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クリスマス・プレゼントになるか?
日本版スペースシャトル、クリスマス島に実験場年内に正式調印へ
(980916H012411810)
日本版スペースシャトル、クリスマス島に実験場−−赤道直下のキリバス共和国
98.09.16 中部本紙朝刊 18頁 社会 写図有 (全566字)
宇宙開発事業団が日本版スペースシャトルの実験場として、赤道直下にあるキリバ
ス共和国のクリスマス島を使うことで同国政府とほぼ合意していることが15日明ら
かになった。事業団はクリスマス島に人工衛星の追跡局を設置しているが、海外に本
格的な実験場を設置するのは初めて。事業団は今年中に正式な契約を結びたいとして
いる。
事業団によると、クリスマス島のうち半島部分を、20年間無償で借りる予定。こ
の地域には英国が1950年代に核実験の機材運搬用に建設した2000メートル級
の滑走路が残っており、この滑走路周辺を実験場として整備する。これまでの交渉で
は、土地の使用料は無料だが、実験に必要な港湾、道路、電力などの整備は事業団側
が行い、契約期間は20年という案が浮上している。
事業団は日本版無人スペースシャトル「HOPE―X」を2003年度に打ち上げ
る計画を進めている。事業団はクリスマス島の実験用地をHOPE―Xの着陸実験な
どに使う予定で、3年前から同国政府と交渉を始め、環境調査などを行ってきた。
事業団によると、クリスマス島は、赤道直下にあり衛星打ち上げに適しているほか、
周囲に島がなく安全性が高いことなどのメリットがあるという。
◇内田勇夫・宇宙開発事業団理事長の話 交渉は最終的な詰めの段階で、相手側も
おおむね良いと言っている。今年中に決めたい。
毎日新聞社
http://ehime-np.co.jp/arc/1998/shasetu/np-shasetu-0917.html
愛媛新聞社説
1998年9月17日(木)
期待膨らむ21世紀の宇宙開発
世界で最も早く日の出を迎えるキリバス共和国。ハワイの約二千
五百キロ南方の赤道直下にあるクリスマス島が、日本の宇宙開発に
も新たな夜明けを約束しようとしている。
宇宙開発事業団が同島の一角を借り受け、「宇宙港」を建設する
計画が明らかになった。年内にもキリバス政府との間で使用協定が
調印される見通しだ。早期の実現を望みたい。
日本版スペースシャトルをはじめ次世代ロケットなどの研究開発
にうってつけの立地条件を備えているだけに、二十一世紀の宇宙開
発や宇宙ビジネスに期待が大きく膨らむ。
宇宙開発事業団は、国産の人工衛星とロケット開発など宇宙の平
和利用を目的として一九六九年に設立された科学技術庁の特殊法人
である。鹿児島県の種子島にロケット打ち上げ施設「種子島宇宙セ
ンター」を持っている。
だが、二十一世紀を見通すと、施設の問題点も少なくない。
まず、ロケットの打ち上げ期間が最大のネックだった。漁業へ影
響の少ない夏冬合わせて九十日間だったため、打ち上げ回数が制約
されてきた。昨年ようやく愛媛、高知、大分、宮崎、鹿児島の漁業
関係五県が期間延長に合意、年間最大では百九十日間まで拡大され
たばかりである。
これは、宇宙開発事業団が二〇〇〇年以降に外国の人工衛星打ち
上げを請け負い、宇宙ビジネスに参入する狙いからだ。六年間で二
十個以上の外国衛星の打ち上げを予定している。やがて打ち上げ頻
度がにわかに高まる。
当面は予約分を円滑にさばけたとしても、今後の受注にどれだけ
応じられるか疑問である。種子島を補完する施設が必要になったと
理解すべきだろう。
宇宙港を海外に求めた要因は、種子島の地理的な不利にある。
その第一点は、日本版スペースシャトルの無人宇宙往還機(HO
PE)を開発中だが、中国大陸から東シナ海上空を滑空して種子島
