
※2025年3月22日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
「つかみ金」で仲間に小遣い? 今後の焦点は官房機密費の全容解明だ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/369420
2025/03/22 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
詭弁の王様(C)日刊ゲンダイ
安倍元首相は息を吐くように嘘をついたが、石破首相も怪しいものだ。「ポケットマネー」「政治活動ではない」「過去の事例は知らない」など、国民は誰も信じちゃいない。政策活動費と官房機密費で、金権政治文化を謳歌してきた自民党。そこにメスをいれなきゃ嘘だ。
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石破首相の商品券配布問題の発覚から1週間余り。本人の説明は聞くに堪えない詭弁だらけ。安倍元首相は息を吐くように嘘をついたが、石破も相当に怪しいものだ。
石破事務所の秘書が、議員会館内の自民の衆院1期生の事務所を訪れ、茶封筒に入った10万円分の商品券を配り回ったのは今月3日の日中のこと。当日は夕方から石破が1期生15人を公邸に招いて会食。林官房長官と2人の官房副長官も同席した。商品券はその「土産代わり」で、石破は「家族へのねぎらいなどの観点からポケットマネーで用意した」と繰り返す。
政治資金規正法は〈何人も、公職の候補者の政治活動に関して寄付をしてはならない〉(21条の2)と規定。政治家個人への金銭等の寄付を禁じている。所管の総務省は、商品券も金銭等に含まれると説明する。
焦点となるのは公邸での会食が政治活動にあたるか否か。石破は単なる会食で「政治活動は一切行っていない」と強弁するが、すでに複数のメディアが会食中の様子を生々しく報じている。
石破は政治の師と仰ぐ田中角栄元首相の「歩いた分、握った手の数しか票は出ない」との言葉を引き、新人議員らに「選挙を好きになって」と助言。部会の大事さを説き、政策力を磨くようアドバイスを送った。終わり際には酔いが回った新人議員の一部から「私たちは石破チルドレンです」「全員、石破派だ」との声が上がったという。
石破は人望のなさから、党内基盤が極めて弱い。外形的には「仲間づくり」のため、新人議員に飲ませ食わせ、10万円もの「小遣い」を握らせたようにしか見えない。
あの舛添都知事ですら「オレよりケチ」の評
石破は一切、私的な関係にはない新人議員をわざわざ公邸に集め、政治的な“訓示”をたれたわけで、一堂に会した15人も首相の誘いを無碍にもできず、わざわざ日程を調整したはず。それも政界を生き抜く助言や、今後の付き合いなど政治的な見返りを期待してのこと。どう考えても立派な「政治活動」の一環で、法的なやましさを感じたからこそ、受け取った15人全員が商品券を返却したのではないのか。
それでも、石破は「『選挙で頑張ろうね』ということ。それも政治活動だと言われてしまうと、もう天気の話かプロ野球の話しかできなくなっちゃう」と珍妙な屁理屈をこねくり回し続ける。まるで詭弁の王様。国民は誰も信じちゃいない。
石破と同じ鳥取・島根選出の自民党参院議員がかばうように「歴代の首相の慣例」と口にして即「撤回」させられたが、岸田前首相も在任中に10万円分の商品券を配布していたことが判明。21日は、自民党の大岡敏孝・衆院内閣委員長が2012年の初当選後、当時の安倍首相から「10万円ぐらい」の金券を受け取っていたと明かした。首相公邸で開かれた1期生との会食後に渡されたという。
同僚議員との会食の際、土産代わりに高額の商品券を渡す「作法」が、歴代自民党政権下で引き継がれてきたのか。そんな「悪しき伝統」への疑念は強まるばかりだが、石破は「慣行だったのか知る立場にない」と口をつぐむ。
そもそも、1人10万円もの土産代が国民の感覚から大きくズレている。当日の食事代は1人1万5000円。商品券代と合わせ、総額は180万円近い。これだけの金額をポンと気前よく、石破が自腹を切ったと言い張るのも大いに疑問だ。
