀井氏が山田社長にかけた「倒産要請」の電話と、翌12日、山田社長から亀井氏にかけた電話の、2回分
の記録だ。
これは、関係者が二人の電話を何らかの形で録音し、それを一字一句正確に文字にしたものである。いったい亀
井氏は、そごうにどう倒産を迫ったのか。さっそく1本目から、生々しい中身を紹介しよう。
「政府にも傷がつきませんし」
(秘書が電話を受けた後、山田氏に代わって)
山田 もしもし、山田でございますが。
亀井 亀井静香でございます。どうもお世話になっております。
山田 こちらこそお世話になっております。
亀井 また、大変なご苦労をされておられる噂は聞いておりまして。
山田 ご迷惑かけておりまして、申し訳ございません。
亀井 頑張っていただきたいと思いますが……。
山田 はい、ありがとうございます。
亀井 それでですね、この度の件につきまして、総理からも私に任せるということで。
山田 はい、新聞に出ておりました。
亀井 対応をいま、いろいろと考えておるんでございますけれども。社長、この問題について、昨日も自民党の
金融問題調査会、それから財政部会、また政調正副(会長)等での会議をやりまして、また今日も(与党)3党で
政策責任者の会議をやったんです。
債権を放棄することについて、損失を最小限に抑えるという正当な考え方はそれとしても、結局、国民感情とし
て、額の問題ではなくて、ゼネコンの問題だとか、次から次と出てきた場合、そういう政府の決定は認められない
という、各党含めて、圧倒的なそういう状況なんです。
山田 あ、さようでございますか……。
コワモテなイメージとは裏腹に、亀井氏の話しぶりは腰が低く、穏やかだ。ただ、話の中身は強烈。「そういう
政府の決定は認められない」、つまり、「金融再生委員会と預金保険機構が正式に決めた債権放棄を認めない」
と、のっけから宣言しているのだ。
真面目に応対する山田社長は、すっかり困惑している様子だが、亀井氏は構わず一人でまくしたてる。
亀井 そういう中で、私どものほうで再生委員会の決定をそのままにしておくことが、政治的にできない状況
に、残念ながらなっております。
また、昨日、今日の中で、再生委員会の機構の代表が、「これ(債権放棄)については、再建計画が実施される
ときにという、予約みたいな話なんで、事情変更で変更もありうる」という理論的な立場を言ってるもんですか
ら、そういう状況の中で再生委員会が認めたことを是として前に進むことが、取りまとめの私の立場として、非常
に難しくなっておりまして。
これを私がやった場合、政府と正面から対決する形になっちゃうもんで、そうしますと、谷垣(禎一)さんがも
う大臣(金融再生委員長)を辞めてるもんですから、総理直結で責任が行ってしまう。
(中略)いま、総理の立場も非常に厳しいものになってきますので、誠に勝手なアレなんですが、今後について
は、党としても全力を挙げて(そごうを)ご支援申し上げたいと思うんですけども。
勝手なアレなんですが、機構に対しての債権放棄のご要請をそごうの方からお取り下げいただくというご配慮を
賜れば、政府にもこれはちょっと傷がつきませんし……。<
br>
つまり、森首相を守るため、自民党のメンツのために、正式に決まった債権放棄をひっくり返し、そごうを潰し
てくれ、と要求しているのだ。
NEXT>>>
何度も「虫のいい話ですが」と
亀井 (中略)結局、そういう中で本当に申し訳ないんですけども、そごうのほうにおいて取り下げることにご承
知をいただければ、そのあたりが政府も傷つかずに、再生委員会も傷つかずに済むということで、本当に虫のいい
話なんですけども、ひとつ今後のことにつきましては、興銀その他銀行団含めて、全面的に私どもとしてそごうの
再生のためにバックアップさせていただきたいと思います。
なので、ぜひひとつそういうことでお汲み取りいただければ、非常にありがたいと思いまして、いま、電話を差
し上げてるんですが。
山田 そうでございますか。私どもも、本当にご迷惑かけて申し訳ないと思ってるんですが、新聞報道では修正
で決着の方向ということを聞いておりましたんで、ちょっといま、先生のお話を聞いてびっくりしておりますんで
すね。
山田社長がびっくりするのも無理はない。「森首相から任せると言われた」というだけで、立場上の正当な根拠
が何もない人物が、いきなり電話をかけてきて「倒産してくれ」と迫ったのだから。
