NYタイムズ紙が「混迷期に入った」と報じた日本政治は今後、どうなっていくのか 日本外交と政治の正体
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2024/11/07 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
我々の誰が、韓国、台湾よりも下位に位置する将来を予想したであろうか…(C)日刊ゲンダイ
衆院選が終わった。定数465議席で、過半数は233議席である。
自民党は公示前の247議席から191議席となった。過半数割れである。連立を組む公明党は32議席から24議席。自公合わせても215議席で過半数に届かない。
2012年12月の総選挙で、自民党は294議席を獲得。自公政権の誕生以降、長く続いてきた自民党の独裁的政治が終焉を迎えたのである。
確かに契機は裏金問題だ。しかし、その背景には「アベノミクス」という言葉に騙され、物価高に苦しみ、生活の困窮を感じ始めた国民の怒りがある。
24年1〜8月のエンゲル係数(2人以上世帯)は28.0%で、1982年以来の高い水準となった。そして米国CIAの「ワールド・ファクトブック」によると、1人当たりGDP(購買力平価ベース)で、日本はG7の中で最下位。それだけでなく、アジアのシンガポール、香港、韓国、台湾よりも下位である。
70〜80年代、日本国民の誰が韓国、台湾よりも下位に位置する将来を予想したであろうか。
日本経済は今、一朝一夕では回復できないほど落ち込んでいる。石破首相の唱える「地方創生」だけで日本経済は立ち直らない。おそらく近い将来、国民が自民党支持に復帰することはない。
公明党は比例区で、05年は898万票を獲得したが、現在は596万票にとどまっており、ここでも自公支配の要因が消滅している。
今選挙の解説で、米ニューヨーク・タイムズ紙は「日本の長期政権政党が過半数を失う」と題し、「日本の政治はここ数年で最も不確実な時期に陥った」と報道。「イデオロギーや大きく異なる政策綱領をめぐって有権者が分裂している他国とは異なり、日本の有権者は、どの選択肢も刺激的ではなかった」としている。
日本が衰退の坂を転げ落ちている中、本来は「対米隷属はやめる」や「企業・富裕層への税負担を増し、その分、大多数の勤労者の手取りを増やす」など、抜本的政策転換を提起する有力政党があっていいはずだ。
自公は多数を確保できなかったが、第2政党である野党の立憲民主が安定した政権をつくれるはずもない。日本政治は今後、国会という「コップの中の嵐」を展開していくのであろう。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
http://www.asyura2.com/24/senkyo295/msg/878.html