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ラムズフェルド国防長官は10月8日、欧州の新聞社とのインタビューに答えて、「イラク安定化グループ」の新設に関して何ら事前に相談を受けていなかったことを明らかにした。
ライス大統領補佐官は先週末、ニューヨーク・タイムズ紙に「イラク安定化グループ」の新設はチェイニー副大統領、パウエル国務長官、ラムズフェルド国防長官と共にこの8月に考え出したものであると語っていた。また、ホワイトハウスのマクレラン報道官も10月6日、記者団に対して、ラムズフェルド国防長官は新組織の創設に密接に関わっていると説明していた。ラムズフェルド国防長官が事前に知らされていなかったと記者会見で明らかにしたことを受けてマクレラン報道官は、連合国暫定当局(CPA)のブレマー文民行政官は知らされていたがラムズフェルド国防長官は相談されていなかったと述べ前言を翻している。但し、同報道官はラムズフェルド国防長官がインタビューで、今回の動きは、省庁間の政策の調整に当たるという本来の国家安全保障会議(NSC)の役割を単に再確認したに過ぎないと述べたことを捉えて、長官も答えているようにNSCの役割を明らかにしただけであるので驚きではなかったはずであると語っている。
他方、ラムズフェルド国防長官は10月7日、事前に知らされていなかった不快感を示すように、記者団に対して、まず次のように語っている。「自分はライス大統領補佐官から機密扱いのメモを受け取るまでイラク安定化グループについて知らなかったし事前にブリーフィングも受けていなかった」「但し、国防総省のスタッフは知らされていた」「ライス大統領補佐官がイラク問題を取り扱うことに驚きはしないが、メモが意思決定過程を変えるわけではない」(news.ft.com 2003.10.09)。
そしてラムズフェルド国防長官はライス大統領補佐官の名前を挙げて、「ライス大統領補佐官がニューヨーク・タイムズ紙に背景を説明した。機密メモから分かったのは、基本的にNSCの責任が何かということだが、それはこれまでもそうであったような同じ役割である」「ライス大統領補佐官の新制度はNSCの業務、即ち省庁間の調整という業務を再度明確化させたものに思える」(www.washingtonpost.com 2003.10.08)と述べ、新組織の位置づけをことさら低くしようとしているような言い方をしている。
記者団から数回に亘りどうして組織改編が必要であったのかと尋ねられたラムズフェルド国防長官は不機嫌そうに、「その質問はライス大統領補佐官に尋ねるべきであると思う」「私は知らないと答えた。それでは明確ではないと言うのですか?」「英語が分からないのですか?」「新組織造りの背後に自分はいなかったのだから」(同上)と答えている。
イラクの統治・復興を巡るブッシュ政権内の突然の不協和音について、米国のある政治評論家は、政権内部での内戦の勃発と表現している。ネオコン派の理論的支柱であるウイリアム・クリストファー/ウィークリー・スタンダード編集長は「CIAはホワイトハウスに正面切って反乱しているし、国務省と国防総省は全く一緒に仕事をしていない」(news.ft.com 2003.10.09)と述べ、親組織創設の理由の一つはブッシュ政権内の内戦と解説している。
但し、共和党筋は今回の新組織の創設について、ホワイトハウスが2004年の大統領選挙キャンペーンがはじまる前にイラク復興の速度が上がっていなければ、重大な結果をもたらすと認識しているためであると解説している。事実イラク問題はブッシュ政権にとって外交政策での負債となりつつあった。ブッシュ政権を支持するネオコン派の人々も、2003年8月以降のイラクの治安の悪化がホワイトハウス内に絶望的な思いを生んでいたと解説している。同時に、イラク戦争の遂行をフセイン前大統領の除去という狭義の目的でとらえていたラムズフェルド国防長官と、中東の民主化の序曲という広義の目的で考えていたブッシュ大統領及びライス大統領補佐官との対立があったと見る向きもある。
最後に政権内の見方とワシントン在住の欧州外交官の分析を紹介すれば次のようになる。
● 今回の動きで、国防総省に報告していたブレマー文民行政官が取り仕切ってきた予算等の決定事項にホワイトハウスが関与することになったので、国防総省は無力化された。
● ライス大統領補佐官が、国防総省、国務省、CIAの争いを断ち切れなかったので、自ら手綱を握ることとなった。
(エネルギー・環境室長/主任研究員 畑中美樹<はたなか・よしき>)
[2003年10月9日更新]
http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei031009.htm