ロケットに血税注ぐ余裕なし
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2024年12月18日 植草一秀の『知られざる真実』
日本財政について三つの論点を挙げた。
「日銀の利上げ見送りは本当か」
https://x.gd/HKmZG
1.財政赤字を拡大する景気刺激策を実行する財政余力があるのか。
2.財政運営の最大の課題がどこにあるか。
3.税制の改変について何を優先するべきだ。
103万円の壁を178万円に引き上げると7〜8兆円の税収減になるからできないとの主張が示される。
しかし、2020年度の一般会計税収は60.8兆円だったが、2023年度には72.1兆円に増大した。
3年間で11.3兆円の税収増は3年間で11.3兆円の増税実施と同じ意味。
10兆円減税が実施されても税負担は差し引き増大する。
日本財政が危機に直面しているとの主張がある。
主張の根拠は政府債務の大きさ。
国民経済計算によれば一般政府の2022年末の負債総額は1413兆円。
債務証券だけで1174兆円ある。
2022年の日本の名目GDPは561兆円で債務証券だけでGDPの200%を超える。
財務省はこれを根拠に財政が危機に直面しているとの虚偽情報を流布している。
財務の健全性を判断するのに債務だけを見ることはない。
資産と負債のバランスで判断する。
2022年末の政府資産は1589兆円で差し引き177兆円の資産超過。
この日本財政が破たんすることはあり得ない。
財政の最大の問題は支出の中身。
社会保障支出が極めて貧困な水準にあるのに、利権支出は膨張の限りを尽くしている。
ここに最大の問題がある。
宇宙事業会社「スペースワン」が12月18日、開発中の小型固体燃料ロケット「カイロス2号機」を和歌山県串本町のロケット発射場「スペースポート紀伊」で打ち上げたが失敗した。
宇宙事業会社「スペースワン」は本年3月13日にも小型固体燃料ロケット「カイロス初号機」を和歌山県串本町のロケット発射場「スペースポート紀伊」で打ち上げたが打ち上げ直後に爆発して失敗した。
「失敗は成功の素」ともいうから、失敗を次の成功に生かせば良いだろう。
しかし、このような悠長な話ができるのは「自己責任」で事業が行われている場合に限る。
2001年以降に一気に日本に埋め込まれた「新自由主義」=「市場原理主義」というのは経済活動を市場に委ねるというものではなかったのか。
市場に委ね、市場が自己の責任でさまざまな分野にチャレンジすることは良いことだろう。
しかし、これらの活動は民間の自助努力によるべきもの。
自分の費用負担で新事業にチャレンジして新しい活路を開拓することは悪いことでない。
しかし、その事業が国民の血税に依存するというなら、話はまったく変わる。
日本経済は30年間の低迷を続けている。
労働者実質賃金は1996年から2023年の27年間に17%も減った。
年間を通して勤務する給与所得者の51%は年収が400万円以下。
21%が200万円以下。
2022年の内閣府年次経済財政報告によれば、世帯所得の中央値は1994年の505万円が2019年には374万円に減少。
131万円も減少した。
このような国民生活の疲弊を踏まえれば、財政政策においては不要不急の支出を完全に遮断し、国民生活を支える支出に財政支出を限定するべきだ。
社会保障支出を拡充し、高校・大学の授業料負担を軽減し、義務教育段階では学校給食を完全無償化にするなど、国民の生活を支える政府支出に財政支出をシフトさせるべきだ。
ところが、現実は真逆。
2023年に成立した改正宇宙航空研究開発機構(JAXA)法に基づいて設置した基金を活用し、企業や大学に10年間で1兆円規模を支援する方針が定められた。
ロケット以外でも、例えば2021年度から23年度までの3年間に政府が半導体産業支援のために注ぎ込んだ補助金は3.9兆円に上る。
「市場原理」と言いながら、実態は完全な「親方日の丸」の無責任体質そのものだ。
件の宇宙事業会社「スペースワン」も典型的な天下り会社だ。
政府から巨額の補助金を受ける者たちの言動を見るがよい。
何かにつけて「政府擁護の発言」を示す。
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