兵庫県知事選 問われる「違法性」と「適法性」 三輪記子 それ、当たり前のことですか?
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2024/12/02 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
疑惑についてまともに答えず、事実関係さえ弁護士に回答させる。政治家として適格性があるのか(C)日刊ゲンダイ
2024年、このコラムを書くようになって公職選挙法について触れることが多い気がする。7月は「事前運動」について触れ、それだけで起訴され有罪になる事案は見当たらないと指摘した。選挙人買収(公選法221条1項1号)と一緒に起訴されている事案が多い。
さて、今回の兵庫県知事選ではインターネットを使った選挙運動において選挙人買収の疑惑が生じている。総務省のホームページでは〈インターネットを利用した選挙運動を行った者に、その選挙運動の対価として報酬を支払った場合には買収罪の適用があります〉〈一般論としては、業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合には、当該業者は選挙運動の主体であると解されることから、当該業者への報酬の支払いは買収となるおそれが高いと考えられます〉とある。
この点、知事はPR会社社長の行為は「ボランティアだった」と主張している。つまり無償行為であり、選挙運動の対価を支払ったわけではないという。ここで問題なのは当事者の弁解というよりも、その実態、内実。
PR会社社長がボランティアで選挙運動に従事していたら即セーフかというとそうとも限らない。従業員をも動員して選挙運動に従事していたとしたら、社長に買収罪が適用される可能性もある。買収罪は立候補者のみに成立する犯罪ではない。
仮に、PR会社社長に買収罪が適用されたとして、「組織的選挙運動管理者等」に当たることが連座裁判等により確定した場合には、公職の候補者本人に連座制が適用され、当選無効や立候補制限が課せられることとなる(公職選挙法第251条の2及び第251条の3)。つまり、この理路の場合、今回の選挙について当選無効となる可能性もある。
もちろん、指摘しているのはあくまでも「可能性」であって証拠状況によっては公職選挙法上の違法性から免れることもあるだろう。
しかし、このような疑惑にまともに答えず、事実関係さえ弁護士に回答させようとする(しかもその弁護士は事実関係を正確に押さえていないようだった。いやむしろ正確な事実を提供してもらっていないようだった)知事は、果たして政治家としての適格性があるのだろうか。説明責任から逃げ続ける者は公職に値しないと私は考える。あらためて強く言っておきたい。そのような政治家を戴くことを「当たり前」にしてはならない。
三輪記子 弁護士
1976年、京都市生まれ。東大法学部卒、立命館大法科大学院修了。2010年に弁護士登録。コメンテーターとしてテレビなどのメディア出演のほか、「弁護士三輪記子のYouTubeチャンネル」などネットでも発信。
http://www.asyura2.com/24/senkyo296/msg/239.html