※2024年9月19日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字起こし
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※2024年9月19日 日刊ゲンダイ2面
裏金にも旧統一教会にも蓋をするこの連中に「信頼回復」など出来るわけがない(C)日刊ゲンダイ
朝日のスクープ写真に「無視」を決め込んだ岸田首相、総裁選候補者たちと他のメディア。露骨な疑惑封じだが、この後には形だけみそぎ選挙を控えているのだから、再調査などやるわけがない。そんな連中が「信頼回復」などと言い、付け焼き刃で「国家観」「憲法観」を語るマンガに国民は辟易。
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改めて浮かんだカルト教団との蜜月関係も、シレッと無視してやり過ごす気のようだ。自民党と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関係のことである。
2013年の参院選直前、当時の安倍晋三首相が教団会長らと自民党本部の総裁応接室で面談をしていた問題。特報した朝日新聞によると、面談では安倍と教団の徳野英治会長らは、自民党比例区候補の北村経夫・現参院議員の当落予想のやりとりをした。安倍は教団側に選挙支援を要請する言葉を伝えたそうだ。朝日は、面会に安倍の実弟・岸信夫元防衛相と萩生田光一前政調会長も同席する写真を掲載。密談の実態を示す動かぬ証拠である。
こうした“トップ会談”の甲斐あってか、北村は同参院選で初当選。組織ぐるみで蜜月関係を築いていたのは明白だ。自民党は2年前、教団や関連団体と所属議員の接点などを巡る点検結果を公表。半数近い議員に教団側との接点があったことが分かったが「党として組織的な関係はない」と繰り返してきた。今回の報道で、この説明が真っ赤なウソだとハッキリした格好だ。
当然ながら再調査が必須である。ところが、岸田首相は「国会でたびたび説明させてもらった。ぜひそれを確認してもらいたいと思っており、今の段階でそれに付け加えることはない」とガン無視だ。
岸田は先月の退陣表明会見で、統一教会の問題について「国民の政治不信を招く事態」とした上で「私が身を引くことでケジメをつけ、総裁選に向かっていきたい」と発言。ならば、総裁選のさなかの今、最後のケジメとして再調査すべきではないのか。これまで、点検後に教団との接点が発覚した議員が続出してきたのに、一切、調査に踏み切らなかったところを見ると、ハナからヤル気などないのは明らか。「さっさと終わらせて逃げたい」が本音だろう。
「再調査するか」の問いに全員沈黙
自民党総裁選の候補者も軒並みダンマリである。17日のTBSの番組では、司会者から統一教会との関係について「総裁になった場合、再調査を行う方は挙手を」と求められたが、画面に映し出された9人の候補は一様に黙りこくった。「若手のホープ」ともてはやされる小泉進次郎元環境相と小林鷹之前経済安保相に至っては、揃ってテーブルの上で固く両手を組み、不自然なほどの無表情で虚空を見つめ続けていた。
林芳正官房長官は同日の時事通信などのインタビューで「(2年前の点検時の)条件や背景を超えて調査しなければならないことになれば、やぶさかではない」としたものの、「今は報道が出た段階なので、何かやらなくてはならないという段階ではない」と、やはり後ろ向き。大メディアも踏み込んで報じる様子はない。
露骨な疑惑封じだが、彼らがこんな態度をとるのも当然と言えば当然である。総裁選で新たな「選挙の顔」を選び“刷新感”を示した上で、早期に衆院解散に踏み切る。議席を維持して勝利することで「みそぎ」とし、教団問題を過去のものにする腹積もりだ。再調査などして新たな不祥事を“発掘”してしまえば、戦略に狂いが生じかねないわけだ。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「教団問題については、クサいものに蓋をして、さっさとリセットしたいというのが自民党の本音でしょう。裏金問題を巡っても同じことが言えます。総裁選の候補者は使途報告義務のない『政策活動費』の廃止に言及していますが、肝心の企業・団体献金の是非には触れず、何より重要な実態解明に関してはほとんど話題にすらしない。教団と裏金を徹底的に隠して、次期衆院選で勝てば国民は忘れると高をくくっているのでしょう」
解散総選挙で「疑惑リセット」は自民の常套手段
再調査にダンマリで選挙でさっさとリセット(C)日刊ゲンダイ
そんなヨコシマな連中が総裁選で「党の信頼回復に全力を挙げる」などとのたまっているのだから、国民も呆れ返っているのではないか。
候補者の公約も付け焼き刃だ。
茂木敏充幹事長は、防衛費倍増や少子化対策強化に伴う保険料の追加負担を「ゼロにする」と荒唐無稽なことを言いだし、進次郎は“クビ切り自由化”と悪評ふんぷんの「解雇規制の緩和」に言及。高市早苗経済安保相はこのインフレ下で「日銀の追加利上げに反対」などと言っているのだから、フザケている。
9人の候補が揃って口にするのは「改憲」だが、次期衆院選を見据え、岩盤保守層へのアピールがあるのは明らかだ。
「総裁選の候補者は、とにかく統一教会と裏金の問題以外なら何にでも言及している印象です。教団や裏金に国民の視線が向かないようにするために、あえて『負担ゼロ』や『解雇規制の緩和』といった賛否が割れる話題に触れているのではないか。闊達な議論が交わされているかのようにも見えますが、その狙いは結局、疑惑封じなのでしょう」(金子勝氏=前出)
つまり、総裁選で展開される議論は疑惑を隠すためのショーでしかないということ。そんな見せ物の“演者”たちが「国家観」「憲法観」を語るなど、まるでマンガである。
浮上する「10.27」総選挙
このまま、衆院選になだれ込み、疑惑をリセットするなど決して許されない。ところが、早速、早期解散に向けた動きが出てきている。自民党の浜田靖一国対委員長が18日、立憲民主党の安住淳国対委員長と会談し、次期首相を選出する臨時国会を10月1日に召集する日程を示した。これが早期解散への布石とみられている。
「秘書給与を詐取した罪で在宅起訴された広瀬めぐみ前参院議員の辞職に伴う補欠選挙が10月27日に実施される。自民党は候補擁立を見送り『不戦敗』が確定していますが、『敗戦イメージ』を薄めるため、衆院選を同日に実施すべきとの声が党内では根強い。10月1日の臨時国会召集の場合、すぐに所信表明演説や代表質問を行い、第2週の早い時期に解散に踏み切れば、『10月15日公示、27日投開票』は実現できる。そのため『やはり早期解散か』と囁かれているのです」(永田町関係者)
こんな手口は今に始まった話ではない。解散総選挙によるリセットは、自民党にとって常套手段と言える。
安倍政権の14年、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定により内閣支持率が下落。すると安倍は「アベノミクス解散」と意味不明な理由で解散総選挙に打って出た。17年にはモリカケ問題で政権が大炎上する中、突然、北朝鮮の脅威をあおり立て「国難突破」を大義に再び解散に踏み切った。いずれも批判を吹き飛ばすことに成功したのだった。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「そんなバカバカしいやり口に国民は気付き、呆れているに違いありません。統一教会の問題を巡っては、時の政権トップが教団幹部を総裁応接室に通すという異常さがハッキリしました。自民党の『調査しない』姿勢に納得できる国民は少ないでしょう。未曽有の裏金事件への対応についても同様です。国民をだませると思ったら大間違いです」
解散総選挙ができるものならやってみろ、である。待っているのは国民の鉄槌だ。
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