※2024年9月20日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
不信任決議が全会一致で可決、退場する斎藤元彦兵庫県知事(C)共同通信社
斎藤知事は連日、袋叩きだが、この知事を担いだ維新も暇さえあれば逮捕者を出す破廉恥集団。そして、犯罪者の多さで負けちゃいないのが自民党。安倍以来のモラル低下のなかで、知事が辞めないのは「俺だけじゃない」の居直りか。
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ついに万事休すか──。パワハラ、贈答品へのおねだり、疑惑を告発した県幹部の自殺。兵庫県政を大混乱に陥れながら、地位に恋々としてきた斎藤元彦知事が、19日開かれた県議会の本会議で、不信任可決に追い込まれた。
不信任決議案は全会派が共同提出し、86人の県議全員が賛成の白票を投じる全会一致で可決。県議らから「繰り返される自己正当化」「人権意識は皆無」など、知事としての資質を問う言葉が次々と浴びせられた。続投への意欲を見せ続けてきた斎藤は、投票が行われている間、口を固く結んで前方を見続け、可決後も無表情のままだった。
簡単に一連の問題を振り返ると、県西播磨県民局長だった男性が今年3月、知事の疑惑7項目を告発する文書を作り、報道機関や県の公益通報窓口に通報。県は内部調査を進め、文書を誹謗中傷と認定、局長は停職3カ月の処分を受け、7月に死亡した。
県議会は6月に、強い調査権限のある「百条委員会」を設置。局長が作成した告発文書の事実確認などを行った。証人尋問で斎藤はパワハラを認めず、全議員による辞職要求も拒否。その結果、きのうの不信任可決となったわけだ。
この先の世間の関心は、不信任可決を受け、斎藤がどう動くのか、である。地方自治法は不信任となった知事について、10日以内に議会を解散しない限り失職すると規定している。
斎藤の選択肢は4つ。@自ら責任を取って辞職A議会を解散せず失職B議会を解散して続投C議会を解散したうえで辞職。
議会を解散すれば40日以内に県議選が行われ、辞職や失職の場合は50日以内に知事選となる。解散と同時に辞職すれば、知事と議会のダブル選挙だ。斎藤が再び知事選に出馬すれば「出直し選挙」となる。一方、議会を解散して続投したとしても、県議選後の議会で再び不信任となれば、即時失職する。
斎藤は、どれを選択するのか。きのう報道陣に囲まれると「結果責任は重い」とは言ったものの、「しっかり考えたい」と態度を明らかにしなかった。
現地で取材を続けてきたジャーナリストの横田一氏はこう見る。
「不信任案が可決された後のぶらさがり取材でも、斎藤知事は議会の解散は『選択肢』だと答え、発言は今まで通りでした。斎藤知事は、いまだもって、いわれなき誹謗中傷を受けている、自分は嵌められたという意識です。失職や辞職ではなく議会を解散し、県議選と同時かその後か分かりませんが、出直し選挙を選ぶ可能性があると思います」
維新と自民に問われる製造物責任
自民も維新も同じ穴のムジナ(C)日刊ゲンダイ
兵庫県政の混乱は半年近く続いている。懲戒処分を受けた局長だけでなく、昨年のプロ野球阪神・オリックス優勝パレードを担当し、告発文書で疲弊が指摘されていた職員も亡くなっていたことが明らかになってもいる。誰が見ても知事が辞職やむなしなのは間違いなく、メディアも連日、斎藤を袋叩きにしてきた。
しかし、ちょっと待て、と思うのは、そんな斎藤を3年前の知事選で推薦した日本維新の会と自民党の責任である。
不信任可決を受け、維新の藤田幹事長は、19日早速、斎藤が辞職・失職した後の知事選を想定して「独自候補」の擁立を選択肢として検討するとか言っていた。だが、そんな資格があるのかどうか。維新は暇さえあれば逮捕者を出す破廉恥集団じゃないか。
