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※2024年10月2日 日刊ゲンダイ3面
発足前からこれだけケチが付くのも珍しい 石破さんには悪いがこの内閣は長く持たない予感【前編】
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/361346
2024/10/02 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
二枚舌が露呈した上に“森山内閣”などと揶揄の情けなさ
石破茂首相(C)共同通信社
第214回臨時国会が1日に召集され、自民党の石破総裁が衆参両院本会議で第102代首相に指名された。
与党側は会期を9日間とすることを提案したものの、野党側は受け入れず、会期が決まらないまま召集日を迎える異例の事態に。すでに暗雲が立ち込め始めた石破内閣の船出だが、それも当然だ。
石破は総裁選で早期解散について、予算委で新政権の姿勢を示した上で国民の信を問う、と強調していたはず。にもかかわらず、総理就任前から「9日解散、27日投開票」をぶち上げたのだから前代未聞。「ぶれない信念」とやらは一体どこに消えたのか。早くも二枚舌が露呈した格好だ。
さらに情けないのは、石破が森山幹事長に頼る場面が目立つとして“森山内閣”などと揶揄する声が出ていることだ。
森山は安倍、菅両政権で国対委員長を歴代最長の4年超にわたって務め、岸田政権では「党4役」の選対委員長、総務会長に就いた。裏金事件では安倍派、二階派議員に対する聞き取り調査の座長を務めた。連立を組む公明党とのパイプもあり、石破は選挙や国会運営などの党務を掌握している森山の「仕事師」としての腕を評価。予算委を経て11月以降の総選挙を考えていた石破に早期解散を進言したのも森山と報じられているから、これでは先が思いやられるばかりだろう。
政治評論家の小林吉弥氏はこう言う。
「森山幹事長が数多くの党役職を経験し、国会対策の調整力があるとはいっても、国民に対して強烈にアピールする何かがあるわけでもなく、何よりも政局観に乏しいと指摘せざるを得ません。石破総理もまた、党の幹事長経験があるものの、やはり鋭い政局観を持っているとは言い難い。党内融和を優先し、森山幹事長の政治力を頼っているのでしょうが、どう進むのか。危うい滑り出しです」
高市一派を潰せるのか、反主流派は来年の参院選後が勝負と手ぐすね
すでに戦闘態勢…(C)日刊ゲンダイ
発足前からこれだけケチが付くのも珍しいが、そんな石破政権の様子を虎視眈々と眺めているのが総裁選の決選投票で戦った「高市一派」をはじめとする反主流派に“転落”した面々だろう。
高市は党の最高意思決定機関のトップである総務会長のポストを打診されたものの拒否。1日、岸田内閣の経済安全保障相として最後の会見に臨んだ高市は「一議員としてしっかりと党内で発言する」と言って不敵な笑みを浮かべていた。
同様に総裁選を戦ったコバホークこと、小林元経済安全保障相も、選挙の公報戦略などを担う広報本部長のポストを拒否。理由について「仲間にポストを譲りたい」と語ったと報じられていたが額面通りに受け取る国会議員は皆無だろう。
高市も小林もそろって「石破政権には協力しない」と“宣戦布告”したに等しいわけで、そんな反主流派がまず注目しているのが今度の総選挙だ。
前回(2021年)の衆院選で、自民は単独過半数(233議席)を確保し、国会運営を有利に進めることができる「安定多数」(244議席)も押さえた。
選挙の結果、仮に自民の単独過半数割れや、自公でギリギリ過半数を維持といった状況になれば石破の責任論を問う声が強まるのは間違いない。
そして衆院選でつまずいた石破政権を内部から揺さぶり、後ろから機関銃を撃とうと待ち構えている有象無象の連中がワンサカ出てくるわけだ。
党内では、すでに勝負は来年夏の参院選後とみて、「8月2日総裁選」といった声も漏れ始めているから、シナリオ通りに進んだ場合、この内閣は短命で終わる予感しかない。
「今度の衆院選で自民がどこまで議席を確保できるのか。石破政権の命運はそこにかかっています。わずかな減少であれば火ダネを抱えながらも辛うじて続くが、大きく減らすことがあれば石破おろしとはいかないまでも、石破離れは確実に進むことになるでしょう」(小林吉弥氏=前出)
いきなり大風呂敷 安保・防衛で足をすくわれる予感
日米地位協定の行方は(C)共同通信社
