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※2024年9月30日 日刊ゲンダイ3面
ボロが出るから早期解散…仰天人事の石破新内閣 波乱の幕開けと舞台裏【後編】
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/361233
2024/09/30 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
まるで防衛相内閣、経済無策人事の不安
中谷元防衛相(左)と小野寺五典政調会長(C)日刊ゲンダイ
岩屋毅外相、中谷元防衛相、そして党4役に小野寺五典政調会長。いずれも防衛相経験者で、国防族のインナーだ。安全保障政策通を自任する石破の初人事は、こだわり分野に似たようなスペックの同志で固めた。ちなみに、留任する林もショートリリーフではあるものの、防衛相を務めた時期がある。
間もなく発足する石破政権は、平たく言えば防衛相内閣だ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう指摘する。
「安保政策に全乗りし、前評判通りの経済オンチを露呈した印象です。石破氏は総裁選で〈5つの『守る』〉というスローガンを掲げ、『ルール』『日本』『国民』『地方』『若者・女性の機会』を守ると訴えた。世論調査では物価高や景気対策を求める声が大きいのに、項目立てをせず、『国民を守る』の中で物価に負けない賃上げの実現を目指すとした程度。経済政策のプライオリティーが低いのです」
財政金融政策の要である財務相には、総裁選で争った加藤勝信元官房長官を充てる見通し。元大蔵官僚だ。岸田首相の負の遺産である防衛増税は待ったなし。財務省に主導権を握られ、ゴリゴリ押し込まれる事態が容易に想定される。
「立憲民主党の野田佳彦代表が首相時代もそうでしたが、独自ビジョンを持たないことから財務省におんぶに抱っこ。結果、消費増税の道筋をつけてしまった。石破氏の言動は、44日間で辞任に追い込まれた英国のトラス元首相も想起させます。財政出動と金融引き締めを同時に実施しようとしたため、株式、債券、通貨のトリプル安を引き起こした」(五野井郁夫氏=前出)
財政規律を重んじる石破は当初、金融所得課税の強化や法人税の引き上げなどを主張していたが、総裁選出後に円高に振れると、株安懸念から発言を後退させた。生出演した29日のNHK「日曜討論」でも、日銀の追加利上げについて「政府としては、今の経済状況で金融の緩和傾向はなお維持していかなければならないと思う」と火消しに躍起。だが、あぶはち取らずは歴史が証明している。
岩屋外相で日米地位協定の見直しができるのか
LGBT差別解消や選択的夫婦別姓にも積極的(C)日刊ゲンダイ
軍事オタクの石破は国防にひとかたならぬ意欲を燃やしている。早くも国内外で物議を醸しているのが、日米安保条約の改定と日米地位協定の見直し。さらにアジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設、核共有だ。
安保条約に基づく地位協定は、在日米軍の特権的地位や権利を取り決めたもの。米軍による事故が全国で頻発しようが、米軍基地の7割が集中する沖縄県で凄惨な事件が繰り返されようが、締結から64年間、ただの一度も改定されたことがない。戦後79年を経ても、日本が米国の植民地と揶揄されるゆえんだ。それに手を付け、改善できれば、石破は歴史に名を刻む名宰相になるだろう。だが、とんでもない方向へ走ろうとしている予兆がある。
石破は総裁選出に先立ち、米シンクタンクのハドソン研究所に「日本の外交政策の将来」と題した論文を寄稿。安保条約の「非対称性」に触れ、米英同盟並みの対等な関係への引き上げのほか、地位協定改定による米軍基地管理への関与、米国に自衛隊の訓練基地設置などを訴えている。
「国際政治学の視点からすれば噴飯ものです。いずれも実現性がなく、憲法9条との整合性が取れない。海外の軍隊受け入れに積極的な国はまずありませんし、米国の主権侵害にもつながる。党内ウケと改憲機運の醸成が狙いとしか思えません」(五野井郁夫氏=前出)
石破外交の一端を担う岩屋外相は、陣営の推薦人代表を担った盟友。石破同様に国防族インナーではあるものの、穏健派だ。平和な貿易立国を目指す「小日本主義」を提唱して対米従属からの自立を目指した石橋湛山に共鳴し、超党派議連の共同代表を務める。本紙インタビュー(2023年10月6日付)でこう話していた。
「湛山は繰り返し、日本は軍事的な拡張主義を放棄して自由貿易立国として生きていくべきだと主張していました。その思想が正しかったことは戦後日本の歴史が証明しています」
どうもかみ合わない。石破暴走のブレーキ役を期待されているのか。
高市固辞で挙党態勢は波乱だが、そもそも打診が大間違い
“高市封じ”は失敗(C)共同通信社
波紋を広げているのは、高市経済安保相を巡る人事だ。石破が打診した党総務会長就任を固辞。本人は閣僚も受けるつもりがないという。挙党態勢にケチがついた格好だ。
「高市さんは『幹事長一択』の意向で、それ以外は受けないとかたくなです。12年の総裁選では、安倍元首相と石破さんによる決選投票となり、安倍さんが逆転勝利。その際、安倍さんは石破さんを幹事長に起用した経緯がある。だから、高市さんも幹事長に、というわけです」(自民党関係者)
石破側にはこんな思惑があったようだ。
「高市さんは保守層から熱烈な支持を得ていることもあり、内閣がつまずいた時に一気に『石破降ろし』の流れをつくり得る存在です。だから、石破さんは役職につけて取り込んでおくべきと考えたのでしょう。それも、私見を捨てて党のまとめ役に徹しなければならない総務会長に就ければ、自由な発言も封じ込められる。“高市封じ”です」(官邸事情通)
しかし、高市といえば、総裁選中に首相就任後も靖国神社への参拝を続けると明言したうえ、中国脅威論をことさら強調。危機をあおってみせた。
そんな人物に要職を与えてどうする。
「タカ派発言を繰り返す高市氏を要職に起用すれば、日本は『戦争できる国』にさらに近づきかねませんし、周辺国にも誤ったメッセージを送ることになる。特に、最近は日本周辺でキナ臭い動きが頻発しています。今月下旬にはロシア軍機が、先月下旬は中国軍機が日本の領空を侵犯。日本の海上自衛隊も7月に中国領海を一時航行していたことが分かっています。こうした状況の中、彼女を起用すると周辺諸国を刺激するだけ。打診自体が間違いでしょう」(金子勝氏=前出)
今後、高市は非主流派として動くだろう。石破にとってやっかいな存在となりそうだ。
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