投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 10 月 10 日 23:11:35:
ニューヨーク(CNNfn)
ヒトゲノム(人間の全遺伝情報)が解読されたことで、遺伝子情報を応用した新しい医薬品や治療方法の開発で利益を上げると期待されるバイオ企業や医薬品会社に関心を持つ投資家が増えている。こうした中、米国では、ゲノム関連企業のみを投資対象としたファンドが設定され、これまで好成績を上げている。しかし、リスクは高いとの指摘も聞かれる。
今年3月に設定された小型ミューチュアルファンド「ジェノミクスファンド・ドット・コム」は、総資産3130万ドルでスタート。ゲノム関連事業を主力とする企業のみに投資するのが特色だ。ファンドの最低購入単位は5000ドル。
ヒトゲノムの解読を受け、科学者らは、ゲノム情報解析後を見据えた「ポストゲノム」という応用分野に比重を移している。遺伝子情報から発病を予測する診療方法や、ガン、うつ病などの治療向けの新薬開発などが、その例だ。
一方、米国株式市場では、今春以降のインターネット関連株の低迷を受け、ゲノム関連企業に投資の矛先を移した投資家も多い。
バイオ企業23社に投資
ファンド創設者で運用も手掛けるスティーブン・ニュービー氏自身は、理系出身ではなく、メリーランド大学の経済学部卒。しかし、他の投資家と同様、99年にヒトゲノム解析に興味を持ち、ファンド設立を決めたという。「ゲノムを勉強すればするほど、ゲノムで利益を上げる企業を見極めるのがとても難しいと気づいた。そこでファンド設定を思いついた」と言う。
ジェノミクスファンド・ドット・コムは、ミレニアム・ファーマシューティカルズ(13.2%)、ヒューマン・ゲノム・サイエンセズ(12.7%)、メダレックス(12.5%)、セレラ・ジェノミクス(7.8%)などバイオや薬品関連の23企業の株式に投資している。
これまでの成績は好調
ゲノム関連株の値動きは激しいが、ジェノミクスファンドも例外ではない。3月の設定後1カ月間で、バイオ株急落を受け、33%も基準価格が下落した。しかし、6月にはセレラ・ジェノミクスと日米欧の国際共同チームが共同で解析結果を発表するとの観測から、バイオ関連株は上昇に転じ、ジェノミクスファンドの基準価格は、第2四半期には39%上昇した。同時期にナスダック総合指数が13.3%、S&P500種指数が2.7%下げているのに比べ、その成績の良さは際立っている。
さらに第3四半期には、14%近く上げている。店頭株式市場(ナスダック)のバイオテクノロジー関連企業200社から構成されるナスダック・バイオテクノロジー指数の同時期の上昇率は、7%にとどまっている。
アナリストはハイリスクを警告
ジェノミクスファンドの好調さにもかかわらず、このように専門化されたファンドへの投資には十分慎重になるべき、と警告するアナリストも多い。特にゲノムのように歴史の浅い産業の場合、投資家は同じ業種という理由だけで、個々の企業業績を吟味しないまま売買することも多い。このため、特定産業に投資先を限定した投信は、リスクが大きいという。
投信評価会社モーニングスターのアナリストでバイオ関連ファンドの分析を担当するエミリー・ホール氏は、ジェノミクスファンドは値動きが激しく、一般投資家には推奨できないという。また、このファンドは、投資実績が乏しいグループによって運営されている上、投資銘柄を選択する調査部も事実上ない状態、という。
これに対してニュービー氏は、「ジェノミクスファンドをポートフォリオの中心に据えろ、とは誰も言っていない。ゲノムはおそらく(米国)株式市場の中でも最も値動きの激しい分野だと思う。このトレンドはしばらく続くだろう」とし、リスクが高いことは認めた。
しかし、ニュービー氏は、ファンドが投資する企業の大半は今後、業界リーダーになると主張する。その代表格であるミレニアム・ファーマシューティカルズは、今のところ赤字で収入も少ない。ただ、同社はゲノム情報を利用した治療方法を開発するために、大手製薬会社との提携関係を強化しており、開発に成功し、新薬が市場に出回るようになれば、製薬会社から受け取るロイヤルティー(特許使用料)で大きな利益を得ることになるとニュービー氏は指摘する。