※2024年10月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年10月21日 日刊ゲンダイ2面
和歌山2区で応援演説をする石破首相(C)日刊ゲンダイ
序盤は自公でどうにか過半数、自民単独過半数は微妙だったが、この情勢すら危うくなってきたのか、もう正気を失っている自民党。衝撃的な内閣支持率に連立拡大まで言い出した右往左往に有権者は完全に腹を固めている。
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今度の選挙戦、自民党はやっぱり、「何の反省もしていないのだな」とハッキリわかった瞬間がある。自民党の森山幹事長が18日、和歌山の候補者の応援に入った時のことだ。
「野党の皆さんは政治資金のことだけを言われます。ご迷惑をかけて申し訳ないことだと思います」
こう陳謝した森山は「我々としては党としての処分をさせていただきましたし、またこの案件は刑事事件としては全く事件になっていない案件でございます。そこはご理解をいただきたいと思います」と続けたのである。
断っておくが、刑事事件になっていないは「真っ赤なウソ」だ。旧二階派、旧安倍派の会計責任者は有罪判決を受けている。そのうちの一人、旧安倍派の松本淳一郎被告には禁錮3年、執行猶予5年の判決が下った。執行猶予がついた理由は何か。細谷泰暢裁判長は「派閥幹部らに従わざるを得ない立場で、権限に限界があった」と述べた。つまり、派閥幹部が悪事を続けさせたのであって、会計責任者の逮捕、有罪判決はトカゲの尻尾切りなのである。
それなのに、政治家が逮捕されていないことを金科玉条のように掲げて、「裏金問題はケリがついた」と言わんばかりの神経。会計責任者を人身御供にしておいて、政治家が恥じない厚顔。ついでに言うと、大甘の党内処分の前提となった“形だけ聞き取り調査”を行ったのが当時の総務会長、森山だ。石破政権で幹事長になると、当初、裏金議員の原則公認、比例もOKの方針を打ち出し、押し切ろうとした。おかしいと思ったら、旧森山派でも政治資金の過少記載があって、それを「しんぶん赤旗」にすっぱ抜かれた。
一事が万事で、石破政権が言う「裏金問題の反省」なんて、口から出まかせ、嘘も方便ということだ。石破首相からして、立憲民主党・野田代表との党首討論では「裏金ではない。不記載だ」などと愚にもつかないことを吠えていた。どうにもならない連中ばかりだ。
霞が関と永田町のモラルを崩壊させた自民党
一体、この国に正義があるのか、モラルはどこへ消えたのかと言いたくなるが、そんな中、またまた、目をこすりたくなるような事件が起こった。
裁判所から金融庁に出向していた裁判官があろうことか、自分の口座でインサイダー取引をしていた疑惑である。
問題の裁判官は出向先では課長補佐の30代男性。株式の公開買い付けを審査する立場を悪用して、不正売買を繰り返していた疑いがあり、近く証券取引等監視委員会が東京地検に告発する。法の番人、裁判官の、それもすぐバレるような不正には「どうしちゃったの、この国は?」と言いたくなる。
もちろん、自民党は「俺は関係ねえよ」とうそぶくだろうが、新型コロナの給付金を国からだまし取って、捕まった経産省キャリアのコンビもいた。財務省では組織ぐるみで公文書の改ざんが行われ、役人が自死に追い込まれた。モリカケサクラを筆頭に悪事の限りを尽くした安倍政権以降、永田町、霞が関のモラル崩壊は目を覆うばかりではないか。
選挙情勢は序盤の見立てよりもさらに悪化か
選挙戦の最中に言うことではない(自民党の森山裕幹事長)/(C)日刊ゲンダイ
