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◎☆日本海沿岸で低塩分異変
水産庁調査で判明
対馬海峡から秋田県沖の日本海沿岸で、水深15メートルまでの
表層海水の塩分濃度が大幅に低下する異常現象が広がっていること
が17日までの水産庁の調査で分かった。
東シナ海沿岸でも同じ現象が観測され、調査した同庁日本海区水
産研究所(新潟市)と西海区水産研究所(長崎市)は、今年夏の中
国・長江の大洪水で東シナ海に大量に流入した淡水が日本海にも流
れ込んだためと分析している。
1995年秋にも長江洪水の余波とみられる同様の現象が観測さ
れたが、日本海区水産研の黒田一紀海洋環境部長は「これほど大規
模に現れたのは過去30年近い観測史上初めてだ」とし、漁業への
影響を警戒している。
大洪水が原因とされる現象としては、8月中旬に鹿児島県・薩摩
半島西岸で中国などから大量のごみが漂着する騒ぎがあった。
海水調査は8月下旬から9月中旬にかけて実施され、低塩現象は
10月に入っても続いているという。
それによると、日本海沿岸のほぼ全域で、塩分濃度を表す単位P
SUが日本近海の平均的な値とされる33(海水1000グラム中
に塩分33グラム)を下回り、例年より平均して1ポイント前後低
下していた。隠岐諸島から対馬海峡にかけての数値が最も低く、韓
国・釜山沖では27PSUと、かつてない低い値を観測した。
東シナ海沿岸は、27を中心に全体的に低塩分化しているのが分
かった。長崎県・五島列島と済州島の間では26とこれまでの最低
値を示した。
塩分濃度が低下すると、魚のえさとなるプランクトンの減少のほ
か、漁場が移動したり、回遊魚のコース、時期がずれるなどの影響
が心配されるという。
3年前の低塩現象では1メートルもあるクラゲが大量発生して定
置網が目詰まりし、魚が網に入らない被害が続出。一方で、本来は
日本海に回遊していないカツオの大量漁獲が初めて記録されたほか、
熱帯性のキハダマグロが取れ、水産関係者を驚かせた。
海水の比重は塩分濃度が低いほど小さいため、低塩分水は表層に
滞留し、漂う傾向があるとされる。西海区水産研の木谷浩三海洋環
境部長は「低塩分水が表層から水深15メートルより下の中層域ま
で浸透し始めると、魚類の生態に影響が出てくる可能性もある」と
指摘している。 (了)
[共同10月19日] ( 1998-10-19-07:14 )