ーー松下幸之助
広い世間である。長い人生である。その世間、その人生には、困難なこと、難
儀なこと、苦しい事、辛い事、いろいろとある。程度の差こそあれ、誰でもある。
自分だけではない。そんな時どう考えるあか。どう処置するか、それによってそ
の人の幸、不幸、飛躍か後退かがきまるといえる。困った事だ。どうしよう、どう
しようもない、そう考え出せば、心が次第に狭くなりせっかくでる知恵もでなくな
る。今まで楽々と考えておったことでも、それがなかなか思いつかなくなってくる
のである。とどのつまりは、原因も責任も全て他に転かして、不満で心が暗くな
り、不平でわが身を傷つける。断じて行なえば、鬼神でもこれを避けるという。
困難を困難とせず、思いを新たに、決意を固く歩めば、困難がかえって飛躍の
土台石となるのである。要は考え方である。決意だある。困っても困らないこと
である。人間の心というものは、孫悟空の如意棒のように、まことに伸縮自在で
ある。その自在な心で、困難なときこそ、かえってみずからの夢を開拓するとい
う力強い道を歩みたい。
−−道はひらける PHP
(コメント)
自分を強めるのも、弱めるのも自分自身の心です。飛躍しようとする心は
如意棒のごとく無限大にその力を強めます。雲の上まで突き抜けるような
強靭な心を持ちましょう。
松下幸之助
松下電器産業創業者