
※2025年3月25日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年3月25日 日刊ゲンダイ2面
万博議連には自公維立国の議員が参加(C)日刊ゲンダイ
痺れるような内閣支持率の下落に、選挙を控えた自民党議員は狂わんばかりだろう。商品券疑惑は党全体の慣習だったことも判明し、石破も降ろせないガンジガラメ。「楽しい万博」も不発に終わればいよいよ、瓦解へ一直線。
◇ ◇ ◇
2000年以降で最もマシな総理大臣と期待されただけに、石破首相には心底ガックリだ。そんな世論の声がこのところの内閣支持率にハッキリと表れている。政権維持の「危険水域」とされる2割台突入が続々だ。衆院1期生に商品券を10万円分ずつ配布した問題のダメージは計り知れない。高額療養費制度の改悪凍結に至るまでのドタバタ、富裕層優遇と紙一重の高校授業料無償化に対するモヤモヤも影響しているだろう。
共同通信の世論調査(22、23日実施)によると、前月と比べた支持率は12ポイント減の27.6%に急落。不支持率は16ポイント増の57.8%に急騰した。ANNの調査(22、23日実施)も厳しい数字が並ぶ。支持は8.3ポイント減の29.2%に落ち込んだのに対し、不支持は11.1ポイント増の52.2%に拡大した。1週間前に実施された朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の調査も似たり寄ったりだった。
政府寄りとされる産経新聞の世論調査でも石破内閣の支持率が昨年10月の政権発足以降で最低となった。
同紙とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査(22、23日実施)によると、内閣支持率は2月の前回調査から13.9ポイントの大幅減で30.4%。一方、不支持率は同12.9ポイント増の63.0%で、政権発足以来、初めて6割を超えた。
石破政権発足からわずか半年足らずで、痺れるような支持率下落。夏の参院選で改選を控えた自民党議員は気も狂わんばかりだろう。有権者から白眼視されている裏金議員はなおさらだ。前哨戦に位置付けられる東京都議選を戦う裏金都議もそう。自業自得の阿鼻叫喚である。
裏金事件より悪質な商品券配布
だが、旧安倍派の連中が仕掛けた「石破降ろし」の動きはピタリとやんだ。改選を迎える裏金議員の西田昌司参院議員が「今の体制では全く戦えない。総裁選を実施し、新たなリーダーを選び直さないといけない」と気炎を上げたものだが、何やらおとなしい。24日は自身のユーチューブチャンネルに〈商品券ではなく高市早苗先生から「グルテンフリーのうどん」をいただきました。優しい心遣いに感謝いたします〉と題した動画を投稿したものの、内容はどうってことない。うどんの実食を披露し、「1000円の商品券10万円分っていうのは、要するに分厚いんですよね。100万円分くらいの厚さがあるんでしょうね。だから、渡した方に『ほれ、あげたよ』と、大きな金額を出したという効果があるんですけれども、あんまりそういうことはやるべきではないですよね」などとクサしていた。勢いを失ったのがかえって浮き彫りだ。
法大大学院教授の白鳥浩氏(現代政治分析)は「西田議員が狼煙を上げた翌日に商品券問題が報じられ、間を置かずに首相最側近の赤沢経済再生相の政治団体をめぐる偽装献金疑惑も持ち上がった。地元企業の幹部複数からの個人献金は事実上の企業献金で、不透明な資金処理をしている疑いです。これほど短期間に政権を揺るがすスキャンダルが続出するのは珍しい」と指摘。こう続ける。
「にもかかわらず、『石破降ろし』の輪が広がりを欠いたのは、商品券に関してあらかたの自民党議員がスネ傷であることが露見したから。それに、組織的な動きは裏金づくりの温床だった派閥復活の印象を与えかねません。石破首相が商品券問題を収束できずに退陣すれば、新総裁は惨敗濃厚な都議選や参院選に臨む羽目になる。石破首相では勝てないけれど、今は替えられないというわけです。もっとも、商品券問題は第二の裏金事件と言っていいほど悪質で、はるかに筋が悪い可能性もある。石破首相は懇談会を含む関連費用をポケットマネーで捻出したと釈明していますが、血税が原資の官房機密費(内閣官房報償費)を回した疑いは拭えません。派閥などのパーティー券購入は企業・団体献金の隠れみのではあるものの、出どころは税金ではない。安易な幕引きは許されません」
