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※2025年2月20日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年2月20日 日刊ゲンダイ2面
万博会場をそろって視察(C)共同通信社
少数与党の石破政権はとりあえず、維新が予算案賛成の意向を見せていることで、ホッとしているらしいが、邪な数合わせに国民は眉をひそめている。この政党は万博で無駄金を使い、所属議員は逮捕者ばかり、国民からは総スカン。そんなに政権を維持したいのかねと有権者は冷ややか。
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2025年度当初予算案の年度内成立をめぐり、与野党が攻防らしきものを繰り広げている。衆院で過半数を割り込む少数与党にのっかる石破政権は、“ゆ党”の間で行ったり来たり。それで結局、「年収の壁」の見直しを求める国民民主党から日本維新の会に乗り換えたようだ。教育無償化などを訴える維新との調整が急加速している。
自公与党と維新の政調会長は19日、維新が求める高校授業料の無償化と社会保険料の引き下げについて協議。石破首相は17日の衆院予算委員会で私立に通う世帯への支援金について、現行の上限額年39万6000円から引き上げ、45万7000円を軸に検討する考えを表明。維新は合意文書案への金額明記を要求し、その表現をめぐる溝が埋まらず、決着はつかなかった。きょうも協議を継続。これで3連チャンだ。
維新の前原共同代表は19日の党役員会で「納得できるものでなければ、最終的に予算案に反対でもいい」と強調したが、党内のガス抜きと見た方がいい。社会保険料の引き下げをめぐり、他の役員からは医療費総額の年間4兆円削減などの数値目標を書き込むべきとの声が上がり、反対意見が続出。無償化の工程を法制化させるべきだとも迫られているからだ。石破と前原はともに鉄道オタク。安全保障政策などで気脈を通じている。石破が「誠実な人だ」と信頼を隠さない前原が裏切るようなことがあれば、政権崩壊まっしぐらだ。
国会でも党内でも少数派の石破は、とりあえず維新が予算案賛成の意向を見せていることでホッとしているらしいが、邪な数合わせに国民は眉をひそめている。当たり前だ。自民党にルーツを持つ維新は、公党の体をなしていない。これまで何人の犯罪者を輩出したことか。
無法者集団にもバッジ
議員バッジを着けるためには手段を選ばず、公職選挙法違反はお家芸の域。「身を切る改革」を掲げているのに、現職代議士が地元市議と結託して秘書給与と議員報酬を二重取り。愛知県の大村知事をめぐるリコール騒動では、衆院選の公認候補予定者が署名を偽造。地方自治法違反で懲役2年、執行猶予4年の判決が確定した。女子高生3人にむかって下半身を露出した区議は、公然わいせつの疑いで現行犯逮捕された。
とりわけおぞましいのが、12歳の女子中学生に対する不同意性交罪で有罪判決を食らった椎木保元衆院議員だ。1審の量刑は懲役3年、執行猶予5年。東京地裁の村田千香子裁判長が「被害者の未熟さに乗じた犯行は卑劣で、心身への影響も軽視できない」と非難した犯行は言語道断である。検察の冒頭陳述などによると、椎木は東京・新宿のトー横付近で座り込んでいた家出中の生徒に「2万円あげるから遊べない?」と声掛け。ドン・キホーテのアダルトグッズコーナーでローションを購入し、カラオケ店に偽名で入店。およそ30分後、店長が目撃したのはソファでうごめいている裸の2人だった。成人が未成年者と性交していると判断し、110番通報。その場は言い逃れたものの、法廷で腰縄につながれた椎木が口にしたのは「射精はしていません」という釈明だった。ハッキリ言って獣だ。
兵庫「2馬力選挙」にもやっぱり加担していた
万博パワーで新駅「夢洲駅」が開業(C)共同通信社