へ帰還するには飛行機や船舶の航行に支障をきたす懸念である。
二〇〇四年の完成を目指す国際宇宙ステーションの建設が今年十
一月から始まる。そこへ資材を運ぶには日本の宇宙往還機も不可欠
である。クリスマス島の宇宙港は宇宙往還機にとって格好の着陸地
となろう。
第二点は、種子島が赤道から離れていることだ。赤道直下のクリ
スマス島だと、打ち上げの際に地球の自転速力を満度に生かせる。
つまり、より重い積み荷を宇宙へ運べる。種子島に比べると能力は
二倍強にもアップする。効率がよく、低コストにつながり、宇宙ビ
ジネスには有利に働く。従って日本の宇宙ビジネスをになう次世代
ロケット「H2A」の発射施設を新設するメリットは大きい。
一方では、宇宙を清掃する視点も欠かせまい。
これまでに各国が打ち上げたロケットは四千を超える。数千トン
の人工物が宇宙へ運ばれた結果、地球周回軌道には十センチ以上の
物体だけでも八千六百個ほど確認されている。ミリ単位の微小物体
を含めると数千万個とも推定される。
超スピードで飛び交う宇宙ごみは、宇宙施設に致命傷を与えかね
ない負の遺産である。回収などの新たな対応を迫られている。日本
もビジネスにのみ目を向けることなく、宇宙環境保全にも責務を果
たさねばならない。
クリスマス島といえば、かつて英国
や米国が核実験場として使っ
た経緯がある。宇宙港の誕生は、過去の暗いイメージを明るい未来
色に塗り替えるに違いない。
Copyright: The Ehime Shimbun Co. Ltd., all rights reserved.
http://www.minaminippon.co.jp/syasetu/sya980916.htm
空に描く”非核”の夢/クリスマス島
クリスマス島は赤道直下の中部太平洋に浮かび、キリバス共和国に属する。英国のキャプテン・クックが1777年のクリスマスに発見
したのが島名の由来である。世界で真っ先に日の出を迎える。だが、この島には暗い歴史も刻まれている。30年以上も前に米英が相
次いで核実験をした。島はいまも後遺症に悩んでいる。
その島の南東部にある半島全体を宇宙開発事業団が「宇宙港」用地として20年間無償で借り受ける。年内にもキリバス政府と使用
協定を結ぶ段取りという。
事業団は当面、開発中の無人宇宙往還技術試験機(HOPE―X)や本番の無人宇宙往還機(HOPE)の着陸場として利用する。つ
まり、種子島宇宙センター(熊毛郡南種子町)から打ち上げ、ここに着陸させようというわけだ。将来は種子島宇宙センターの補完施設
としても利用する。
日本が宇宙開発で他国の領土を本格的に利用するのは初めてである。世界も注目しよう。なにより「核の島」だったこの島を、世界唯
一の被爆国である日本が純粋に平和目的で利用することに意義がある。五十余年前、日本はこの島で第二次世界大戦を戦い、島民
に多くの犠牲を強いた。その罪滅ぼしにもなる。
気をつけなければならないのは自然破壊である。宇宙港造りには港湾や道路などの大規模なインフラ整備が伴う。核の後遺症に悩
むこの島に、開発による新たな問題を持ち込んではならない。事業団は将来、着陸だけでなく、この島での打ち上げも検討している。赤
道直下で自転の遠心力が大きく、種子島の2倍の重量の打ち上げが可能という。無用の心配かもしれないが、そのために種子島が忘
れ去られないように願いたい。
http://www.nal.go.jp/www-j/pubcatns/nalnews/y97/m08/m086.html
宇宙往還技術試験機(HOPE−X)の研究開発プロジェクト
地図
http://www.fastnet.or.jp/~gaku/xisland/chris_1.htm
宇宙科学研究所
http://www.isas.ac.jp/docs/ISASnews/No.209/gowest.html