「当時は6月25日の総選挙直後で、敗北した森内閣の支持率は低迷したままでした。そこへ国民から『そごうへの
債権を放棄して一企業に税金を注ぎ込むとは何事だ』という批判の大合唱が起き、『これでは森政権が崩壊する』
と、自民党は焦った。とくに亀井氏は、許永中被告との関係が取り沙汰され、政治的に生き残るために、周囲をあ
っと言わせるパフォーマンスをする必要があったのです」(ジャーナリスト・須田慎一郎氏)
党も自分自身も追いつめられた中で、亀井氏は「政府も傷つかず」「虫のいい話ですが」と繰り返し、必死に
「潰れてほしい」と口説く。恥知らずにもほどがあるが、山田社長は次第に丸め込まれていく。
亀井 まことに申し訳ないんですけど、私もずーっと昨日、今日とアレしておりまして、再生委員会の決定を、
まだご承知のようにきちっと契約といいますか、アレしてませんもんですから……。
山田 契約しておりません。
亀井 (中略)そういう状況の中で、私の立場として、じゃ、そのままで結構だという判断が、政治的にもでき
ないんですね。そうしてしまいますと、結果的にはどうしても、政府と私ども(与党)3党が対決する過程になっ
ちゃうもんですから。
山田 先生のお立場はわかります。
亀井 そこらでぜひひとつ、虫のいいアレかもしれませんが、ご検討賜たまわればありがたいと思いましてです
ね。
山田 先生のご趣旨、よくわかりました。
亀井 どうぞよろしく。
山田 メインバンクの銀行さんとも、よく相談したいと思いますけれども。
亀井 はい。
山田 ちょっと私、政治のことは知りませんので、たいへん失礼なことをするかもわかりません。ちょっと二、
三お聞きしてもよろしゅうございましょうか。
亀井 結構ですけど。
山田 今、先生がおっしゃいました先生のお立場ということでございますが、新聞で拝見しますと、「(3党の)
政策責任者会議を開き」と書いておりますので、(亀井氏の要請は)政策責任者会議の決定によるものという理解
でよろしゅうございましょうか。
亀井 いや、今もし私のご要請をお聞き届けいただきましても、これが外に今出ますと、大変な迷惑を相互にか
けられることになります。私が今、3党の政策責任者に、こういうことを(そごうに)ご要請しますということを
言いましたら、もう(世間に)バレちゃいます。外に出てしまう。それはできないです。
それをやっちゃいますと、漏れちゃいますから、(この要請のことは)いっさい言っていないんです。ウチの党
のほうにも言っていないんです。総理にも言ってないんですが、総理はすべてを私に任せるということを言ってい
ただいていますから。
そういう意味で、私が全権を持った形でお願いしていますので、そのあたりをそごうサイドでよしとされること
であれば、話の順序が逆になるんですけども、改めて私が党のほうに、また3党政策責任者に、そごうに対してこ
ういう要請をすることを諮はかりたいと思いますので。
山田 なるほど、そういうことでございますか。
「法的整理しかないのですね」
亀井氏は、電話の冒頭で「この問題について今日も3党で政策責任者会議をやった」と語ったが、途中で突然前
言を翻し、あくまで自分一人からの要請であると主張し始めた。当時の新聞は、「亀井氏は、与党3党の政策責任
者会議の了承を得た上で、山田氏に電話した」と報じたが、事実は違ったようだ。
亀井 順序を逆にしませんと、外に出ますと、これはそごうに大変なご迷惑をかけることになりますから。
山田 はい、取り付け騒ぎが出てくるんです。
亀井 ですから、私は新聞記者にも、「いま事情を聞いているだけで、どういうのがいいのか思案にくれてると
こだ」という言い方しかしておりません。事実上は私が全責任をもってお願いしているということでございますの
で。
山田 なるほど、よくわかりました。
亀井 ウチの幹事長(野中広務氏)も、そういうわけで私に任せるということになっておりますので、あと(公
保)2党との関係は、順序が逆になるわけですけども、私が責任をもってこれは対応いたしますので、そのように
ご理解いただければと思います。
山田 そうでございますか。そうしますと、われわれは債権放棄を前提とした計画を作っておったわけでござい
ますが、これがダメになりますと、もう法的整理しかないわけでございますね。
亀井 ですから、そのあとのことについては、会社更生法か、破産か、いろいろあると思うんですが、あるいは
自主再建か……。これにつきまして、私どもとしては、全力を挙げてできる限りのことは努力をさしていただきま
