戒厳令下でも機能した韓国の司法・行政の分離。日本で同じことが起きたら… ラサール石井 東憤西笑
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/364759
2024/12/12 日刊ゲンダイ
戒厳令を受け国会の本会議場に進入しようとする兵士と消火器を噴射して行く手を阻む国会職員ら(聯合=共同)
韓国の戒厳令に世界中が驚かされた。
尹大統領の真意は今もって不明だが、軍事独裁政権以来の大統領によるクーデターは、たった6時間で挫折した。
なぜ尹氏はこんな暴挙に出たのか。あらゆる政治活動を禁止し、メディアの報道を統制する非常戒厳が政権維持のために使われたとしたら、それは民主主義に対する挑戦である。
韓国が軍事政権から民主主義を勝ち取ったのは1980年代。まだつい40年前の出来事だ。我々が漫才ブームなどで浮かれている時に、多くの市民が死傷した光州事件が起きた。今も数々の映画になるくらい国民には生々しいトラウマだ。だから、非常戒厳が発せられた瞬間に大多数の市民が国会前に押し寄せた。国会議員も集結し、議会を開き戒厳令を解除させる決定を下した。
ここが解せないところなのだが、尹氏が戒厳令を発した3分後には300人の武装兵士が選挙管理委員会の庁舎を占拠している。これは野党の不正選挙の証拠探しだといわれている。しかし、国会に他の部隊が到着したのは30分後。その間に野党議員たちは急行しバリケードで国会を守った。軍隊がやる気ならもっと迅速に国会を占拠できたはずである。しかも兵士はみな実弾を装填(そうてん)していなかった。
これは軍隊もこの戒厳令に疑問を持ち、わざと鈍い行動をとったのではないだろうか。
尹大統領が何を考えていたのかいまだにわからないが、野党が北朝鮮と通じ選挙でも不正をしたと、ネトウヨ系のSNS情報を本気で信じていたのではないかという報道もある。
SNSと選挙。最近この話ばかりだ。トランプに不正選挙とあおられた市民が議会を襲撃し、兵庫県知事選では不信任で失職した斎藤氏がまさかの復活。
韓国では陰謀論が負け、米では一度負け復活し、兵庫では陰謀論が勝利した(立花孝志氏がパワハラはなかったというのは嘘だったと断言した)。「自ら情報を取りに行く時代」というが、SNSに送り込まれる情報をみんなだらだら見ているだけではないのか。
検察のトップだった尹氏を今や検察が内乱容疑で捜査している。韓国は司法と行政がしっかり分離している。ここが日本との大きな違いだ。同じことが起きても、日本では司法が動かないだろう。そもそも国会前にあれほどの人が集まらないだろう。日本人には長年にわたって「長い物には巻かれろ」という言葉が染み付いているからだ。
戒厳令下では主要な政治家や政権批判のYouTuberらを逮捕する動きもあったという。日本なら日刊ゲンダイが封鎖され、私は逮捕されていたかも知れない。それでも言おう、「長いものには噛みつけ」と。
ラサール石井 タレント
1955年、大阪市出身。本名・石井章雄(いしい・あきお)。鹿児島ラ・サール高校から早大に進学。在学中に劇団テアトル・エコー養成所で一期下だった渡辺正行、小宮孝泰と共にコント赤信号を結成し、数多くのバラエティー番組に出演。またアニメの声優や舞台・演劇活動にも力を入れ、俳優としての出演に留まらず、脚本・演出も数多く手がけている。石井光三オフィス所属。
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