※2024年11月11日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年11月11日 日刊ゲンダイ2面
混迷の時代に必要なのは、刹那の手取りではないはずだ(C)日刊ゲンダイ
与党過半数割れの審判を受けながら、もう何でもありの「取り込み」で、首相指名を受ける石破首相。
30人弱の野党に足元を見られ、政治改革「やってるふり」の芝居を続け、この内政外交の危機を乗り切れるのか。
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先の衆院選の結果を受けて、11日、特別国会が開かれる。衆参本会議で石破首相が首相指名され、第2次石破政権がスタートするが、「惨め」で「悲壮」な船出である。
石破は総選挙で惨敗したのに、政権にしがみつく理由として、またまた「国民を守る」などと言っていたが、なぜ、「信」がない政権に国民を守れるのか。権力を手放したくないだけではないか。その「卑しさ」と、「惨め」な少数与党の「悲壮感」、それらが混在しているのである。
石破は9日、公明党の斉藤鉄夫新代表と会談。年内にも政治資金規正法の再改正案を出す方向を固めた。「政治改革、やってるふり」である。斉藤代表は石破に「けじめをつけて欲しい」と迫ったらしいが、ちゃんちゃらおかしい。ザル法と言われた今夏の法改正に賛成したのが公明だし、総選挙では自民党も公認できなかった裏金議員をイケシャーシャーと推薦した。それなのに、選挙で負けた途端、正義漢ぶる。
もちろん、自民党も同様で、石破は政権維持のために裏金議員を会派入りさせ、過半数確保に死に物狂いだ。「反省してます」とか言いながら、ダブルスタンダードなのである。
挙げ句にそれでも数が足りないから、国民民主の政策をほとんど丸のみ、首相指名では「野田佳彦と書かないで」と“裏工作”だ。
今度の規正法改正も「やってるふり」が関の山
本来、下野すべき政権がヘンテコな大義を持ち出し、無理に無理を重ねてしがみつく。しがみついたところで、脆弱な政権基盤が変わるわけではない。イキがる野党に振り回され、右往左往で漂流する。それが第2次石破政権だ。しかも、そうした近未来が国民にも見えている。ますます、「惨め」で「悲壮」な政権だ。
政治評論家の野上忠興氏はこう言った。
「新たな再改正案には政治資金を監視する第三者機関の設置や政策活動費の廃止などが盛り込まれるのでしょうが、1年で2回の法改正なんて、聞いたことがありません。いかに政治とカネにいい加減だったかの裏返しで、選挙結果を受けて、殊勝な態度を取ったところで、どうせ抜け道があるのだろう、と国民は冷ややかに見ています。実際、企業・団体献金を本気で廃止したら、自民党は干上がってしまう。できっこないから適当なところでお茶を濁す。それが自民党の政治改革の歴史なのです。今回はその限界が国民にも見えた。だから、選挙で鉄槌が下された。公明党も本気で党を立て直すのであれば、自民と袂を分かって、政治とカネのケジメを要求するべきです。中途半端な対応では“またか”と見透かされ、党はもたなくなりますよ」
石破自民は今後、立憲、維新、国民に協力を呼びかけ、これを端緒に与野党の合意形成を目指す算段だろう。
だとしたら、最低限の前提として、裏金議員たちの政倫審弁明はもちろん、安倍派5人衆の証人喚問などは不可欠だ。「謙虚になります」などと言うなら、それをやってからにして欲しい。
「年収103万円の壁」が破談になれば万事休す
石破が抱える難題は政治資金規正法改正だけではない。年収103万円の壁を巡ってスッタモンダしている国民民主との交渉も一筋縄ではいかないだろう。国民民主が求めるように所得税の課税対象を年収178万円まで引き上げれば、約8兆円もの財源不足が生じる。年金や医療などの公的保険に負担が生じる「106万円」や「130万円」の壁もある。玉木代表はこれらについても「抜本改革が必要」と言っている。合わせ技で解決するには大掛かりな議論が必要だ。
