−−中村天風
世の中にはこれとは反対に何年も何年も同じ病で苦しんでいる人がいる。それ
はつきつめると、肉体を更生する再生力と言う力が、「心の態度=精神力」に、
著しく関係しているという重大な事実を正しく自覚していないからである。すなわ
ち潜在意識の中にある再生力が実在の邪魔、悪同化によって十分働かない結
果である。たとえば、人間の血液の中には、バクテリアを殺してしまうある要素
がある。この要素はバイキンが襲ってくると直ちにこれを取り囲み、特殊な液体
を注いで殺してしまうように自然に出来ている。ところが、その人の心が消極的
で、ひ弱く、決断力もなく、ぐずぐずしていて、引っ込み思案的なものになると、
その心持ちがすぐ潜在意識と同化して、潜在意識の再生力の発動を萎縮させ
てしまう。だから、事実の上からも考えても、「潜在意識はそのうえに映された
印象をそのままに作用するものである。」ということが、はっきりと分かる。そし
て、神経過敏の人の病の治りが遅い理由もこの点にある。
−−運命を拓く 講談社
中村天風
当時不治の病であった、結核に冒されて生死の境をさまよい救いを求めて
欧米を旅したが、病は治らず、絶望の果てに日本への帰国の途中、カイロ
で偶然出会ったヨガの達人カリアッパ聖者に連れられインドに渡り、ヒマラヤ
の奥地でヨガの極意を体得、当時不治の病であった肺結核を修行により
克服し、日本初のヨガの直伝者となる。帰国してからは、銀行頭取、会社
重役の地位にありながら、あるとき突然これらすべての財産を放棄し人々
を悩みから救い、苦しみから解き放つための教えを説き始めた。彼のすさ
まじいまでの体験に裏打ちされた理論は「天風哲学」として大成され、これ
を信奉し、教えを受けた人々は百万人を超えると言われている。その中には
東郷平八郎(日露戦争元帥)、原敬(総理大臣)、山本五十六、近年では、
松下幸之助(松下電器)、稲盛和夫(京セラ)、双葉山等が天風哲学に
多大なる影響をうけている。
(コメント)
世の中には様々な病気に苦しんでいる人がいますが、これらのほとんど
すべてが、心のゆがみからくるものであるというのが、ヨガの考え方です。
私たちが普段思考するあらゆるものが潜在意識に蓄積され、その人自身
の体の症状や、運命となって現象化していきます。つまり、運命とは決ま
っているものなのでなく自分自身が普段の思考により、創造している
ものなのです。