
※2025年4月15日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年4月15日 日刊ゲンダイ2面
赤沢亮正経済再生相にまるで緊張感なし(C)日刊ゲンダイ
これまでの失政、裏金、金権腐敗、献金しがみつき、庶民苛め、経済無策を棚に上げ、バラマキ給付、減税なんて、ちゃんちゃらおかしい税金私物化。米国も終わりだが、自公政権にも有権者は見切りをつけている。
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いわゆる「トランプ関税」をめぐり、衆院予算委員会で行われた14日の集中審議は案の定、見るべきものがなかった。無軌道なトランプ米大統領を相手に手の打ちようがないのは、与野党ともに織り込み済み。交渉方針を問われた石破首相は、「急いては事を仕損じるということ。同盟国ならではの関係を新たに築くことが重要だ。これ以上ないほどの精緻な分析をして臨みたい」と型通りの答弁。石破から交渉担当を任され、16日から訪米する最側近の赤沢経済再生相は「わが国の国益にとって何が最も効果的かを考え抜いて、最優先かつ全力で取り組んでまいりたい」と答えた。
この国が戦後、米国に対して国益を追求できたことがあったか。答えは明白だ。読売新聞(14日付朝刊)のインタビューで、赤沢は〈日米間の貿易投資が促進される「ウィンウィン」の解決策を見いだしたい〉とも意気込んでいたが、「ウィンウィン」を実現できたら偉業と言っていい。米国が発動した「相互関税」の猶予期間は残り80日あまり。下馬評を覆す朗報が待ち遠しい。
集中審議では自公与党内で持ち切りの現金給付についても質問が飛んだ。通常国会が閉じれば、選挙シーズンに突入。与党にとって東京都議選、参院選での惨敗回避は最重要タスクだ。物価高と実質賃金のマイナスが3年超も続く中、「トランプ関税」がモロに課されれば日本経済はおだぶつ必至。それで、1人3万〜5万円の現金給付のほか、逆進性の高い消費税減税を求める声が与党内で高まっているのだ。石破は「カギカッコをつけますが『選挙目当てのバラマキ』というようなことを、政府として考えているものではございません」と退けはしたものの、「現時点では考えていない」と繰り返して全否定はしなかった。「国難」に乗じてデタラメをやるのは、自民の常套手段だ。
衆参ダブル選を打てば大惨敗
しかし、今さら多少のカネを国民にバラまいたところで、自公は選挙で勝ち目ナシ。昨秋の衆院選に続き、今夏の参院選でも過半数割れするとの予想もある。〈「衆参W選挙」議席予測〉と題した「週刊ポスト」(4月25日号)のリポートは衝撃的だ。参院で自公は現有141議席。石破は「与党として参院全体で過半数(125議席)が最低ラインだ」としている。非改選が75議席あるため、勝敗ラインは「与党で50議席」。決して高くないのだが、ポストはそれを下回るとし、非改選を合わせて121議席前後まで減らすと予測している。バラマキ大合唱となるわけである。
ポストで「自民34議席」「公明11議席」と数字をはじいた政治評論家の野上忠興氏はこう指摘する。
「半世紀ほど政界をウオッチしていますが、暮らしに密着した批判がこれほど強烈に政治へ向けられた事例はちょっと思いつかない。物価上昇は終わりが見えず、庶民はコメや野菜をはじめとする食品の全般的な値上げを日々痛感している。自民党は衆院選で有権者が下した審判に懲りず、世論をナメています。遺漏なきよう国民生活に目を配るのが政治の役割。ですが、現実はそうなっていないし、石破首相は党内野党だった頃とは打って変わり、国民の声にちっとも耳を傾けない。有権者に見放されて当然です」
パンもサーカスもなければ、国民の怒りはマグマのようにたまる。地殻変動が近づいているのか。
ポストはさらに踏み込み、野党による会期末の内閣不信任決議案提出を封じ込めるため、石破が衆院解散に打って出ると想定。自民党には過去2回の衆参ダブル選で大勝した成功体験もあるためだ。その場合、野上氏は現有議席から大幅に減らすと予測。石破は退陣を余儀なくされ、永田町の景色は一変する。