「減税はみんな喜びますが、問題は財源です。税金はマンション管理費みたいなもので、安ければ負担は減るけれども管理・サービスも劣化し、マンションの資産価値を落としてしまう。副作用があるのです。玉木・国民民主は財源問題に踏み込んでいない分、無責任な人気取りに見えます。国債発行で賄えば将来世代にツケを先送りだし、防衛費を削るのも相手がトランプ・米国だけに難しい。結局、余裕がある人から苦しい人へお金を回すべきで、資産課税や法人税を増税するしかないと思います。それが石破首相にできるのかどうかが問われています」(経済評論家・斎藤満氏)
石破は総裁選でも金融所得課税の強化を訴えていたが、今は引っ込めている。岸田前首相も当初は勇ましかったが、すぐに撤回せざるを得なくなった。金持ちや大企業に頼っている自民党にしてみれば、資産課税や法人税増税は一種のタブーなのである。
とはいえ、国民民主も来年夏には参院選を控えているので、安易な妥協はできない。中途半端な額で折り合えば、「やっぱり、自民の補完勢力か」と支持者に見限られてしまう。
両者が破談すれば、自民党は予算案を通せない。哀れ、石破は64日間の短命で終わった羽田内閣と同じ運命ということになる。
予算委員会で新大臣が火ダルマになる可能性
「立憲民主党だって侮れませんよ。国民民主にばかり注目が集まれば、参院選を前に埋没してしまう危機感がある。予算委員長ポストを取ったので、全面的な対決姿勢に出るとみています。それでなくても、石破内閣の閣僚は付け焼き刃で決めたから、ロクな身体検査をしていない。三原じゅん子こども政策相ら初入閣が13人もいる。答弁が不安なところに持ってきて、総選挙では2人の大臣が議席を失い、早くも閣僚交代です。予算委員長は答弁者を指名する権限があるので政府委員に代弁させるのではなく、大臣自身の発言を求める機会が増えると思う。新人大臣の立ち往生、醜聞発覚など、時限爆弾ばかりです」(政界事情通)
国会が紛糾すればガラス細工のような政策連合など吹っ飛んでしまう。首相のクビを差し出し、予算案だけ通してもらって総辞職。これまた羽田内閣のパターンとなる。
トランプに本気で対峙できればかすかな活路も
トランプ米国にも搔き回される(C)ロイター
こうなると、石破政権が自民党最後の政権になる可能性だってあるのではないか。石破が退陣しても「次の候補」が見当たらないからだ。公明党もお先真っ暗だから、「自民と無理心中」の流れになっていく。
「石破政権が行き詰まれば、参院選を前に党内からも石破降ろしの動きが出てくる。これも今後の波乱要因です。でも、自民には“これ”といった次のカードがない。分裂しても活路はないので、党ぐるみで沈んでいく。そんな展開ではないでしょうか。自公が下野すれば、毎回、連立がクルクル変わる不安定な政権にならざるを得ない。トランプ米国にいいように引っ掻き回されてしまうかもしれませんね」(野上忠興氏=前出)
内政も外交も八方塞がり、そんな見立てが多いのだが、斎藤満氏は「逆にそこにしか活路はない」と、こう言った。
「トランプ政権が安全保障上の負担増などを求めてきたときに、石破さんがどれだけ踏ん張れるか。交換条件として地位協定の見直しなどを実現させれば、世論も“オッ”となるかもしれない。トランプ大統領はペコペコする人間には畳みかけてくる。逆に強い政治家を評価する。角栄の弟子である石破さんが腹をくくれば活路を見いだせるかもしれません」
とはいえ、これまでも変節を繰り返し、国民の期待を裏切り続けてきたのが石破だ。支持基盤がないから、党内のアチコチに振り回される。今後も安易な妥協、ゴマカシで、その場しのぎの政治を続ければ、あっという間に行き詰まる。その瞬間、自民党政権も終わりを迎える。
すでに世界の政治が混迷、混乱の時代に突入しているが、日本も“仲間入り”ということだ。
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