※2024年11月1日 日刊ゲンダイ1面 紙面クイック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年11月1日 日刊ゲンダイ2面
01人生最大のモテ期に有頂天(C)共同通信社
「総選挙で大惨敗したのに政権にしがみつく石破・自民。なりふり構わず、数合わせに奔走しているが、有権者は呆れ果てている。それが支持率に表れているのに、権力欲に目がくらんでいる野党がいる。「信」を失った政党と組んで「今だけ、自分だけ」の浅ましさ。
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自公過半数割れの衝撃から、まだ4日。せっかく握ったキャスチングボートを早くも手放したも同然である。
総選挙で大惨敗し、自公両党は少数与党に追い込まれた。一方、政権奪取を目指す立憲民主党も他の野党との連携は避けて通れない。多数派工作に焦点が集まる中、与野党からラブコールを送られているのが、4倍増の28議席に躍進した国民民主党の玉木雄一郎代表だ。政治家人生最大の「モテ期」到来と言っていい。
どこか玉木には浮かれたムードさえ感じられるが、勘違いするのもムリはない。つい最近まで衆院わずか7人の少数政党を率いる“地味な存在”に過ぎなかったのに、降ってわいたように永田町の大勢を左右できる立場になったのだ。テレビにも出ずっぱりで一躍、時の人扱い。高まる自身の存在価値に、ついニヤニヤしちゃうのだろう。
しかし悲しいかな、玉木はモテ期を生かしきれていない。チャンスに舞い上がりすぎて有権者の期待を裏切り続けている。不遇な男が何かの間違いで急にモテだすと常軌を失うのと同じ。その最たるものが、首相指名選挙を巡る対応である。
政府・与党は11月11日に特別国会の召集方針を30日野党側に伝えた。過半数なき衆院で召集日に行う予定の首相指名選挙は、30年ぶりの決選投票にもつれこむ公算が大だ。
ところが、玉木は来たる大一番の手の内をサッサと明かしてしまったのだ。
議会制民主主義を軽んじる裏切り行為
上位2人の決選投票は、自民党総裁である石破首相と野党第1党の立憲・野田代表の一騎打ちとなる見通し。
1回目の投票は過半数を得る必要があるが、決選の衆院規則は「多数を得たもの」とあるのみ。要は過半数に満たなくても得票の多いほうが首相に選出されるということだ。
衆院選で自公の獲得議席は215人。早速、無所属で出馬した裏金議員に触手を伸ばし、世耕弘成、萩生田光一、西村康稔、平沢勝栄の4氏に加え、保守系無所属の三反園訓、広瀬建両氏を自民会派に取り込んだ。
ただ、この6人を含めても与党勢力は221人にとどまる。日本保守党と参政党を除く238人(無所属含む)の野党勢力が束になって野田を指名すれば到底かなわない。
即、政権交代が実現するのだが、玉木は「(国民民主は)1回目も2回目(決選投票)も玉木雄一郎と書く」と宣言。決選で「玉木」と書けば、国民民主の28票は単なる無効票となる。その結果、野党勢力の票は自公会派を下回り、政権交代は夢とついえてしまうのだ。
いくら玉木が連立入りを重ねて否定し、「閣僚のポストよりも政策実現が大切だ」と言い繕っても、自公政権の継続を容認したことを意味する。
「衆院選で有権者の負託を受けたばかりの政党が、まず最初で最も大事な判断を迫られる首相指名で無効票を投じるなんて、あり得ない選択です。しかも自公政権に対する国民の怒りの受け皿として、国民民主は議席を大きく伸ばしたはず。民意を踏まえれば、自公政権を下野させるのが筋です。政権の延命に手を貸し、自公を利するのは主権者である国民への裏切り行為に他なりません。玉木代表は議会制民主主義を軽んじるべきではない」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
学習能力ゼロの愚か者がモテるわけなし
助け舟出すのが早すぎる(C)JMPA
総選挙で自公政権を大惨敗させた後も、有権者の怒りは収まっていない。衆院選直後の世論調査の結果にも、その熱情は如実に表れている。