大揺れが続く兵庫県政トップの斎藤元彦知事の“生みの親”も維新。斎藤はパワハラ疑惑で失職後、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が展開した「2馬力選挙」で昨年再選したが、新たな動きがあった。選挙期間中、立花は斎藤疑惑を告発後に自死した西播磨県民局長を誹謗中傷。その死について〈斎藤知事の責任に見えるよう印象操作した「黒幕」〉などとして、当時の竹内英明県議の名前を挙げた文書を公開した。竹内氏は県議会が疑惑追及のために設置した百条委員会のメンバーで、知事選後に辞職し、命を絶った。流言の原因となった問題文書の出元だと名指しされていたのが、維新の岸口実県議。百条委ナンバー2の副委員長だ。維新はきのうになって、岸口が「自分が手渡したと言われても反論のしようがない」と認めたと公表。岸口は百条委の委員を辞任する意向だが、辞職については言及していない。厚顔無恥にもほどがある。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「正論吐きの石破首相には清濁併せのむ覚悟も、泥をかぶる覚悟もない。“陰の総理”と呼ばれる自民党の森山幹事長シナリオに沿って動くほかないのでしょう。そうなると、同根で気心が知れ、軍拡路線に同調する野党第2党の維新はベストな連携相手ということになる。国民にソッポを向かれていても、お構いなし。まさに永田町の常識は世間の非常識なのです。維新はIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致の地ならしで招致した大阪・関西万博に手を焼いている。コストは膨張するのに、機運が全く高まらず、党勢衰退に拍車をかけている状況です。政府・自民党の手厚い支援がなければ、乗り切れない。両者は急場しのぎという利害で一致しています」
無償化原点で不人気校潰し
国家プロジェクト化した万博に投じられる費用は莫大だ。国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する会場整備費だけで約2350億円。当初見込みから倍増した。にもかかわらず、チケット販売は低迷。開催まで2カ月を切ったのに、目標の半分ほどの約780万枚しか売れていない。このままいけば、赤字必至。国民負担も膨張の一途である。所属議員は無法者ばかりの上、無駄金使い。国民から総スカンの維新と組んじゃあ、石破もオシマイだろうに、万博をめぐる怪しい取引を朝日新聞(18日朝刊)がこう報じていた。
〈しっかり対応するように発破をかけたのが首相だった。年明け早々に万博の名誉会長に就任すると、閣僚に「ミャクミャク」のピンバッジを着用するよう要請。1月19日には、会場となる大阪・夢洲を訪れて準備状況を視察した。
視線の先に見据えるのは、国会での協力を期待する維新だ。大阪に党本部を置く維新にとって、党を挙げて招致した「地元」での万博の失敗は許されない。
首相は5日、官邸に維新代表の吉村洋文・大阪府知事を招いて意見交換。前売り券の販売が伸び悩むなか、これまで認めていなかった当日券の販売が必要との認識で一致し、検討を進めることを約束した。吉村氏は面会後、「非常に前向きな回答をいただいた。総理とは問題意識を共有している」と満足げに語った〉
そこまでして政権を維持したいのか。有権者の視線が冷ややかになるわけである。そもそも、維新が推す高校無償化の根っこにあるのは社会福祉ではなく、新自由主義だ。創設者の橋下徹氏が大阪府知事時代、国の無償化制度への上乗せを導入。私立と公立を競争させ、不人気校を潰すのが目的で、「府立学校条例」が12年に制定されて以降、21校が募集停止に追い込まれた。教育現場に弱肉強食を持ち込み、あたかも「子育て世代の味方」を装っているのである。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
「立憲民主党は予算案の大幅修正を要求し、国民民主党も日本維新の会も看板政策を押し込もうとしている。それで財源論をめぐってガチャガチャやっていますが、3党とも無軌道に増える防衛費を減らせとは言わない。野党が大同団結すれば石破内閣を倒せるし、政権交代して政策を実現できるのに、そんな動きは全くない。要するに、互いに“成果”を分け合って、夏の参院選で“実行力”をアピールしようということです。旧安倍派の会計責任者の参考人招致が先送りとなり、予算案の年度内成立が危ういと大騒ぎしていますが、はみ出したところで数日以内。国家運営に大きな影響はありません」
1強多弱が終わったら、次は壮大な猿芝居。騙されてはいけない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo296/msg/672.html