早くも石破政権の“命取り”になるのではないか、と囁かれているのが、総裁選の時、石破が大風呂敷を広げた「安保・防衛問題」だ。
「アジア版NATO」の創設にはじまり、日米地位協定の改定、さらに、アメリカ本土に自衛隊の訓練基地を置くことも提案している。
9月17日、那覇市で開かれた演説会では、こう訴えている。
「日米地位協定は、少なくとも見直しに着手すべきだ。主権国家の責任を果たしていかなければいけない」
在日米軍の地位や権利を取り決めた「地位協定」は、不平等協定の最たるものだ。米兵が重大事件を起こしても、日本には捜査権もない。地位協定があるため、在日米軍はなかば治外法権となっている。
さらに石破は、米シンクタンク・ハドソン研究所のホームページ上で外交政策に関する論文を発表。
「『非対称双務条約』を改める時は熟した」として、アジア版NATO創設や、日米安保条約・地位協定の改定を提唱している。
不平等な「日米地位協定」の改定を目指すのは当然のことだろう。米軍基地を抱える自治体も、日本の主権が制約を受ける地位協定の改定を求めつづけている。しかし、どんなに要望しても改定されないのは、アメリカが絶対に認めないからだ。
問題は、石破に、アメリカに「イエス」と言わせるシナリオがあるのかどうか、ということだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルは「アメリカとの間に起こりうる緊張関係を予感させる」と伝えている。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「アジア版NATOも、地位協定の改定も、アメリカは簡単にイエスと言わないでしょう。石破首相の政治手法はあまりに稚拙です。まず、トップ同士の信頼関係を築き、水面下で地ならしをしてから進めるのが外交なのに、いきなりブチ上げている。石破さん本人は、ハドソン研究所への寄稿が地ならしだったのかも知れませんが、アメリカは唐突に感じたでしょう。このまま石破首相が突っ込んだらアメリカとの間で摩擦が生じる可能性があります」
かといって、公約に掲げた「地位協定の改定」を断念したら、国内から不満が噴出するのは間違いない。
野党に格好の攻撃材料を与えた 早期解散は裏目に出る
簡単ではない(C)JMPA
「メッキがはがれる前にやるしかない」──と、「10.9解散、27日投開票」という超短期決戦に突っ走った石破政権。
3年前、岸田前首相も「ご祝儀相場」がつづいていた就任直後に解散に踏み切り、まんまと単独過半数を確保している。
しかし、この早期解散は裏目に出るのではないか。国民を裏切るものだからだ。
総裁選の時、石破は解散時期について「早ければ早い方がいい。でも、ご判断いただく材料は整えたい」「国民に判断していただける材料を提供するのが、新しい首相の責任だ。本当のやりとりは予算委員会だと思う」と明言していた。野党と論戦をかわしてから、解散するとしていた。
なのに、野党から追及されることを恐れ、約束した予算委員会も開かず、総理就任後わずか8日で解散してしまうのだから、さすがに国民の多くは「話が違うじゃないか」と、不信を強めているに違いない。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「石破さんの国民人気が高かったのは、常に『正論』を唱え、筋を通す政治家だとみられていたからでしょう。どこか不器用で策も弄しないタイプだった。ところが、トップに就いた途端、変節し、党利党略で動いている。国民は『石破、おまえもか!』という気分だと思う。選挙は相手次第ですが、石破さんの、この変節は明らかにマイナスでしょう。石破さんの良さが消えてしまった。それでなくても、裏金事件と統一教会問題を抱えた自民党には、逆風が吹いている。石破さんは、裏金議員の公認について『徹底的に議論する』としていたが、もう公認を再検討する時間もないのではないか。世論調査では、裏金議員の公認を8割が『納得できない』としています。このまま公認したら、それも逆風になりますよ。世論調査では、石破首相に『期待する』52%、野田党首に『期待する』49%と拮抗しています」
自民党議員は「選挙が1週間遅れるごとに自民は15議席減る」と、早期解散の大合唱だったが、この早期解散は、自民党のクビを絞めることになってもおかしくない。(後編につづく)
http://www.asyura2.com/24/senkyo295/msg/624.html