※2024年11月2日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
得意の絶頂(C)共同通信社
権力を維持するためならば、悪魔とも手を組むのが自民党。玉木・国民は「今が売り時」とはしゃいでいるが、いずれ、維新も取り込み、「数は確保」の戦略だろう。過去も「コウモリ政党」がうまくいったためしなし。
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衆院選で躍進し、キャスチングボートを握った国民民主党の動向が連日、メディアを賑わせている。玉木雄一郎代表は「今が売り時」とばかりに大はしゃぎだ。
1日は、国民民主の榛葉賀津也幹事長と立憲民主党の小川淳也幹事長に、両党の国対委員長も交えて国会内で会談した。裏金事件を受けて、調査研究広報滞在費(旧文通費)を含む政治改革の進展に向けて協力する方針で一致。週明けには、玉木と立憲の野田佳彦代表による党首会談を開催する方向でも合意した。
会談冒頭に撮影された写真に納まる両党幹部に笑顔はなく、重苦しい雰囲気に包まれていたことが見て取れる。
そりゃあ、立憲が面白くないのも当然だ。前日には衆院選で惨敗した自民と幹事長レベルで会談し、躍進した立憲は後回し。しかも、国民民主は自民との「部分連合」にサッサと応じ、榛葉は11日召集の特別国会での首相指名選挙について、決選投票になっても党として玉木に投票すると自民の森山裕幹事長に伝えた。国民民主が持つ28票は全て無効票となり、石破勝利が濃厚である。
石破政権の継続を後押しし、気分はもはや与党の一員。当初は、首相指名選挙を巡り、立憲からの党首会談の申し入れを突っぱねた。
来夏の参院選を見据え、自らが掲げる政策を与党にのませることで手柄をアピールする腹積もりである。玉木は「オレ様さえよければ」で自民にスリ寄っているわけだ。
「石破延命」批判に思わず目が泳ぐ
野党のフリをして、衆院選で公示前の7議席から4倍増に躍進。選挙が終わった途端、石破の延命に手を貸すなんて、国民民主に票を投じた有権者への裏切り行為だ。
この点を10月29日の会見で玉木に問いただした、ジャーナリストの横田一氏の動画がSNSで話題になっている。
横田氏が「総選挙中に自公過半数割れを目指す。それで政策を実現すると言ってきたのに、なぜ石破政権延命に手を貸すのか」と聞くと、玉木は「延命に手を貸している意識はありません」とそっけなく回答。
タテ続けに横田氏が「なぜ最初から『野田政権』を排除しているのか。『隠れ自民党』と言われても仕方がないのではないか」と突っ込むと、玉木は「いつも貴重なご意見をありがとうございます」と平静を装っていたが、終始、目が泳いでいた。
このやりとりに、SNSでは〈玉木さんが政権交代する気ないことがよく分かる会見〉〈自民党と変わらないですしねこの人〉〈玉木さん、答えになってませんね〉といった声が上がっている。
裏金自民に近づいて、一体どうするつもりなのか。政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「玉木氏は2005年の衆院選に民主党公認で香川2区から出馬。落選した後、地元出身の自民重鎮、大平正芳元首相の親族の協力を得るに至りました。『大平後継』を自称することで09年の政権交代選挙で初当選を果たしている。ですから、政治家としてのDNAが自民党寄りなのでしょう。今は否定していますが、今後、うまく立ち回ることで連立与党に潜り込み、閣僚ポスト、あわよくば総理大臣まで見据えているのではないか。ただ、大平元首相に比べると、いかにも軽く、その任にふさわしいとはとても思えません」
既に見え始めている「隠れ自民党」の一端
国民民主と立憲の幹事長会談は重苦しい雰囲気(C)日刊ゲンダイ
1日は時事通信のインタビューに「今ではない」と言いつつも、首相を目指す考えを隠さなかった玉木。得意の絶頂なのだろうが、浮かれていられるのは今のうちだけだ。
何にしろ、権力を維持するためなら、「悪魔」とも手を組むのが自民党という組織だからだ。1999年、公明党が連立政権に参加する過程で、公明内には慎重論が噴出。当時の神崎武法代表は、自民の野中広務官房長官に「いきなり自公連立政権というわけにはいかず、まず、ワンクッション入れてほしい」と要請した。意を受けた野中はかつて対立した自由党の小沢一郎党首(当時)に、「悪魔にひれ伏してでも」と連立入りを呼びかけたのだ。
この調子だから、今度はいずれ日本維新の会も取り込み、「数は確保」の戦略に着手してもおかしくない。自民にとって、国民民主も維新も「悪魔」どころか「天使」のように見えるに違いない。両党とも、自民の「補完勢力」としての実績は十分だからだ。
衆院選で敗北した維新は目下、馬場伸幸代表の進退を巡って党内はゴタゴタだが、改めて代表選を実施し、新体制が出来上がれば一定の落ち着きを取り戻すだろう。その際、自民が手を伸ばしてきても不思議ではない。
「維新は、来春開幕の大阪・関西万博を何としてでも成功させたい。政府の後押しがないと滞りなく開催できるか不透明で、費用負担の問題もある。万博を人質に取られたら、国民民主のように『部分連合』で協力せざるを得ない場面が出てくるだろう」(維新事情通)
5議席減らしたとはいえ、維新の議席数は38で国民民主を10議席も上回る。維新を取り込めば、国民民主のプレゼンスは下がる。せっかく握ったキャスチングボートも雲散霧消だ。
かつての仲間が予言「弱い者は捨てられる」
過去を振り返っても、与党か野党かハッキリしない「コウモリ政党」がうまくいったためしはない。1976年に結成し、後に自民と連立した新自由クラブや、2009年に発足したみんなの党など、いわゆる「ゆ党」は最終的により大きな政党に吸収され、今や見る影もない。
国民民主も同じ道をたどるのではないか。2年前の通常国会で国民民主は、当時の岸田政権のもとで提出された当初予算案に賛成。異例の判断に至った理由について、玉木はガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の凍結解除に触れ、「ガソリン値下げを岸田総理が検討することを明言し、実現に向けた方向性が明らかになった」と衆院本会議で語っていた。
結局、トリガー条項の凍結解除は岸田自民によってウヤムヤにされてしまったのだが、党所属だった前原誠司選対委員長は、予算案への賛成方針に強硬に反対。周囲に「自民党は公明党を牽制するため、我々を使うつもりだろう。弱い者はいつでも捨てられる。それが永田町の常だ」と憤りを隠さなかったと報じられた。まるで未来を予言するようなセリフである。
前原の言葉通り、玉木の「モテ期」も長くは続かない可能性が高い。前出の横田一氏はこう言う。
「若い有権者からの支持を急速に集めた国民民主ですが、実態が『隠れ自民党』だと明らかになり、掲げた政策も実現できなければ、支持離れも早いでしょう。特に、有権者は自民党の裏金事件に怒り、与党の過半数割れという民意を示したのに、石破政権を延命させるのは国民への背信です。今年の通常国会で、裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡る議論の中で、主要4野党のうち国民民主だけが『企業・団体献金』の禁止に反対しなかった。これは、企業・団体献金をやめたくない自民党への配慮ではないのか。『隠れ自民党』の一端は既に見え始めていると思います」
裏金自民に利用されるだけ利用され、最後はポイ捨てされるのがオチだろう。賞味期限は早々に切れ、来夏の参院選はボロ負けしてもおかしくない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo295/msg/856.html