直観
−−中村修二
私が何につけても<できる>と答えられたのには理由がある。それは、成功へ
と導く信条を、他人よりは強く持っているからだ。そして、徹底的にこれを実行し
たのだ。その一つが自分の勘を大切にしたことである。現在のようにコンピュー
ターが発達した時代になってしまうと、データや知識の蓄積ですでに人間はコン
ピューターに勝てなくなっている。それがわかっていながら、旧態然として、やれ
データだ、やれ文献だと目の色を変えているのはやはりおかしい。あれだけ莫
大なデータや知識がつまっているコンピューターが一体何を開発してくれたのだ
ろうか。何か独創的な製品をコンピューターが作ってくれたのか。全くの否であ
る。私は自分の直観に関しては頑固なまでにこだわった。端から見ればどう考
えても無茶なことだ。会社の上司も同僚も私が青色発光ダイオードの開発に乗
り出すと宣言した時には皆、驚きの声をあげたし、その材料として、窒花ガリウ
ムを選択した時には、文字通り関西風にいう<アホと違うか>という具合だった。
しかし、実はよくよく考えた結果<自分にはこれしかない>という<勘>が働
いたのである。そして、これを私は信じた。
−−考える力やり抜く力私の方法 三笠書房
(コメント)
物事を思考し判断をくだす時、私たちは無意識のうちに、心の内奥である潜
在意識からくる直観を使用しております。そしてそれは、表層意識であれや
これやと考えることを止めたときに、最も鮮明に現れます。一生懸命テスト
問題や仕事の悩みを解決しようとしても、全くなんともならなかった問題が、
あきらめて、一息ついているときに、素晴らしいアイデアが、不意にひらめく
ことは、誰もが経験していることでしょう。そして、その直観からくる判断は、
常に正確なものであり、逆に表層意識であれこれ考えて無理やり出した結論
には、多くのあやまちがあることに気づきます。そしてその表層意識で物事を
考えるのをやめる状態を自分の意志によって作り出すことを瞑想といいます。
中村修二
工学博士 カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授
20世紀中には無理と言われていた高輝度青色発光ダイオードの開発に成功
現在ノーベル賞に最も近い人物と評価されている