言うまでもなく、今度の選挙はこうした不正社会をただすことが争点だ。だから、自民党も形だけ「反省」を口にするのだが、森山の例を出すまでもなく、嘘っぱちだということがすぐバレた。結果、選挙情勢はますます厳しく、内閣支持率は政権発足直後なのに28%まで低下。気も狂わんばかりに右往左往しているのが自民党だ。政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「大メディアが一斉に行った序盤の情勢分析では、自公で過半数は得られるものの、自民党は30議席くらいを失い、15年ぶりに単独過半数を割り込むかもしれない、というものでした。こうした見立てに多くの自民党議員は“自公過半数なら下野はなさそう”と安堵したと言いますが、甘いですよ。その後の調査でも復調の兆しはまったくない。さらに悪化しているという分析も多いのです。森山幹事長が20日のNHK日曜討論で連立の枠組みを自公から他党も巻き込む拡大に言及しましたが、与野党が争っている選挙戦の最中に口にする話じゃありません。完全に政局観を失い、混乱している証左です」
森山は20日、連立の枠組みについて「政策的に一致すれば拒むことがあってはならない」などと踏み込んだ。政治資金規正法の衆院採決では共闘した維新、過去には予算案に賛成したこともある国民民主など“ゆ党”を念頭に置いているのだろうが、今から自公過半数割れに備えた“予防線”とは、ヤキが回ったと言うしかない。国民はそこまでして権力にしがみつくのか、と呆れている。政権政党の矜持もかなぐり捨て、下野に怯える自民党はいよいよ、末期的になってきた。
この期に及んで「内輪モメ」の末期症状
そのほかにも、今度の選挙戦での自民党は常軌を逸した言動ばかりが目につく。裏金の反省もなく、口先、形だけでゴマカそうとする国民愚弄。早期解散で逃げ切り画策の姑息。そのうえ、非公認をくらった議員たちは反省どころか、石破執行部を逆恨みしている。犬も食わない「内輪モメ」には自民党支持者すら呆れている。
「取材で各選挙区を回っていますが、自民党は一枚岩で野党と闘っているのではなく、内部分裂していて、むちゃくちゃですよ。総裁選で石破さんに敗れた高市早苗前大臣は当てつけるように裏金議員の候補者の応援に回っています。石破政権は短命とみて、仲間づくりをしているように見える。先日も与野党一騎打ちとなっている新潟5区に入って応援していましたが、ここは裏金で比例名簿から外された自民の高鳥修一さんがいる。その高鳥さんは集会で公然と、自民党のトップ交代に言及した。石破さんが短命だと言わんばかりなので驚きましたよ」(ジャーナリスト・横田一氏)
どんな組織でも敗北を前にすると、責任のなすり合いが始まり、分裂含みとなっていくものだ。いまや、それを地で行く自民党なのである。
自民党ご臨終のカウントダウンが始まる
さらに前出の野上忠興氏は自民党が劣勢をはね返せない理由を「おごりからくる政策無策」と切り捨てた。
「大きな新聞広告で石破首相が“物価高を上回る所得向上を!”とかぶち上げ、“それができるのは自民党だけ”などと訴えていますが、国民はこうした“空想論”に辟易していると思いますよ。“コストカット経済から高付加価値の経済へ”などとも言っていますが、これまでも同じようなことを言ってきたのに、実現できていない。具体的な道筋のない“空約束”にだまされるほど国民はバカじゃありません。まして、最低賃金1500円実現の前倒しなんて、これまでの経済成長率からいってできるわけがない。こうした絵空事で勝てるほど選挙は甘くありませんよ。裏金の反省もなく、適当なお題目でゴマカそうとしている自民党のおごりと危機感の欠落が国民に見透かされているのです。アベノミクスの総括もできず、党内もバラバラの自民党は組織が一丸になるどころか、ますます混乱、錯乱の極みにある。序盤の情勢よりもさらに議席を減らすことになるとみています」
この間、大企業の方ばかりを見て、庶民の生活をないがしろにしてきた自民党が、いまさら、所得向上も何もないのである。それなのに、思わせぶりなことばかりを言う石破。選挙戦後半では「反感」が増していくのではないか。
10.27、自民党はご臨終──。このカウントダウンが始まりつつある。
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