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※2025年2月13日 日刊ゲンダイ12面 紙面クリック拡大
高額療養費の限度額引き上げ問題は「金がない病人は勝手に死ねば」と言われているようなものだ! ラサール石井 東憤西笑
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/367651
2025/02/14 日刊ゲンダイ
税金の使い方のバランスが悪い(C)共同通信社
とにかくややこしい。高額療養費の限度額引き上げの話だ。
だいたい「引き上げ」って言われれば、「こっちに返ってくるお金の額が引き上がったのか、いいことじゃないか」って思っちゃうじゃないか。いやいや違う。逆だ。金は取られるのだ、今まで以上に。それも死と直面しているような大病と闘う病人からむしり取るのだ。「金がなければ勝手に死ねば」と言われているような、ひどい話なのだ。
今まで病気や手術で入院とかしたことない人にはなんのことかわからないだろうが、高額療養費とは、ひと月の薬代や手術代などが多額になった時に、一定のお金が国から戻ってくるという甚だありがたい「日本っていいなあ」という制度だ。私も手術で入院した時にかなり戻ってきてとても助かった。
この限度額が収入によって細分化されていて、そこがかなりややこしいのだが、平均年収で計算する。
年収500万円の人の場合、例えば月に100万円医療費がかかったとして、健康保険が3割負担だから自己負担は30万円だ(この国民皆保険制度はほんとに素晴らしい。絶対死守したい。しかし国や大企業は、おそらくこれすらもそのうちなくそうとしているらしい)。
しかし月30万円も払えるわけがない。そこで、約8万円でいいですよ。あとの21万円ちょいは国が出しますよ、というのが今までのシステムだ。これは助かる。
しかし、この自己負担の限度額、約8万円が今年から上がるのだ。このケースの場合は3万円上がって約11万円。月に3万円上がったらかなり大変だ。だが、これだけじゃない。ここから1年ごとに段階的に上がっていき、2027年には約13万円になる。つまり毎月5万円多くなるのだ。
最近はがんの薬が急速に進歩して、今やがんは死なない病気、薬を飲んで生き延びる病気になった。しかしこの薬が高額だ。
まだ若い主婦が子供を抱えてがんになった。親の介護もしながら病気と闘い、子育てをする。月5万円も支出が増えたら到底やっていけない。仕方なく毎月の薬を2、3カ月に1回に減らさざるを得ない。苦しい。もう何のために生きているか分からない。そんな人がたくさん出てくる。
防衛費には6兆円も…
なぜこんなことになったのか。どうやら岸田政権で決めた「子育て支援」の財源が1.1兆円ほど足りない。そこで社会保険から充当しようということになり、高額療養費に目を付けたらしい。
子供の未来は大事だ。しかしそのために死と闘う病人が犠牲になるのか。彼らにも子供がある。その子育てを危機にさらして何が子育て支援だ。
いや、あなただって他人事じゃない。明日事故に遭うかもしれない。病気だって、今や2人に1人ががんになる時代だ。明日は我が身なのだ。
野党やがん患者の会が早急の見直しを求め、政府も検討はしているが、抜本的な解決には程遠い。
なぜ社会保険から削ろうとするのだ。お金に色はついてない。財布は1つだ。防衛費は6兆円。ここからちょっと持ってくるわけにはいかんのか。石破さんがトランプさんに約束してきた150兆円の投資。それを149兆円にしたらいいんじゃないのか。まあそんな簡単なもんじゃないだろうが。なんかバランス悪いんだよねえ。
どうもこうやって高額治療に不安を抱かせ、民間のがん保険に誘導しようとしているような、そんなキナ臭さも感じるんだよなあ。
ラサール石井 タレント
1955年、大阪市出身。本名・石井章雄(いしい・あきお)。鹿児島ラ・サール高校から早大に進学。在学中に劇団テアトル・エコー養成所で一期下だった渡辺正行、小宮孝泰と共にコント赤信号を結成し、数多くのバラエティー番組に出演。またアニメの声優や舞台・演劇活動にも力を入れ、俳優としての出演に留まらず、脚本・演出も数多く手がけている。石井光三オフィス所属。
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