28、29日実施の共同通信の全国緊急世論調査で、石破内閣の支持率は32.1%。政権発足に伴う10月1、2両日調査の50.7%から18.6ポイントもダウンした。同じく28、29日に行った読売新聞の緊急世論調査でも、支持率は34%で政権発足直後の前回51%から急落。内閣不支持率は前回32%から51%へとはね上がり、1カ月足らずで不支持が支持を上回った。
選挙中に石破は「自民の候補者にお灸を据えたいという国民の気持ちが強すぎる」と周囲に漏らしたらしい。断っておくが、有権者は「お灸を据えた」のではない。石破自民の「下野」を求めたのだ。内閣支持率のさらなる下落は自公政権への不信任を物語る。
実際、共同の調査で望ましい政権の枠組みを聞くと「政界再編による新たな枠組み」が31.5%と最多。「立憲民主党を中心とした多くの野党による政権」が24.6%で続き、自公の少数与党政権は18.1%で最少だった。ガタ落ちの内閣支持率よりも低いのだ。
それなのに玉木の「延命措置」で、有権者が最も望まない「少数与党政権の継続」が確定。これで勝者なき衆院選後の政局は、完全に帰趨が決してしまった。ジャーナリストの横田一氏が言う。
「29日の玉木代表の会見で『首相指名選挙で石破政権の延命に手を貸すのか』と問いましたが、玉木代表は『国民民主が(立憲代表の)野田さんと書いても他の野党が乗ってくるのか分からない』などと言い訳に終始。選挙期間中、立憲を中心とした野党による連立政権樹立に動くのかと聞いても、クビを縦に振ることはなかった。玉木代表が『政策実現に全力を傾ける』と豪語するなら、政権を奪取して中枢を担う選択肢もあり得る。ハナから『基本政策が異なる』として立憲の野田代表との協議を拒むのは、自公にすり寄りたいという本音がミエミエ。野党の『ふり』をした有権者ダマシで、玉木代表の権力欲が透けて見えます」
何度フラれても下心ムキ出しで抱きつく
それにしても玉木は助け舟を出すのが早すぎる。「少数与党」は内閣不信任案が可決されるリスクを常に抱え、政権運営は困難となる。1994年に少数与党の羽田政権がわずか64日で総辞職に追い込まれた例を持ち出すまでもなく、石破政権が自壊の道をたどるのは自明の理だ。
ましてや石破は2016年8月に地方創生相ポストから閣外に離れて以来、安倍1強政治下でズッと冷や飯を食わされてきた。苦節8年。セミのごとく日の当たらない場所でジッと耐えてきた石破にすれば、ようやく手にした総理の座をみすみす失うわけにいかない。在任1カ月の「史上最短命政権」の汚名を着せられるのもごめんだろう。
だからこそ政権にしがみつく。なりふり構わず、数合わせに奔走するほど有権者は呆れ果て、ますます民意は離れる。放っておいても早晩、石破は行き詰まり、窮地に追いやられるほど、逆に玉木にすれば「手取りを増やす政策」とやらを高く売り込めるチャンスだ。
そんな駆け引きも考えず、「第一印象から決めていました」と言わんばかりに自公に抱きつけば、下心を見透かされるだけ。いずれ「財源の裏づけがない」と政策をはねつけられるのがオチである。
国民民主はガソリン税を一時軽減する「トリガー条項」凍結解除を自公に迫り、岸田前首相から「検討」を引き出しただけで2度も予算案に賛成。結局、袖にされても進歩なし。「ゆ党」とコケにされようが、他の野党を顧みず「今だけ、自分だけ」良ければで「信」を失った政党と組もうとする浅ましさ。権力への一途な思いだけは伝わってくるが、学習能力ゼロの愚か者がモテるほど世の中は甘くない。前出の金子勝氏はこう言った。
「国民民主は政策実現の財源不足を指摘されながら、総額43兆円に膨らむ防衛費の削減に言及しない。改憲、米国ベッタリの外交・安保、原発容認のエネルギー政策などの考えは自民に似たり寄ったり。くみしやすい存在でしかない。『自民ノー』の民意を国政に反映させる妨げとなり、来夏の参院選に向けた野党共闘を遠ざけるだけです」
何度フラれても総スカン政権にすり寄るおめでたさ。こんな情けない姿を国民民主に貴重な一票を投じた有権者は本気で望んでいたのか。
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