※2024年12月14日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
前代未聞のグロテスク…石破自民は政権維持だけが目的化、何でも口約束の危うさ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/364929/2
2024/12/14 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
13日の衆院予算委員会でもこの笑顔(C)共同通信社
補正予算が通ることになって、石破首相はニタニタしていたが、その裏では寝業幹事長の口約束。あっちにもこっちにも空手形を切り、各論はこれからという危うさとドス黒くなってきた石破色。
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衆院で補正予算案が通過し、13日から参院予算委員会での審議が始まった。与党が多数の参院での可決・成立は確実。質問者をムッとした顔で睨みつける場面もあった衆院予算委とは違って、13日の石破首相は時折、笑みを見せ、余裕しゃくしゃくだった。
衆院では国民民主党だけでなく、日本維新の会も補正予算案に賛成し、石破は「完璧に近い形をつくってもらった」と満足げ。少数与党になってからの“最初の関門”を突破し、ニタニタである。
しかし、だ。石破自民がやっていることは、実体がハッキリしない口約束ばかりじゃないか。
国民民主に補正予算案に賛成してもらう“条件”となった自公国の3党合意は、曖昧な玉虫色文書。所得税の課税最低ライン「年収103万円の壁」引き上げについて、「178万円を目指して、来年から引き上げる」となっているが、「目指して」では、やるのか、やらないのか、どっちつかずだ。来年、178万円に到達するのかどうかもよく分からない。
ガソリン税に上乗せされるいわゆる「暫定税率」を「廃止」することでも3党は合意したが、これも廃止の時期が一切、書かれていない。1年前、岸田政権時に、ガソリン価格の暫定税率分を減税する「トリガー条項」の発動で国民民主に肩透かしを食らわせたアレとどう違うのか。ヤルヤル詐欺は自民の常套手段だ。
「21日閉会の国会日程を睨んで、国会対策に精通する森山幹事長が裏で動いた。まずは補正予算の成立。森山さんが国民民主の榛葉幹事長と9日夜に会って、榛葉さんを説得した。曖昧な文言は、自民と国民民主のどちらにとっても都合よく解釈できる。いかにも森山さんらしい、足して2で割る国対手法です」(自民党関係者)
寝業師幹事長は、維新とは「教育無償化」をめぐる自公維の協議体設立で合意。それで維新が補正予算に賛成したわけだが、こちらも中身は真っ白だ。合意文書すらない。少数与党が、あっちにもこっちにも、なりふり構わず空手形を切りまくっている醜悪なのである。
国対手法の駆け引きばかり
森山幹事長の国対手法で自公国合意(C)日刊ゲンダイ
そんなその場しのぎだから、補正予算が片付いたら、早速13日、自公国で「178万円を目指して」についての認識のズレが露呈した。
公明の西田幹事長が3党合意の内容について、「いきなり来年、178万円になるという文脈ではなかった」と言い出し、石破も参院予算委で、「178万円という金額を具体的に念頭に置いて議論が進んでいるとは承知していない」と本音をポロリ。すぐさま「念頭に置いて、目指して、ということになっている」と言い直していたが、ヤル気のなさがアリアリだ。
その後、13日夕方、自民税調が引き上げ額として「123万円」を提示し、国民民主は「とうてい受け入れられない」と反発している。
この先、国民民主は、来年の通常国会での新年度予算案への「反対」をカードに自民を揺さぶり、一方の自民は、新年度予算案で維新の取り込みも描きつつ、腹の探り合いを続けるのだろう。
補正予算の衆院通過を受け、石破は「与野党の熟議になった」とか言っていたが、国対手法の駆け引きばかりで、一体、どこが熟議なのか。森山主導で石破の存在感は薄い。政治評論家の野上忠興氏が言う。
