※2024年11月29日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年11月29日 日刊ゲンダイ2面
今だけ金だけ自分だけ。国民の不信も尻目にお気楽歴代首相(C)共同通信社
政治とカネの形だけ改革、毎度お馴染みのデタラメ補正、こんなもんでやってるふりの自民党。今だけ金だけ自分だけだから、歴代首相も庶民の怒りや苦しみを尻目にお気楽だ。
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先の衆院選で自公両党が少数与党に転落後、初の本格論戦の場となる臨時国会が28日召集された。29日は石破首相の所信表明演説を実施。「地方創生交付金の倍増」「価格転嫁が困難な中小企業支援、学校給食費支援、厳冬期の灯油支援」など聞こえのいい言葉が並ぶが、論戦の主要テーマはゴマカシとデタラメばかりである。
まず石破政権が初めて策定した総合経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案だ。29日閣議決定し、来月上旬に国会提出。石破は早期成立に意欲を示すが、財源不足を補うために新たに国債を6兆6900億円増発する方針が判明した。
一般会計の歳出総額は13兆9433億円。今年度の税収の上振れ分3兆8270億円などを充てても賄いきれず、ほぼ半額を赤字国債の追加発行で穴埋め。今年度の国債発行額は当初予算段階の35.4兆円から42兆円台まで膨らむことになる。
石破政権は経済対策の柱に能登半島の復旧・復興支援を掲げる。M7.6を観測した元日の巨大地震以来、政府は繰り返し今年度の予備費を小出しに削り、震災対応に充ててきた。発生から間もなく1年。ようやく災害対策に特化した補正予算案が組まれるわけだ。
能登では26日にも最大震度5弱の地震が発生。余震が続く中、9月には記録的大雨にも見舞われた。遅きに失した感は大いにあるものの、今なお以前の暮らしを取り戻せない被災地の多くの人々に広く補正予算が行き渡るのであれば、国債増発も「やむなし」という気にもなる。
しかし、そんな期待を世紀の変節漢率いる現政権は平然と裏切るのだ。
「柱」の能登復旧予算は全体の3%未満
能登半島地震や奥能登豪雨の復旧・復興支援の費用として、国交省が補正予算案に計上する額は3704億円。歳出総額の2.65%に過ぎず、スズメの涙にも満たない。
補正予算は本来、緊急性の高い事業に充てるものだ。被災地支援はまさに「待ったなし」。昨年度予算分も含めた予備費から7回に分け、計7150億円を復旧・復興に費やしてきたとはいえ、「柱」と言うには金額があまりにも細すぎやしないか。
そのクセ、総合経済対策のメニューには創薬支援や公共サービスのデジタル化、コンテンツ産業の振興など、本来なら当初予算で計上するような不要不急の事業もてんこ盛り。補正予算案の半導体産業への支援額は度肝を抜く。昨年度の補正予算に続き、1.5兆円規模を維持し、とりわけ次世代半導体の国産化を目指す企業「ラピダス」には新たに8000億円規模の支援を盛り込む。能登支援の実に2倍以上である。
ラピダスにはトヨタ自動車やソニー、ソフトバンクなど大手8社が出資。輝いていた「日の丸半導体」の過去の栄光よ再びとばかりに、政府が巨費を投じてクビを突っ込む意義はあるのか。いずれにせよ、緊急性に欠けるのは明白だ。必要火急なのは「産業のコメ」といわれる半導体ではなく、肥沃な土地で知られる「能登のコメ」栽培への支援だろう。
こんなデタラメがまかり通るのも、石破のせいだ。衆院選公示日の第一声で「昨年(13.2兆円)を上回る大きな補正予算を」と“公約”した手前、各省庁は規模ありきで鉛筆ナメナメ。後回しでも支障のない事業までエイヤッと積み上げまくった結果である。
思い付きで中身なし。毎度お馴染みのデタラメ補正だが、さらに今回は裏金事件から目をそらすため、あわよくば来夏の参院選での支持獲得のため「規模ありき」を最優先。ヨコシマな思惑が一段と透けて見える。