す。
これは当然のことでございますので、その結果どういう推移をたどるかまで、私は見通せる立場ではございませ
んけれども、どういう事態になられましても、我々と国民生活に対してたいへん影響のあることでもございます
し、そごう自体が今後いろんな意味できち
っとしていかれないかんわけですから、政府としても、また党として
も、全力を挙げてアレいたしますので。
そごうグループの従業員約1万人とその家族が路頭に迷うかというときに、「会社更生法か、破産か、いろいろ
あると思うんですが」などと曖昧なことを口にする亀井氏。この人は、政治家として国民の生活を考えたことがあ
るのだろうか。一方で、しきりに「アレする」を連発するが、具体的に何をするのかさっぱりわからない。
亀井 このことだけは信用していただきたいと思いますので、はい。
山田 はい、かしこまりました。よく興銀と相談いたしまして、改めてご返事をと。よろしゅうございましょう
か。
亀井 はい。(中略)よろしくお願いします。どうもすみません。
山田 失礼しました。
約9分に及ぶという1回目の電話は、ここで終わっている。この後、山田社長は興銀を訪ね、西村正雄頭取に亀
井氏からの要請を報告。山田社長はその場で亀井氏に電話して、要請を受け入れる旨を話すと、亀井氏は「明日の
午後2時にこちらから電話する」と約束したという。
山田社長は深夜12時過ぎに緊急取締役会を開き、民事再生法申請を正式に決定。翌12日早朝、東京地裁に申請
した。が、亀井氏からの電話は、午後2時を過ぎてもかかってこない。5時になり、しびれを切らして、山田社長
のほうから電話した。今度は、そのときの短いやりとりである。
山田 山田でございます。
亀井 どうもご苦労さま。失礼しました。
山田 先生、2時頃、お電話ずっとお待ちしとったんでございますが。
亀井 すいません。それがですね、私が昨日、そういう形でご要請いただいたということで、3党(からそごうに
自主的な法的整理を要請した)ということで今日、記者会見いたしますから。
山田 そうでございますか。
亀井 3党から要請いたしたということでアレいたしますから、そのようにアレしていただければと思いますが。
そごうが民事再生法を申請したとたん、亀井氏の態度は掌てのひらを返したように冷淡になった。前日の低姿勢と
うって変わって、「もう用は済んだ」といわんばかりだ。
しかも、前日は「自分一人の考えで要請した」と言いながら、1日経つと「3党の合意に基づいた要請というこ
とにしておいてくれ」と、何度も山田氏に“ウソの口裏合わせ”を頼んでいる。
亀井 (中略)昨日のアレでいいですよ。私が3党を代表して話をした、要請したということで結構でございま
す。
山田 3党を代表してということで……。
亀井 アレで結構でございます。手続きが逆転したみたいになりますから。
山田 与党3党を代表して、と。それでよろしゅうございますね。
亀井 はい。
山田 かしこまりました。
亀井 よろしくお願いします。ご苦労さまでした。
NEXT>>>
絶対あってはならない“介入”
この電話でのやりとりについて、高木勝・明治大学政経学部教授はこう語る。
「そごうの民事再生法申請は自主的なものだったと言われましたが、これを見ると、実は亀井氏に強力な政治的圧
力をかけられた結果だったというのが、一目瞭然です。これは、自由経済、資本主義の根幹を揺るがす大問題で、
絶対あってはならないことです。
法的整理は裁判所が決めることであって、自民党が関与できることではない。まして、いくら大物政治家とはい
え、一代議士の亀井氏に、介入する権利などありません。
興銀の無責任きわまりない融資がそごうの破綻を招き、その処理を、不当なやり方で亀井氏が強行したのです」
もちろん、そごうを破綻させた一番の原因が、水島元会長の放漫経営であることは間違いない。しかし、国民の
批判を水島氏に集中させておいて、自民党と亀井氏は私利私欲のためにそごうを“生け贄”にし、興銀はデタラメ
な融資の罪に頬かむりしたのも、また事実である。
自民党関係者が言う。
「実は、興銀の西村頭取の意向を受けて、安倍晋三官房副長官が、亀井氏を動かした。安倍氏は西村氏の甥ですか
らね。西村氏は興銀を救いたい、安倍氏は森政権の失政を隠したいと、利害が一致して、亀井氏にそごうへの“倒
産要請電話”をさせたんですよ」
そごう関係者によると、山田社長は亀井氏からの1回目の電話の後、西村氏に電話をして「すぐ会いたい」と申
