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※2024年11月21日 日刊ゲンダイ2面
裏金自民に塩を送り、まんまと事実上の連立入りで鼻高々(C)日刊ゲンダイ
案の定、「ゆ党」の本領発揮で、まんまと事実上の連立入りの国民民主。103万円の財源は庶民にツケ回しし、過半数にめどをつけた石破自民。これで企業団体献金もそのまま。腐敗堕落政党が温存、デタラメ経済政策存続では何のための総選挙だったのか。「国民」幹部のニヤけた笑いをマトモな有権者はどう見たか。
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「ゆ党」の本領発揮である。
自民、公明、国民民主の3党の政調会長が20日、政府・与党が22日の閣議決定を目指す総合経済対策に合意した。国民民主が求める「103万円の壁」の見直しは、「2025年度税制改正の中で議論し引き上げる」と明記。ガソリン減税に関し「暫定税率の廃止を含め、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と記載することで一致した。
経済対策の裏付けとなる24年度補正予算案の年内成立や、25年度予算案に関する3党の「継続的な取り組み」の重要性など、与党が重視する内容も盛り込まれた。
また、自民の小野寺五典、公明の岡本三成、国民民主の浜口誠3氏は補正予算案について「年内の早期成立を期する」と記した文書を交わした。浜口は早速、補正予算案への対応について「経済対策が着実に実行されるという条件付きだが、反対することにはならない」と賛成する意向だ。
野党のはずの国民民主は案の定、自公に塩を送る本領を発揮。まんまと事実上の連立入りを果たした格好である。
3党はこれまで5回にわたり協議を重ね、「103万円の壁」を巡っては、国民民主が178万円にまで非課税枠を引き上げるよう要求。侃々諤々の議論が交わされてきたかのようだが、果たしてそうか。「既にだいたいの落としどころは決まっている」というのが、永田町関係者の一致した見方だ。
衆院選で過半数割れし、政権運営がままならない与党・自民と国民民主、財務省のそれぞれの思惑を見れば、どこが「落としどころ」なのか、おぼろげながらに見えてくる。
「自民は政権を安定させるため、とにかく国民民主に補正予算案に賛成してもらいたいのが本音です。一方、国民民主は来夏の参院選に向け『103万円の壁見直し』の実績が欲しい。玉木雄一郎代表が言うように178万円まで非課税枠を引き上げたら、国と地方の税収が約7.6兆円減るとされており、財務省はとても納得できません。何としてでも税収減の幅を減らしたいはずです。今後、3者が妥協できる引き上げ幅を模索するのでしょう」(官邸事情通)
おいしいとこ取りの無責任
手を握った自公国(左から国民民主・浜口氏、自民・小野寺氏、公明・岡本氏の3党幹部)/(C)日刊ゲンダイ
つまり、3者が追い求めているのは国民生活というよりも、「党利党略」。どうすれば身を守れるのか、いかにして得点を挙げるのか--、ということに拘泥しているのだ。
中でも目に余るのは、国民民主の玉木だ。19日夜のインターネット番組で、写真週刊誌にすっぱ抜かれた元グラドルとの不倫問題を巡り、自身の進退に関してこう発言していた。
「ある意味、恥を忍んでいま、代表を務めている。『103万円の壁』の問題等、落ち着いたところで最終的には出処進退を自ら判断する」
ほとんど、代表辞任を明言したに等しい内容である。本当に反省して代表を辞するのだろうか。
「代表を辞めてしまえば、不倫問題で追及される機会が減るはずです。玉木さんとしては、辞任して頭を低くしておこう、という判断でしょう。ただ、国民民主は“玉木党”と揶揄されるほど、彼ありきの政党です。しばらくはほとぼりが冷めるのを待ち、来夏の参院選までに復帰するつもりではないか。代表でなければ、玉木さんの『悲願』といわれる入閣も厳しくなってくるでしょうからね」(永田町関係者)
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「国民民主が来夏の参院選対策で、おいしいところだけ取ろうとしているのは明らかです。『103万円の壁』見直しは、国民にとってプラスで歓迎すべきことでしょう。しかし、玉木氏は財源については『どこから削るかは政府・与党側の責任だ』と言っている。無責任に“果実”だけいただこうという意図が透けて見えます。本気で国民生活を思い、政策実現したいと考えるなら、政権交代を目指すべき。国民民主にはそこまでの覚悟も国家ビジョンもないのだと思います。結局、自民にすり寄って連立入りすることくらいしか考えていないのでしょう」
国民が示した「NO」の民意を形骸化
とはいえ、もちろん最も罪深いのは石破自民だ。
「103万円の壁」見直しによる税収減の穴埋めについては、今後、自公国の3党間で協議される見込みだが、簡単に答えが出るとは思えない。借金漬けの日本に、穴埋めのために回す財源の余裕などないからだ。
大幅な税収減となる地方自治体からは早くも反発の声が上がる。全国町村会会長の吉田隆行広島県坂町長はきのうの町村長大会終了後、報道陣に「地方税収が減れば、行政サービスの低下にもつながりかねない。税収の穴について、政府や国会に、どう対応してもらえるのか心配している」と訴えた。
最終的に赤字国債での対応となれば、結局、負担させられるのは国民だ。つまり、石破自民は過半数を維持するために、財源を庶民にツケ回ししたわけだ。
さらに許しがたいことに、「103万円」に世間の耳目が集まる中、政治改革も骨抜きにしようとしている。
自民は19日、党から議員に支出され、使途の公開義務がない「政策活動費(政活費)」を廃止する方針を決定。今後、与野党協議を経て年内の法改正を目指すという。裏金同然の政活費をやめるというのだが、その一方、党の支出で外交上の機密や支出先のプライバシーにかかわるものは全面公表しないそうだ。それでは、当然ながら政活費の実態は“ブラックボックス”のままである。
加えて、肝心の企業・団体献金については、「憲法で保障されている政治活動の自由だ」(森山幹事長)という理由を盾に、相変わらず手つかずのままだ。“やっているフリ”なのは明らかで、「これからも裏金づくりを続けます」と言っているに等しい。こちらも、裏金政党の本領発揮である。(関連3ページ)
来夏の参院選まで持たない
結局、今回の「103万円」を巡る怪しい“連立”で裏金自民はまんまと延命。賃上げ、地方創生、投資促進……と、総花的で新味ナシのデタラメ経済対策を続ける腐敗堕落政党が温存されても、国民は浮かばれない。「自公過半数割れ」という民意を突きつけた、先の衆院選はいったい何だったのか。
裏金自民に手を貸した国民民主は国民をバカにするのも、いい加減にすべきだ。自公と握ってニヤけた笑いを浮かべる国民民主幹部の姿を、有権者はどう見ただろうか。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「衆院選で国民民主が躍進したのは、『手取りを増やす』という政策だけでなく、『裏金自民を許さない』というスタンスが支持されたからです。にもかかわらず、裏金自民の延命に手を貸しているのだから、有権者の目には『裏切り』と映るはず。衆院選で下した自民への『NO』の民意を骨抜きにする行為ですから、支持を失ってもおかしくありません。国民民主は実績を残したと思っているかもしれませんが、有権者はそんなに甘くないでしょう」
来年の参院選では裏金自民と共に「鉄槌」を下されてもおかしくない。
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