「石破続投で勝てる」進まない野党連携
「反石破」急先鋒の西田昌司議員も尻すぼみ(C)日刊ゲンダイ
極めて換金性の高い商品券バラマキは自民党内で慣習化し、伝統文化であったことは疑いようがない。憲政史上最長政権を誇った安倍元首相、長期政権狙いで愛嬌を振りまいた岸田前首相による配布も判明している。血税を流用して仲間づくりに励んでいたとすれば、いよいよ解党一択だ。存亡の機に我こそはと手を挙げる猛者は見当たらない。石破を引きずり降ろせないガンジガラメに陥るわけである。
かといって、主要野党に倒閣の気概は見られない。口先だけ。大同団結すれば政権交代を果たせるのに、党利党略最優先である。私利私欲も垣間見える。
「野党は石破首相や岸田前首相の政治倫理審査会への出席を求めていますが、実現しても全容解明は期待薄。矛先を麻生元首相にも向け、バッジを外した小泉元首相や森元首相の参考人招致をチラつかせることもできる。野党からすれば、商品券問題は叩き続けられるテーマです。石破首相が続投する限り、参院選も野党に勝機がある。そうそろばんをはじいているがゆえに、野党連携は進まない。第1党の立憲民主党は包括する力を欠くし、政党支持率で第1党に躍り出た国民民主党は地方選で勝ちまくってイケイケ。日本維新の会は、大阪・関西万博(4月13日〜10月13日)の手当欲しさで自民党にベッタリ。主要野党の動きは国民感覚からかけ離れています」(白鳥浩氏=前出)
石破を眺めて与野党が奇妙な均衡
永田町は石破を眺めて総すくみ。与野党が奇妙な均衡を保っている。自公与党は25年度予算案の年度内成立を期すため所属議員に禁足をかけ、土日をいとわず国会を回す態勢だ。自然成立に至れば、療養費制度の凍結を盛り込んだ再修正案が予算に反映されない。立憲は要求した手前、日程闘争に限界があり、採決に応じざるを得ない。かくして参院で再修正案を可決して衆院に回付し、31日に成立する見通し。さながらプロレス国会だ。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
「野党の体たらくで石破政権が通常国会を乗り切ったとしても、都議選も参院選も相当厳しい。参院で与党過半数を維持するには50議席を確保する必要がありますが、このままでは割り込む可能性大。裏金議員が10万円の商品券に目くじらを立てたところで説得力はないし、共感が得られるわけがない。与党であり続けることと引き換えに石破首相を担ぎ出した以上、これを機に有権者に説明のつかない悪弊はすべて正し、膿を出し切るべきでしょう。金権腐敗の根っこである企業・団体献金のあり方について、与野党は今月中に『結論』を得ることで合意している。残り1週間。自民党はグズグズ言わず、カネの流れの可視化を進める野党案に寄せなければお先真っ暗。いよいよ、有権者に見放されますよ」
報道各社の世論調査で7割が「行きたいと思わない」と回答する万博の開催は、19日後に迫っている。いつの間にやら公式キャラクター「ミャクミャク」にぞっこんの石破は、超党派の「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を成功させる国会議員連盟」が開いた24日の総会に出席。またしても70年万博の思い出を語り、「大阪がやればいいという話ではなく、政府には開催国としての責任がある。皆さまの力を借りて大成功させ、新たな日本の希望を切り開きたい」と力んでいた。「楽しい日本」の「楽しい万博」も不発に終われば、自民は瓦解へ一直線。石破は来月5日のリハーサル「テストラン」を視察し、12日の開会式にも出席予定だが、ミャクミャクと並んで閉会の日を迎えられるかどうか。
http://www.asyura2.com/24/senkyo296/msg/835.html