※2024年211月22日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
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※2024年211月22日 日刊ゲンダイ2面
権力亡者がこうして与党に組み込まれていく典型的な構図(C)日刊ゲンダイ
権力亡者がこうして、与党に組み込まれていく典型例を見るようだ。「政策ごとに」なんて言っているが、だったら、消費税を下げ、インボイスを廃止し、それを当初予算の条件にする度胸があるのか。権力維持しか 頭にない自民の丸のみ無節操にも呆れるばかり。
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衆院選後、与野党による初の本格論戦の場がいよいよ近づいてきた。
林官房長官は21日、衆参両院の議院運営委員会理事会に出席し、臨時国会を28日に召集するとした政府方針を伝達。これを受け、衆院の同理事会は会期について12月21日までの24日間とする日程で合意した。
11月29日に石破首相の所信表明演説、12月2〜4日に衆参両院の各党代表質問を行うほか、野党側が求めている全閣僚出席の予算委員会は5日に衆院、6日に参院でそれぞれ開催する予定だ。
22日決定する新たな経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案は9日から審議入りする見通し。同年度補正予算案の一般会計の歳出規模は13.9兆円程度、民間資金と合わせた対策の事業規模は39兆円程度になるとみられる。
補正予算、事業規模ともに昨年の経済対策を上回り、国の一般会計以外も含む財政支出は21.9兆円規模。対策の主な柱として、住民税非課税世帯に3万円を給付(子ども1人当たり2万円を加算)するほか、来年1〜3月の電気・ガス代の支援や12月末で終了予定だったガソリン補助金を減額した上で年明け以降も継続する--方針が盛り込まれている。
昨年も見られた自公国が足並みをそろえる光景
衆院選で惨敗し、少数与党に転落した石破自民が「最初の関門」とされていたのが24年度補正予算の年内成立だった。
自民、公明両党が「部分連合」を否定しない「ゆ党」の国民民主党を引っ張り込むために「丸のみ」したのが、同党が選挙戦から主張してきた「年収103万円の壁」の引き上げだ。
「政策決定、国会運営で野党の意見を聞き、協力することが基本となる」
おととい(20日)、国民民主と経済対策の合意にこぎつけた自民の小野寺政調会長は満足げな表情を浮かべ、こう説明。合意では、国民民主が長年訴えてきたガソリン減税にも言及したほか、25年度予算案に関する3党の「継続的な取り組み」の重要性も盛り込まれた。
今回と同様、自公国が足並みをそろえる光景が繰り広げられたのが昨年11月。ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」の発動(凍結解除)を訴えていた国民民主に対し、自民の萩生田政調会長(当時)が「(凍結解除の)実現に向けて前に進める」と明言。これを受け、自公国の3党による実務者協議が始まり、国民民主は23年度補正予算案の賛成に回った。
ところが、その後、3党協議は何ら進展がみられないまま分裂。参院予算委で「トリガー条項」発動の可能性を問われた岸田首相(当時)も「適切に対応したい」とはぐらかし答弁を繰り返していたから、今回もどうなるか分からない。国民民主幹部は「補正予算案への賛成は約束していない」と慎重姿勢だが、狡猾自民のことだ。補正予算が成立した途端、ハシゴを外す可能性もあるのではないか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう言う。
「今の状況は、たまたまキャスチングボートを握った国民民主が現在の立場をフル活用している印象です。今後、年収の壁の引き上げ額について自公と国民民主のせめぎ合いが続くことになるわけですが、トリガー条項を巡って決裂した昨年のようにはいかないのではないか。国民民主だけでなく、他の野党も求めている政策もあるからです。自公国に限らず、他党を含めた、こうした動きが来夏の参院選にどう影響するかが注目です」
国民生活のために戦う「野党」か権力にすり寄る「ゆ党」か
一体どこを向いているんだ(C)日刊ゲンダイ
それにしても衆院選で議席を4倍の28議席に増やして躍進したとはいえ、ここ数年の国民民主の動きを見ていると、かくも権力亡者が与党に組み込まれていく典型例を見るかのようだ。
「自民党のアクセル役になりたい」。23年7月。国民民主の玉木代表が福岡市で開いた党員・サポーター集会で「党の立ち位置」に言及。口から出たのがこの言葉だった。
「GX脱炭素電源法」や「改正マイナンバー法」「改正入管難民法」……など、立憲民主党や共産党などの野党が反対した法案に対して次々と賛成。玉木は「政策先導型政党として、政府・与党がいろんなしがらみの中で言えないことを先手先手で打ち出して政策実現させていくのが国民民主の真骨頂。第2、第3自民党になる気はない」と否定していたものの、その政治姿勢はニュートラルな立場を装いながら、時には空ぶかしして他の野党を牽制したり、時には思い切りアクセルを踏み込んだり。
「第2自民党」を公言していた日本維新の会に続き、「第3自民党」と揶揄する声が上がっていたのも当然だろう。
衆院選の公約でも、国民民主は企業・団体献金の禁止には踏み込まず、「戦争を始めさせない抑止力を強化する」として「自衛のための打撃力(反撃力)の保持」を盛り込んでいたから、どう言い繕っても客観的に見れば、裏金自民党の補完勢力。玉木の会見で記者から「隠れ自民党」といった声が飛んでいたのも無理はない。
自公を引きずり降ろして政権交代をするチャンス
そもそも「(部分連合は)政策ごとに」なんて言っているが、そうであれば3党合意にせっかく盛り込んだ「消費税5%への時限的引き下げ」や「インボイス制度の廃止」をもっと強力に打ち出して自公に迫るべきだし、それを当初予算の条件に突きつけてもおかしくはないだろう。
報道各社の世論調査で、石破政権の支持率は3〜4割台と低迷。もはや権力維持しか頭になく、国民民主に抱き付いたのも「藁にも縋る思い」からだ。石破自民の無節操には呆れるばかりだが、裏を返せば今が自公を与党の座から引きずり降ろし、政権交代を実現する絶好のチャンスを迎えていると言っていい。
それなのに、国民民主にはその度胸がないのか、覚悟が見られないというのか。それとも「連立入り」という鼻薬でも嗅がされて及び腰になったのか。いまだに「対決より解決」などと格好をつけ、自公と厳しく対峙する姿勢が見られない。「違う」というのであれば、一部の人にしか恩恵がない「年収103万円の壁」のみにこだわるのではなく、すべての国民が等しく恩恵を受ける消費税の引き下げにドーンと踏み込むべき。それが本当の意味で「キャスチングボートを握った」と言えるのではないのか。
ジャーナリストの横田一氏がこう言う。
「選挙戦で訴えた『年収103万円の壁』の引き上げが予想以上に国民に響き、党勢拡大のアピール、宣伝文句となったため、今も訴え続けているのでしょう。しかし、『財源は政府で考えて』とはあまりに無責任。これでは思い付きの政策だったと指摘されてもやむを得ず、パフォーマンスと受け取られても仕方ありません」
国民生活のために戦う「野党」か、それとも権力にすり寄る「ゆ党」か。その正体が明らかになるのもこれからだ。
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