カネで政策を歪める自民のアイデンティティー
呆けた表情しか話題にならない…(C)日刊ゲンダイ
石破自民の「党利党略」のために国の借金をいたずらに増やし、次世代にツケを回すなんて冗談ではない。当然、石破たちも身を切るべきだが、「政治とカネ」の改革は形だけ。自分たちの資金源の死守に躍起である。
いい例が、年間10億円も党幹部に支給されながら使途報告不要の合法的裏金である「政策活動費」の廃止方針だ。「廃止」といっても支出先を議員個人ではなく、主に政党支部に変えるだけ。支出自体をなくすわけではない。しかも新設する第三者機関のチェックを経た上で、プライバシーや外交上の秘密を含む支出は「公表方法を工夫する」という。今から支出先などの黒塗りを前提にするような自民党案は新たなブラックボックスを生むだけである。
派閥裏金事件の温床となった政治資金パーティーに関しても、自民は企業・団体のパー券購入禁止には後ろ向き。企業・団体献金の禁止に至ってはハナからスルー。皆が皆「個人献金は善、企業・団体献金は悪という立場を取らない」と完全に開き直っている。
こんなもんで年内に「政治とカネ」の問題の決着を図り、名ばかり改革で「やってるふり」をされたらたまらない。
「企業・団体献金の最大の問題は、政財界の癒着につながり、カネで政策が歪められかねないこと。裏を返せば、カネ次第で政策を歪めてしまうことこそが、自民党の存立基盤であり、権力維持の手段なのです」と喝破するのは立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)だ。こう続ける。
「企業・団体献金を温存しなければ、党としての存在意義が失われる。政財官の癒着構造の中でしか存在価値を見いだせないのが、自民党なのです。でなければ、1994年の『平成の政治改革』で税金を原資とする政党交付金の導入に伴い、いったんは企業・団体献金の廃止を決めながら、30年間も放置することなどできません。癒着ありきのアイデンティティーを守るためなら、恥も外聞も度外視。自民党とは究極の利己主義集団なのです」
来夏の参院選も利己主義集団に鉄槌を
自民の連中は今だけカネだけ自分だけ。常に自分たちの目先の利益だけを最優先に追求する。石破だって例外ではない。少数与党の厳しい政権運営に加え、長く「党内野党」だった立場を払拭するためなら何でもやる。
28日は議員会館の岸田前首相の事務所を訪ね、約40分間、政権運営を巡って岸田と意見交換した。岸田は米大統領選でトランプ氏が当選したことを受け、中国が焦りを見せているとの見解を示し、「それを利用すればいい」とアドバイスしたという。
すっかり「外交の岸田」気取りだが、衆院選の自民惨敗は解散直前まで総理を務めた岸田に大半の責任がある。石破も本音は「何サマ」だろうが、今は政権基盤の安定という自分の利益が最優先。だから岸田もお気楽だ。党内に「資産運用立国議連」なる新たな議員連盟を立ち上げ、会長に納まった。26日には議連の提言を持ち、首相官邸を訪れて石破と面会。提言を渡す際のニタニタ顔ったらなかった。
ほうけた表情しか話題にならない恍惚の菅元首相が党副総裁に納まっていられるのも同じ理由だ。党内基盤の弱い石破が政権安定という自己利益のため、後ろ盾として菅を頼っているだけである。
「補正予算案は借金ずくめで後世への視線に欠け、能登の被災者にも寄り添わない。衆院選で自民の『政治とカネ』に民意がノーを突きつけた以上、もっと謙虚になるべきなのにそれもない。物価高騰に息が詰まるような国民生活を尻目にいい気なものですが、それを許すのは国民民主党の野党離れ。『103万円の壁』の引き上げをチラつかせただけで、向こうから勝手に近づいてくるのですから、ちょろいものです」(政治評論家・本澤二郎氏)
かくなるうえは、庶民が来夏の参院選で再び怒りや苦しみをぶつけるしかない。衆参ともに自公を過半数割れに追い込まなければ、利己主義がはびこる政界の景色は変わらない。
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