なぜなら石破は政界きってのドケチで「他人にメシを食わせない人」として知られる。セコすぎる政治資金問題が炸裂し、都知事の座を追われた舛添要一氏をして「オレよりケチだよ、アイツの方が」と言わしめたほど。
石破自身、国会で「(自分は)『ケチだ』と定評になっていて、忸怩たる思いはあった」と胸の内を打ち明けていた。
共産党が過去に暴いた機密費資料に「商品券」
2002年にデタラメの一端を暴露(C)共同通信社
ドケチ伝説を裏付けるように、石破の資金管理団体「石破茂政経懇話会」の政治資金収支報告書を調べると、公表中の23年までの3年分のうち、飲食代を含む「会合費」の計上額は21年に約74万円、22年に約248万円、23年は約155万円。1回あたり最大の支出は、22年4月15日の33万430円だった。
庶民感覚ではこれでも破格だが、高級店での会食に慣れ切った「自民党議員の常識」ではケチの部類に入るのだろう。たった1回の会食で、自身の資金管理団体の1年分の「会合費」を超える支出を私費で賄うとは、ドケチ首相の言い分はにわかに信じがたい。
「ポケットマネー」は本当なのか。石破は明確に否定するものの、領収書不要で使途も永遠に明らかにされない内閣官房報償費(機密費)の使用を疑う方が自然だろう。実は、機密費のベールに包まれてきた使い道の一端が、過去にあぶり出されたことがある。
時は02年4月12日。共産党の志位委員長(当時)が会見し、機密費の実態を示す内閣官房の内部文書を入手したとして公表した(「しんぶん赤旗」日曜版最新号でも詳報)。文書は、故・加藤紘一氏が宮沢喜一内閣で官房長官を務めていた1991年11月〜92年12月に作成された会計記録の一部だ。コクヨのB5判「金銭出納帳」に手書きで記された月ごとの金銭の出納簿と、それを「内閣」と印刷された用箋に「国会対策費」「パーティー」「香典」など項目ごとにリスト化したもので、支出先には主に自民党国会議員の実名がビッシリ。
記録された支出総額は1億4386万円。うち国会対策費の名目が計3574万円と最も多く、中には〈商品券〉として312万2575円(92年2月27日)なる記載がシッカリと出てくる。
また、自民党の〈総務会メンバー39人(背広)〉として1170万円(91年12月17日)のほか、議員外遊の際の餞別や政治資金パーティー券の購入、ゴルフプレー代、お花代、高級背広仕立券、靴券など、およそ「国家機密」とは無縁のデタラメな使途のオンパレード。実に47足分、計470万円の靴券を1人でせしめた猛者までいた。
洗いざらいブチまけるのが唯一のレガシーづくり
「機密費は長年、本来の趣旨を逸脱した使い道が横行し、自民党議員の懐を潤すために使われてきたのが実態ではないか」と指摘するのは、過去に機密費の開示訴訟(一部勝訴)の原告となった神戸学院大教授の上脇博之氏だ。こう続ける。
「事件化した派閥パーティーの裏金だけでなく、党本部ではようやく廃止される『政策活動費』という合法的な使途不明金、そして内閣では機密費と、歴代自民党政権は何層にも及ぶ領収書不要の『つかみ金』で、金権政治文化を謳歌してきたと言えます。とりわけ、年間12億円に上る機密費の原資はすべて税金です。共産党が公開した使途は年間の機密費の1割程度にすぎず、宮沢内閣からの30年以上にわたり、隠蔽されてきた税金の不適切な使途の総額は、壮大な規模に達しかねません」
デタラメな機密費流用を歴代自民党政権が継承してきたとすれば、ドケチ首相の金銭感覚がマヒするのも当然である。
「特に野党転落後に返り咲いた安倍政権の発足以降は『モリカケ桜』など政治の私物化は目に余り、二度と権力を手放すまいと、機密費の選挙などへの流用が加速した疑いすらある。仮に商品券配布に機密費を流用したとしても、あくまで氷山の一角。機密費の全容解明はもちろん、せめて10年後、20年後と一定期間が過ぎてから使途を公表しなければ、政権の私的流用に歯止めはかかりません」(上脇博之氏=前出)
政治評論家の本澤二郎氏は「もう後がないなら、いっそ石破首相は機密費の実態に自らメスを入れ、洗いざらいブチまけたらどうか。後世にレガシーを残すなら、その道しかない」と言った。それができなければ、石破は衆院多数の野党に潔く政権の座を明け渡すべきだ。
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