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※2025年2月25日 日刊ゲンダイ
理念なぞ、何もない数合わせの密室談合(C)日刊ゲンダイ
まあ、維新の卑しさと茶番国会は先刻承知だったが、あまりに露骨な理念不在の裏取引。ゆ党2党は手柄欲しさを逆手に取られ、不祥事維新は予算をこれ幸いに目くらまし。
自民はうまくやったつもりだろうが、有権者はふざけた“熟議”に怒り心頭。
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こんな理念不在の裏取引のどこが「熟議」だというのか。
少数与党で自分たちだけでは法案を通せない石破政権は口では「熟議の国会」とか言うのだが、やっているのは、相変わらずの密室談合政治。年度内の成立が危ぶまれていた2025年度予算案は、日本維新の会を取り込んで年度内成立にこぎつけそうだ。
衆院は今週、予算案の採決をめぐって緊迫するはずだった。年度内に予算案が自然成立するためには、3月2日までに衆院で可決して参院に送らなければならない。自民、公明両党だけでは衆院を通過させられないため、与党側は国民民主党や日本維新の会と個別に「3党協議」を続けてきたが、交渉は難航していた。
そこへ裏金問題も影を落とす。予算委で正式に決まった旧安倍派の会計責任者の参考人招致を拒否したうえ、与野党で合意した国会外での参考人聴取も前日の19日に自民側がドタキャン。あまりにフザケた対応に野党側は態度を硬化させた。衆院予算委員会は今のところ25日の中央公聴会、26日に首相と関係閣僚が出席する集中審議までは決まっているが、その後の日程は未定だ。委員会採決の前提として、立憲民主党などの野党は参考人聴取を条件にしている。
石破政権に打開策はなく、年度内の予算成立は難しいと思われたのだが、21日になって状況は一転。維新は公約の「教育無償化」と「社会保険料の引き下げ」が盛り込まれることになったとして、新年度予算案への賛成で与党と大筋合意したのだ。
維新は25日にも緊急役員会と両院議員総会を開催し、与党との協議で妥結した予算案修正について諮るという。党内の了承を得られれば、自公維新3党で正式に合意し、新年度予算案の年度内成立が確実になる。
予算賛成は国民に対する裏切り
「予算案に賛成するということは、政府与党の政策全般に賛成するのと同じことです。維新が教育無償化という一部分だけをつまみ食いして予算案全体に賛成するのはおかしいし、昨年の衆院選で自公を過半数割れに追い込んだ国民に対する裏切り以外の何物でもない。有権者は、こんな茶番国会を望んで野党に票を託したわけではありません。維新という政党の卑しさは兵庫県議会の問題でも明らかですが、自分たちの手柄欲しさに与党にスリ寄り、談合したわけで、とことん薄汚れた集団だということがハッキリしました」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
兵庫県の斎藤知事らの疑惑に関する百条委員会の音声データや文書を維新所属の兵庫県議3人が政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に渡していた問題は、とても看過できるものではない。秘密会の音声データを流出させ、兵庫県知事選を通じて真偽不明の情報が拡散したことが知事選の結果に影響を与えたといわれる。その過程で誹謗中傷が殺到した元県議は自死してもいる。
コンプライアンス違反などという言葉では片づけられないほどの重大スキャンダルなのだが、維新代表の吉村大阪府知事は県議らの行為について、「思いはわかるけどルール違反」などと生ぬるいことを言っていた。不祥事連発の維新はガバナンスも何もあったものじゃないという証左だが、そういう政党だからこそ、国政では自民にスリ寄る「ゆ党」という立場を恥とも思わず、予算案への賛成をまるで手柄のように喜々としていられるのだろう。
維新案は国民民主よりコスパが良かっただけ
大きな顔で党利党略(C)日刊ゲンダイ
与党は当初、24年度補正予算で賛成に回った国民民主の方がくみしやすいと考えていたはずだ。とりわけ、大阪を中心に維新と対立関係にある公明は国民民主に肩入れしていた。ところが、「103万円の壁」の178万円への引き上げを強硬に主張する国民民主とは落としどころで折り合えず、予算案の年度内成立は暗礁に乗り上げつつあった。維新はそこに助け舟を出した格好だ。
ハシゴを外された国民民主は、「こんな内容で予算案に賛成していいのか」などと維新を批判しているが、自分たちのことを棚に上げてよく言う。「ゆ党」の2党が手柄欲しさに、自民への恩着せ競争をしていたに過ぎず、そこを逆手に取られただけではないのか。
「野党が協力すれば自民党を追い込めるのに、それぞれバラバラに自党の利益を主張して個別に与党と交渉するからこういうことになる。我先にと自民党の補完勢力になりたがっているようにさえ見えておぞましい。予算案の成立が確実になれば、自民は野党の言うことになんて聞く耳を持ちませんよ。裏金問題の参考人聴取はウヤムヤに終わり、企業献金の廃止も突っぱねるでしょう。せっかく国民が自民党政治に『NO』を突きつけても、これでは何も変わらない。それも、決して自民がうまくやったわけではなく、野党が党利党略に走っていがみ合い、国民全体のことを考えていないからです。それで自民党を蝕む『政治とカネ』の問題が置き去りにされてしまうとしたら、国民は到底納得できません」(金子勝氏=前出)
最大野党の立憲民主も野田代表が早々に「予算案を人質にした日程闘争はしない」と公言。自民党とすれば、「ゆ党」の国民民主か維新、どちらかを抱き込めばいいのだから、ずいぶんラクになった。
今さら「戦闘モード」は遅い
24日都内で党大会を開いた立憲民主の野田は「戦闘モードに入りますよ、ここは。国会を動かすのは政党支持率ではありません。議席の数です」とか言っていたが、今ごろ戦闘モードでどうする。予算案成立が確実になった後では遅すぎる。
だいたい、自民が国民民主ではなく維新を選んだのも単にコスパの問題だ。国民民主が主張する「103万円の壁」の178万円までの引き上げには7兆〜8兆円の経費がかかるが、維新の「教育無償化」は約6000億円で済む。来年4月から私立高校を対象に加算されている支援金の上限額を、所得制限を撤廃して45万7000円に引き上げるというが、必要経費と目先の数合わせだけの話で、この国をどうするかという理念はどこにもない。
「自民党のインナーと呼ばれる税調幹部は6000億円なら受け入れることができ、維新の協力で予算案が成立する見込みが立った。維新の側からしても、教育無償化の成果を得るだけでなく予算案を年度内に成立させたい思惑が他にありました。4月開幕の大阪万博の費用が新年度予算に計上されているからです。ここで両党の利害が一致し、予算案の年度内成立が確実になった。しかし、私立高校の実質無償化が本当に教育の底上げにつながるのかという議論がほとんどないまま拙速に決めてしまったことには疑問を感じます。それに、無償化というと聞こえがいいですが、税金の投入であり、結局は国民負担です。教育無償化とともに維新が主張していた社会保険料の負担軽減についても、これから協議するという曖昧な決着になっている。熟議の国会と言うのなら、税制や社会保障制度を抜本的に見直す議論を与野党でするべきではないでしょうか。党利党略で小手先のつじつま合わせに終始しているようでは、与党も野党も国民から総スカンを食うことになりかねません」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
自民党政権が延命のために野党の要求を受け入れて財政支出を拡大すれば、それは国民負担としてはね返ってくる。われわれ国民は、政権や政党を存続させるために存在しているわけではないのだ。
こんな茶番で予算案が通過するなら、前代未聞のおぞましさというほかない。
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