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北朝鮮「臨戦態勢」本気!
北朝鮮の韓国への潜水艇侵入・撃沈事件は、北朝鮮の好戦姿勢を改めて示し、北朝鮮の一連の恫喝(どうかつ)を裏付けた。潜水艇の目的は工作員の侵入か、戦争に備えた軍事施設の偵察か。日本(対馬)近海での作戦か。“第二次朝鮮戦争の危機”を叫び、臨戦態勢に入っている北朝鮮のもくろみと朝鮮半島情勢は…。
北朝鮮は、今月になって米日韓への非難の声を高めている。「第二の朝鮮戦争は避けることができない。朝鮮半島は現在、いつ戦争が起こるかという“一触即発”の状態」(7日の朝鮮中央放送)▽「攻撃対象には“日本”も含まれる。日本は警告が空言でないことを肝に銘ずるべき」(朝鮮人民軍総参謀部声明)▽「日朝関係は交戦関係に悪化」(12日付の労働新聞)▽「報復攻撃の準備は万端」(13日付の民主朝鮮)▽「ワシントン、ソウル、東京を火の海と化す」(11日の朝鮮中央通信)−と、エスカレート。
これら北朝鮮の脅しは、中国共産党機関紙・人民日報発行の国際情報誌により“本気”であることが裏付けられた。「(北)朝鮮が臨戦状態入り」との平壌発の特派員電を1面トップで伝えた同誌記事(11日付)は、具体的な北朝鮮軍部の情報も網羅。中国共産党系メディアの北朝鮮情報は確度が高く、ほぼ間違いない。
一連の反発や暴言は、10月にペリー前米国防長官が、北朝鮮の核施設疑惑を指摘したことで火がついた。その後、地下核施設が北朝鮮平安道の金倉里にあることが判明。米国は、カートマン朝鮮半島和平協議担当大使を平壌に派遣するなど対北接触を続けた。これまで北朝鮮の“なだめ役”だった米国だが、今回は議会を中心に対北強硬論が高まっている。
さらに、問題なのが韓国と日本。韓国は対北太陽(包容)政策をとる金大中大統領が先日、訪韓したペリー前国防長官に「北に制裁を科す段階ではない」とクギを刺した。米韓全くの逆姿勢。韓国政府内でも「懸案を一つ一つ解決するのは困難」と金大統領の政策を疑問視する声もある。日本は小渕首相が「日米韓三国の連携」を強調するのみで、具体性に欠けている。
この韓国の“対北融和政策”や日本のあいまいな姿勢、日米韓の足並みの乱れが「金正日にとっては敵の弱みに映っている」(ソウルの北朝鮮ウォッチャー)のだ。北朝鮮を勇気づける要因とも言える。現に北朝鮮は今回、金大中大統領の太陽政策の裏をかく形で潜水艇を侵入させている。
米朝協議は平行線のまま、先週いったん中断。「米国の食糧支援と引き換えに北朝鮮が核施設の査察に応じた」との怪情報もあるが、定かではない。今後は協議決裂もあり得、決裂すれば94年10月の米朝枠組み合意が崩れ、緊張事態が再現される。事態は深刻だ。韓国軍は総勢69万人。これに在韓米軍2万8000人が加わるが、北朝鮮の約115万人兵力にはかなわない。さらに115万人の南進やゲリラ戦に加え、ノドン、テポドン・ミサイル発射の危険性も大きい。
中国メディアは、北朝鮮は「大戦前夜の状況で、軍幹部は作戦指揮と戦争準備のために深く前線に入っている」と伝えている。現代コリアの佐藤勝巳氏も「年明け以降が極めて危険」と分析している。潜水艇侵入事件は、このような環境の中起こった。すでに工作員が侵入した可能性もあるが、今回発見された潜水艇は「氷山の一角」(北朝鮮からの亡命元工作員)であることは十分にあり得る。北朝鮮の工作員が有事に備え、予想以上に韓国に侵入済みであるということだ。同時に、これまで多くが韓国東海岸で発見された潜水艇が韓国海岸全域に出没していることを証明した。
しかも今回の潜水艇は対馬近くまで来ており、海上保安庁もその交戦を間近で確認している。北朝鮮の韓国への作戦には、日本も対象として加えられている危険性もある。今回の事件は、日本も含めた朝鮮半島の危機接近のプロローグかもしれない。