し入れた。すると、超多忙な西村氏のスケジュールはそのとき空いており、「お待ちしております」という返事だ
った。
西村氏は、駆けつけた山田社長の話を聞き、即座に、
「それ(亀井氏の要請)はお受けしたほうがいいでしょう。亀井先生にその旨すぐ電話で返事をして、それから役
員会を開くべきでしょう」
と言ったという。
山田社長はその場で亀井氏に電話しようとしたが、番号を知らなかった。すると、西村氏が亀井氏の電話番号を
教えた。お人好しの山田社長も、後で「あれはタイミングがよすぎた」とぼやいたという。
興銀と自民党の“陰謀”は、それだけではない。自民党関係者が証言する。
「8月初め、西村氏が国会に参考人として招致されたとき、水島氏は体調不良を理由に欠席した。あれでまた非難
を浴びたわけですが、実はあのとき、水島氏は自民党サイドから、『国会においでにならなくて結構です』とハッ
キリ言われているんです」
その前後から、「興銀広報部周辺や和田氏に近いマスコミから、前にもまして水島氏を厳しく非難する情報が多
くリークされるようになった」(前出・経済部記者)という。
こうして水島氏を極悪人にしておいて、興銀は着々と“出来レース”を進めていった。その一つが、和田次期社
長との接触である。
水島氏の逆襲は成功するか
西村氏は、和田氏と会ってそごう入りを要請したのが、今年5月の連休明けだったと公には語っている。和田氏
も、「その後、悩んだ末引き受けた」と語っているが――。
「実は、西村氏と和田氏は、2月から接触していました。しかし、それは当分隠しておかねばならなかった。西村
氏は4月に『山田さんにそごうを再建していただく』と言明しており、水島氏にもそう言って、債権放棄を条件に
千葉そごうの株式を無償譲渡させた。それと同時に『倒産→和田次期社長』のシナリオを
進めていたとなれば、背
信ということになる。だから5月に会ったと言うしかないのです」(前出・そごう関係者)
こうして興銀による「そごう倒産」のシナリオが、早くから進んできたわけだが、実は、その動きに拍車をかけ
た衝撃的な出来事があった。第一勧銀による「みずほ脱退の申し入れ」である。みずほグループの関係者はこう語
る。
「5月に、一勧はみずほグループから離脱したいと言い出したんです。興銀は、みずほが分解したら、本当に潰れ
てしまう。だから、一勧を必死で引き留めようとしたのですが、その切り札として、そごうを出し、西武百貨店を
救済しようと申し出たんです。
西武は一勧がメインバンクですが、経営状態はやはり非常に厳しくて、一勧の悩みのタネ。興銀は、そごうと合
併させて西武を救い、一勧をみずほ内に引き留めようとしたのです。しかも西村氏は、離脱騒ぎが起こる前から、
この計画を考えていた節がある」
つまり、昨年まで西武の会長だった和田氏と、西村氏が早い時期から接触していたのも、単にそごうを再建する
ためではない。いざというときの「一勧引き留め策」、すなわち、みずほの空中分解を防ぐためだったのだ。
ただ、“救世主”和田氏にしても、「いったんは西武百貨店を黒字に転換させたものの、再び赤字に転落させた
のも和田さん。そんな人にそごうの再建ができるのか」(そごう社員)と疑問視する声も少なくない。
これらの件につき、一勧広報室は「当行がみずほグループからの離脱を申し出たことなどありません」とコメン
ト。興銀広報部も「西村が和田氏に社長就任を依頼したのは、あくまで5月の連休明けです。また、われわれ広報
の周辺から、水島氏の悪評がリークされたなどというのは、あり得ないことです」と語る。
さて、無償譲渡した株式の返還請求という挙に出た水島氏だが、この“逆襲”は成功するのだろうか。
毎日、「差し押さえを食ったから小遣いもない」と反省の色なく漏らしているそうだが、「経営者としてはダメ
だが法律家としては一流」といわれた人物だけに、勝算は十分と見ているようだ。
「水島さんは『債権放棄によってそごうを残すから、株を譲渡してくれ』と言われてそうしたのに、債権放棄でな
くて法的整理になってしまった。だから、『株を返せ』と裁判を起こせば、水島氏が間違いなく勝つはずです。興
銀は、ひたすら水島氏に頭を下げて、訴えを取り下げるよう頼むしかないでしょう」(経済評論家・財部誠一氏)
再建への道は遠そうなそごうと、生き残りのためのシナリオも頓挫しそうな興銀。最後に笑うのは、彼らを生け
贄にして甘い汁を吸った自民党政治家だけ、ということになりそうである。