「石破首相自身も少数与党だからある程度妥協しないと仕方ないと思っていて、森山幹事長がその命を受けて動いている。森山幹事長頼みでしか政権運営できなくなっているので、財源をどうするなどの各論は後回し。とにかく器を広げて野党を幅広く取り込んで、補正予算も来年の本予算も乗り切りたい、ということでしょう。石破首相は『追い詰められて辞任』という醜態をさらすのだけは絶対に避けたいと思っているようです。何としても来年の参院選までは頑張りたい。そのためならこの先も、ハードルを下げて、何でも妥協してしまうでしょう」
言い訳、屁理屈、詭弁…ドツボにはまる首相
「党内野党」と揶揄され、自民党内で嫌われても、正論を吐いてきた石破だったが、政権与党のトップに上り詰めたら、石破色がまったく出ないどころか、腐敗政党のドス黒さにすっかり染まっている。とりわけ、口をあんぐりするしかないのが、企業・団体献金をめぐる石破の答弁だ。
リクルート事件に端を発した30年前の政治改革で、政治家個人への企業・団体献金が禁止され、政党へも5年後に「見直す」となった。禁止の代わりに税金から政党交付金を出すことになったというのが国民一般の認識だ。当時の自民党総裁だった河野洋平・元衆院議長も、企業・団体献金の禁止と政党交付金は「トレードオフの関係だ」などと語っている。
ところが石破は、「そのような事実は実際にございません」と言ってのけ、「公的助成が入ったので企業・団体献金がなくなるという意識を持った者は、少なくとも自由民主党にはいなかった」と言い切る。挙げ句には、「企業・団体献金を禁ずることは、憲法21条に抵触する」とまで言い出した。
さすがにきのうの参院予算委で、「違反するとまでは申しません。そこは言い方が足りなかった」と修正せざるを得なかったが、それでも「21条との関連は法律学上、議論されなければならない」としつこく粘るのである。
言い訳、屁理屈、詭弁……。ドツボにはまっていく石破を見ていると、企業献金の闇の深さが分かるというものだ。
政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「企業・団体献金をもらいながら、血税からの政党交付金までもらう。1994年の政治改革で二重取りはやめるはずだったのに、やめられない。結局、自民党というのは、企業からのカネで動いている利権詐欺政党なんです。政策も選挙もカネありきの政治が自民党の本質。それは石破首相だって同じです」
「熟議」でも「謙虚」でも何でもない
石破の変節にはもはや誰も驚かない。
経産省が今月中にまとめる次期エネルギー基本計画で、2011年の東日本大震災後から明記されてきた「可能な限り原発依存度を低減する」との文言が削られる方向となった。石破は自民党総裁選の出馬会見で、原発について「ゼロに近づけていく努力を最大限にする」と明言していたのに、岸田政権が進めた「原発を最大限活用」をさらに前進させるのである。
選択的夫婦別姓の導入についても、首相就任前は「やらない理由がわからない」と言っていたくせに、一転、慎重姿勢に変わった。原発推進も別姓拒否も、自民党内への配慮だろう。
足場が危うい党内向けには持論封印で媚び、野党対策では口約束を乱発して取り込みに躍起になる。少数与党で苦しい政権運営とはいえ、こんなの「熟議」でも「謙虚」でも何でもない。単なる政権維持のための保身でしかない。
「石破首相は党内の反石破勢力におもんぱかりすぎて『政治とカネ』に対する対応も甘い。企業・団体献金を守ることに執着しているが、本来ならこれこそ最も石破色が出せるのに踏み切れないでいる。最新の時事通信社の世論調査で、内閣支持率が2割台の危険水域のまま、さらに微減となった。支持率が低いのは『期待したのと全然違う』という失望感が広がっているからでしょう。いったん、権力を握ると誰もがその権力を維持したいととらわれるもの。石破さんの場合、そういう首相ではないという期待感があっただけに、世論の落胆はより深刻です」(野上忠興氏=前出)
石破は首相になって、何がやりたかったのか。今となっては、自分でも分からなくなってきたんじゃないか。前代未聞のグロテスク。結局、自民党政権の首相である限り、誰がやっても同じ。この国は変わらない。
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