「今、減税しないのはアホや」と言わんばかり
どんどん出張る「影の総理」/(C)日刊ゲンダイ
こういう場面で「待ってました」とばかりに動くのが、自民の総裁選決選投票で石破に逆転された高市前経済安保相だ。「陰の総理」と呼ばれる森山幹事長が英国で2022年に起きた「トラス・ショック」を引き合いに、「財源の裏付けのない減税政策は国際的な信任を失う」と減税論を抑え込もうとしているのを揶揄。14日、X(旧ツイッター)にこんな投稿をしていた。
〈同日、私は兵庫県で、正反対の話をしていました。「減税」や「賢い政府支出」の必要性です〉
〈財政拡大は、景気を押し上げ、むしろ税収は増収になるとのスタンスからの話です。財政状況を、債務だけのグロスで見るか、資産を含めたネット債務で見るか、幹事長と私の考え方の違いだとは思いますが。トラス・ショック当時のイギリスは、ネットの資金需要が大き過ぎ、国際経常収支は赤字でした。日本の国際経常収支は黒字です。2月10日に財務省が発表した国際収支統計(速報)を見ると、2024年は29兆2615億円の黒字で、過去最大でした。今の日本でトラス・ショックは起きません〉
総裁選では金融正常化に向かう日銀に対し、「金利を今、上げるのはアホやと思う」と牽制していた。石破と森山に「今、減税しないのはアホや」と言ったも同然だ。
「備蓄米放出もそうでしたが、石破政権はやることなすこと後手後手。国民生活を第一に考えれば、消費税を時限的に引き下げるか、食品関連をゼロにするべきです。そうすれば、局面はガラッと変わる可能性がある。ただ、選挙目前の打ち出しは票目当てなのがミエミエ。さらに国民を幻滅させかねない」(野上忠興氏=前出)
「国費も国民負担」の正論
もっとも、石破が何らか手を打ったとしても、自民党政権のこれまでの失政をチャラにはできない。少子高齢化を看過して国力の源泉である人口減を放置。庶民を冷遇して富裕層や大企業を厚遇し、弱肉強食の新自由主義を浸透させる一方で、不透明な政治資金を悪用して裏金づくり、金権腐敗にどっぷり漬かってきた。利益誘導と癒着の温床である企業・団体献金に全力でしがみついている。経済無策を棚に上げ、バラマキ給付だとか減税なんて、ちゃんちゃらおかしい税金私物化だ。
社会保障制度改革と消費税をめぐり、集中審議で「国費を投入して国民負担を下げなければならない。内需拡大と言うのであれば、消費税を廃止するしかない」と求めたれいわ新選組の大石晃子共同代表に対し、石破は「国費も国民の負担であることを忘れてはならず、降ってくるものでも、湧いてくるものでもない」と正論で応戦していた。2カ月後も同じセリフを吐けるのだろうか。
トランプ復活を容認した米国は、トンデモ政治の再来でトリプル安に陥り、インフレと景気後退が同時に進むスタグフレーション懸念が高まっている。そうなれば米国も終わりだが、自公政権にも有権者は見切りをつけている。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「自民党のレベルが下がり過ぎ、支持者から見ても絶望的な状況です。経済対策を裏付ける補正予算案の編成は政府ではなく、総理総裁を支える立場の森山幹事長が明言している。黒子に徹すべき人物がどんどん表に出てきて、石破首相はお飾りに過ぎないことが透けて見えています。かといって、衆院で過半数を占める野党がまとまって内閣不信任決議案を出す気配も見えない。否決が決定的な時にしか提出しないのが、最近の主要野党の作法と化していますから。有権者はますます投票所から足が遠のくのではないか」
石破降ろしも沙汰やみ、総すくみ。イザとなると有権者の受け皿が小さくなるのはなぜか。民度ゆえなのか。
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