ロシアとの戦争へ向かう欧州委員会
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2024.09.22 櫻井ジャーナル
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は9月17日に欧州委員候補を発表、新設の軍事担当にはリトアニアの元首相、アンドリウス・クビリウスを起用した。この人物は激しくロシアを敵視、6年から8年後までにロシアとの軍事対立に備えるべきだと語っている。
しかし、バラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けた2014年2月の時点でアメリカはロシアに対する軍事作戦を本格化させたと言える。2022年2月以降、ウクライナにおける戦闘はロシアとNATOの衝突という様相を強めてきた。2022年の段階でアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官はロシアと直接的な軍事衝突を始めようとしている。
2022年から本格化したロシアとNATOの衝突はロシアが圧倒的に優勢だということは本ブログでも繰り返し書いてきた。クビリウスが6年から8年後と言っているのは、態勢を立て直すのにそれだけの時間が必要だということだろうが、その間、ロシアが漫然と眺めていることはないだろう。
リトアニアを含むバルト三国や北欧諸国ではソ連消滅後にナチズムが復活、ロシアとの戦争に備えるように訴える声が高まっている。リトアニアではロシアとの「危機や戦争が起こったらどうするか?」と題された一般市民向けのリーフレットが9月と10月に配布されるようだ。
この地域は北方神話の影響を受けているが、1918年にドイツで創設されてナチスの母体になったトゥーレ協会も北方神話と関係が深い。
その名称は北方神話の土地、ウルチマ・トゥーレに由来し、そのシンボルはナチスと同じ鉤十字だった。フィンランド空軍が現在でも鉤十字を使用している背景も同じだ。トゥーレ協会が母体となり、1919年にドイツ労働者党が結成され、その翌年には国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)へ改称された。アドルフ・ヒトラーが指導者となったのは1921年からだ。
トゥーレ協会の源流はゲルマン騎士団だとされている。この騎士団から派生した秘密結社だということもあり、メンバーには多くの貴族が名を連ね、人種差別的な雰囲気を漂わせていたという。
リトアニアは16世紀から18世紀にかけてポーランドとポーランド・リトアニア連邦を構成、その領土が最も広かった1600年当時の復活を夢見る人びとがポーランドにはいる。このバルト海と黒海に挟まれた中央ヨーロッパにはカトリック教徒が多く、カトリックの帝国を作ろうという動きとつながり、インテルマリウム構想に発展した。
こうした運動があったことから第2次世界大戦の終盤からカトリック教会はナチスの幹部や協力者を逃す工作に協力していた。その工作を仕切っていたのはウォール街人脈、その象徴的な人物がアレン・ダレスである。
ウクライナにはOUN(ウクライナ民族主義者機構)なる組織があった。当初はポーランド人のグループとプロメテウス同盟なる運動を展開していたのだが、途中で分裂、イェブヘーン・コノバーレツィなる人物を中心としてOUNが創設されたのだ。
コノバーレツィが暗殺された後、アンドレイ・メルニクが組織を引き継ぐが、この新指導者は穏健すぎると反発するメンバーが若者を中心に現れる。そうしたメンバーは反ポーランド、反ロシアを鮮明にしていたステパン・バンデラの周辺に集まった。このグループはナチスや米英の情報機関と手を組みながら生き残り、現在、ウクライナをナチズムに基づいて支配している。バンデラの信奉者はウクライナの西部を拠点にしているが、決して人数は多くない。
ウクライナの西部はカトリックの影響が強いが、東部や南部は東方正教会の影響下にある。一般市民の間では大きな問題ではなかったが、欧米の支配層はこの違いを利用し、仲違いさせようとしている。ウクライナのクーデター体制が東方正教会を禁止した理由もそこにある。
ネオコンをはじめとする西側の好戦派はウクライナでロシアと戦争を始め、中東ではイスラエルを支援して再び影響力を強めようとし、東アジアでは中国との戦争へ向かっている。東アジアでアメリカ国防総省が戦争の準備を進め、日本も1995年からアメリカの戦争マシーンに組み込まれたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。
日本をアメリカの戦争マシーンに組み込む計画は1992年2月には出来上がっている。ネオコンをはじめとするアメリカの一部支配層は1991年12月にソ連が消滅した後にアメリカが唯一の超大国になったと信じた。
それを前提として世界制覇プロジェクト、いわばパックス・アメリカーナを築き上げる戦略を1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案として作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。それ以降、アメリカでは大統領が交代してもこの戦略に基づいて動いている。
このドクトリンを作成した時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、最高責任者は国防長官だったリチャード・チェイニー、執筆の中心人物はポール・ウォルフォウィッツ国防次官、そしてI・ルイス・リビー、ザルメイ・ハリルザドがいた。
チェイニー、ウォルフォウィッツ、リビー、ハリルザド、いずれもネオコンだが、このドクトリンの基盤を考えたのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。
この人物はバーナード・ルイスなる学者から世界観を学んだのだが、そのルイスはイギリスで情報活動に従事したことがあり、イスラエルやサウジアラビアを支持していた。そのルイスから教えを受けたマーシャルも親イスラエル派で、ソ連や中国を脅威だと宣伝したきた人物としても知られている。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005)
ネオコン系シンクタンクのPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)は2000年に『アメリカ国防の再構築』という報告書を発表したが、そのベースはウォルフォウィッツ・ドクトリン。2001年に成立したジョージ・W・ブッシュ政権はこの報告書に基づいて政策を決めている。ジョー・バイデン政権もこうしたネオコンの計画から抜け出せず、ロシアとの全面戦争に向かっている。
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【Sakurai’s Substack】
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