維新の不祥事は過去に報じられただけでも、ひき逃げ、ヤミ献金、泥酔暴行、傷害、談合有罪、公然わいせつ、DV、児童買春、政務活動費の不正使用などなど。女子中学生を恐喝なんてのもあった。
つい最近も、「維新の元衆院議員が東京・歌舞伎町のカラオケボックスで中1女子に不同意性交の疑いで逮捕」という驚愕の事件があったばかりだ。千葉市議会では、市民から議会への請願を「自作自演」で捏造する維新市議2人まで現れ、辞職勧告決議を受ける始末。そんな維新が、どの口で斎藤を攻めるのか、なのである。
前出の横田一氏はこう話す。
「維新は手のひら返しをやめたら、と言いたい。内部告発した局長が自殺した一因として個人情報漏洩が問題になりましたが、維新はそれに関わった“共犯者”の疑いが持たれている。総務部長が個人情報を維新の県議に見せ、それが維新の国会議員に伝わった。不信任で知事に辞職を求めるのなら、維新の県議だって辞めるべきです。維新には斎藤知事を誕生させた製造物責任がある。馬場代表も当初は知事をかばっていました。それが箕面市長選で維新の現職が敗れたことに衝撃を受け、知事に辞職を求める方針に転換した。維新のセコさが露呈しました」
支配欲全開の政治を正当化
自民党だって同じ穴のムジナだ。維新がグズグズする中、斎藤に辞職を要求する逃げの早さを見せていたが、製造物責任は免れない。
それに、犯罪者の多さでは自民は維新に負けちゃいない。この1カ月だけでも2人が起訴された。違法な香典を配った公職選挙法違反などの罪で、罰金と公民権停止3年の略式命令を受けた堀井学前衆院議員は有罪が確定。広瀬めぐみ前参院議員は秘書給与搾取で起訴だ。
2020年以降、元職を含む国会議員が14人起訴されているが、そのうちの13人が自民党出身者なのである。
だいたい、派閥パーティーをめぐる裏金事件は、党ぐるみの世紀の組織的犯罪じゃないか。自民党についても、どの口が斎藤を糾弾できるのか、というのが正直なところなのである。
ジャーナリストの斎藤貴男氏が言う。
「分かりやすいターゲットを見つけて、ここぞとばかりに叩くと、相対的に他の人は許される。そんな構図が出来上がっているように思います。バッシングは政治家がやっているだけでなく、メディアも乗っかり、視聴者が喜ぶことで、増幅されていく。その結果として、他の悪事がカムフラージュされるのです。いま行われている自民党総裁選は、裏金事件で支持率が下がった責任を取って岸田首相が退任を決めたわけですが、自民党議員の劣化も著しいのに、どうもメディアの追及は弱い。『あいつらにマトモなことを求めても仕方ない』ということなのか。それでは自民党の思うつぼです」
「モリカケ桜」の安倍政権で自民は徹底的にモラルが低下した。裏金事件で長年の膿が噴出しても、実態解明も説明責任も果たさず、脱税を指摘されても知らんぷり。ここへきて、安倍政権時の自民党と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の癒着を朝日新聞が再燃させているが、他の大メディアは静観。一方で、兵庫県知事へのバッシングのように、落ちた犬は安心して叩くのが日本のメディアだ。ならば、同じように自民や維新の厚顔無恥の政治家たちを、もっと叩いたらどうなのか。斎藤がすんなり辞めないのは「破廉恥政治家は俺だけじゃない」の居直りだろう。
「パワハラやおねだりの問題以上に、今回の兵庫県知事の一件で嫌な気分になるのは、歪み切ったエリート意識が見えることです。これって、因果関係は証明できないけれど、安倍政治の負の遺産なのではないか。自民党総裁選の候補で言えば、河野太郎デジタル相が特に顕著ですが、自らの支配欲を満足させる振る舞いを露骨に出すことが正しい政治だと思っている。そんな政治家が増えているように思います」(斎藤貴男氏=前出)
いつからこんな国になったのか……。犯罪者や不適格者だらけの政治なんてまっぴらごめんだ。
http://www.asyura2.com/24/senkyo295/msg/555.html