※2024年11月23日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
自民を助けるのか…(C)日刊ゲンダイ
先の選挙は裏金と統一教会に代表される安倍政権以降の不正と堕落、モラル崩壊と国民愚弄への有権者の断罪だった。愚にもつかない生煮え税制見直しと企業・団体献金温存で自民党政治が存続なら、世紀の詐欺。
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自民党を過半数割れに追い込んだ10.27衆院選は、一体なんだったのか。どうやら自民党は「政治とカネ」について、まったく反省していないらしい。
自民党の「政治改革案」が21日、まとまった。28日に召集される臨時国会に法案を提出し、年内に成立させるつもりだ。石破首相は「責任政党としての役割を果たしたい」などと、もっともらしいことを口にしていたが、改革案の中身は、デタラメも極まれりというシロモノだ。
自民党案には<政策活動費の廃止><収支報告書のデータベース化><外国人によるパー券購入の禁止>──といった項目がズラズラと並んでいるが、“改革の本丸”である「企業・団体献金の禁止」がスッポリ抜け落ちている。
項目に入れた<政策活動費の廃止>にしても、外交上の秘密など、配慮が必要な支出は「公表方法を工夫する」などと、非公開にする余地を残している。「政策活動費」は、自民党幹部に年間10億円ものカネが支出されながら、使途公開の義務がないため「ブラックボックスだ」と散々批判されたもの。なのに、自民党は形を変えて存続させるつもりらしい。さすがに、公明党からも「また抜け穴になる」と批判があがっている。
「企業献金の禁止」が、政治改革の“本丸”とされるのは、企業献金が「政治とカネ」の根本原因となっているからだ。企業献金を禁止しない限り、日本の政界が浄化されることはない。企業献金が禁止されれば、日本政界は一気にクリーンになるはずである。なのに、自民党は、絶対に企業献金を禁止にしないつもりだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「企業献金の最大の問題は、カネによって政治が歪められてしまうことです。見返りもなく企業が献金するはずがありません。たとえば、庶民が物価高に苦しんでいるのに“円安政策”が採られているのは、自民党のスポンサーである輸出大企業が儲かるからです。法人税減税が繰り返されているのも、献金の効果でしょう。自民党は『企業献金が悪だという認識は違う』と企業献金を正当化していますが、企業献金の正当化はムリがあります。もし、企業が見返りを求めているのならワイロだし、見返りを求めないのなら背任の疑いが生じますからね」
自民党は二言目には、企業の政治活動の自由を認めた1970年の最高裁判決を持ち出し「献金は禁じられていない」と強弁しているが、判決は「公共の福祉に反しない限り」と留保をつけ、寄付に伴う金権政治の弊害には「立法政策」で対処すべきだとしている。無条件で認められたわけじゃないということだ。
国民民主を巻き込み「政治とカネ」に幕
選挙で負けても反省なし(C)日刊ゲンダイ
よくも自民党は、平然と「企業献金」を存続させるデタラメな「改革案」をまとめられたものである。
それもこれも、大手メディアが「政治とカネ」に対して関心を失っているからだ。自民党の改革案を批判する大手メディアの報道はほとんどなかった。いまや、メディアの関心は「103万円の壁」一色である。
さらに、自民党は、国民民主を取り込めると計算しているという。
実際、立憲民主や維新、共産は「企業献金の禁止」を求めているが、国民民主だけは「企業献金が悪で、個人献金が善という立場ではない」(玉木代表)と、自民党とまったく同じセリフを繰り返している。
「国民民主が自民党の改革案に賛成することは、すでに織り込み済みです。自公国3党の賛成によって、28日から開かれる臨時国会で成立するでしょう。石破自民党は、年明けの通常国会は2025年度予算の成立に集中したい。政治とカネは、年内に決着をつけ、幕引きにするつもりです」(政界関係者)
しかし、こんなバカな話はないのではないか。ほんの1カ月前に行われた衆院選の最大の争点は、「政治とカネ」だったはずである。敗北した自民党も、選挙直後「自民党は生まれ変わらなくてはならない」と反省を口にしていたはずだ。
なのに、自民党の腐敗の元凶である「企業献金」も「政治資金パーティー」も、無傷なまま温存され、「政治とカネ」は幕引きなんておかしいのではないか。
議席を4倍にした国民民主党だって、選挙の時、自民党の腐敗堕落を批判していたはずである。どう考えても、国民民主が自民党の改革案に賛成するのは理屈に合わない。
「国民民主党が、どんな政党なのか、自民党がまとめた改革法案への対応を見れば、正体が分かるはずです。もし、国民民主を含めた全野党が『企業献金の禁止』でまとまれば過半数を確保し、数の上では衆院を通過する。『企業献金禁止法』が成立する可能性が一気に高まります。はたして国民民主は、自民党案に賛成するのでしょうか。もし賛成したら、10.27衆院選で自民党を敗北させた有権者を裏切ることになりますよ」(本澤二郎氏=前出)
2022年、自民党の政治資金団体「国民政治協会」には、約24億5000万円の企業・団体献金があった。自民党の改革案が成立したら、間違いなく金権政治、利権政治がつづくことになる。元のもくあみということだ。
自民党を過半数割れに追い込んだ10.27衆院選は、一体なんだったのか、という話である。
もっと自民の数を減らすべきだった
衆院選前、裏金事件が問題になった時も、自民党は「企業献金」「政治資金パーティー」「政策活動費」の3点セットだけは、死守しようとしていた。選挙で大敗しても、まったく姿勢を変えようとしない。カネに対する自民党の執着は、相当なものということだ。
やはり、10.27衆院選は、もっと自民党の数を減らす必要があったのではないか。
作家の高村薫氏が、衆院選の結果について「サンデー毎日」(11月24日号)でこう書いている。
「今回の選挙を通じて見えてきたことはいくつかある。一つは、自民党にはこの期に及んで裏金問題への反省も自浄能力もなかったことである。政治資金収支報告書の不記載は、記載できないカネがあったということだから、間違いなく裏金だが、首相自ら『裏金ではなく不記載』と豪語し、公認しなかった裏金議員の政党支部にも2000万円を支給して有権者の顰蹙を買ったのがその証左である。
また一つは、そうは言っても裏金議員46人のうち、大物議員を含め18人が当選したことを見ると、有権者の怒りも中途半端なものだったことが分かる」
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「もし、国民民主を抱き込み、自民党が息を吹き返したら、せっかく有権者が衆院選で示した意思も台無しになってしまいます。ただ、来年夏には参院選が控えている。参院選のことを考えたら、国民民主だって、そう簡単には自民党に全面協力はできないでしょう。逆に言うと、有権者からのプレッシャーが効果を発揮するということ。そのうえで、有権者はもう一度、参院選で意思表示することです。自民党が参院でも過半数を失ったら、日本の政治は間違いなく大きく動きます」
「103万円の壁」で手柄をあげたい国民民主の玉木代表は、「政治とカネ」で自民党に協力しかねない。しかし、その時は、有権者からしっぺ返しを受けると覚悟することだ。
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