※2024年9月3日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字起こし
※紙面抜粋
※2024年9月3日 日刊ゲンダイ2面
誰も彼もが裏金事件の真相究明も金権腐敗も頬かむり(左上から時計回りに、今週出馬表明する林、茂木、小泉、高市4氏)/(C)日刊ゲンダイ
今週は総裁選出馬ラッシュ、連日、電波ジャックで大メディアもあーだこーだとやるのだろうが、麻生派も含めた裏金議員票が決選投票でものを言う「刷新茶番」に国民はドッチラケ。
アベノミクスも否定できず、やはり政権交代しかないと確信する1週間になる予感。
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自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)は本番まで10日を切り、今週は文字通りの出馬表明ラッシュだ。3日は林芳正官房長官(63)、4日は茂木敏充幹事長(68)が会見。本命視される小泉進次郎元環境相(43)は6日、高市早苗経済安保相(63)が9日を予定している。加藤勝信元官房長官(68)、上川陽子外相(71)は立候補に必要な推薦人20人の確保に躍起。野田聖子元総務相(63)と斎藤健経産相(65)も滑り込みに必死だが、「推薦人を固めきれず、不出馬の公算大」(自民党関係者)とみられている。それでも、立候補者は過去最多となる見通しだ。
先月19日に「コバホーク」とあだ名される小林鷹之前経済安保相(49)が一番乗りして以降、テレビをはじめとする大手メディアは「ポスト岸田」を狙う面々の動向を追ってきた。小林に続いた石破茂元幹事長(67)、河野太郎デジタル相(61)も露出を増やしている。誰が差配したのか、会見の日時を巧妙に分散させたことで、電波ジャックは間違いなく加速。どこもあーだこーだともり立てるのだろうが、国民はドッチラケだ。
誰も彼もが岸田首相を追い込んだ裏金事件の真相究明も、金権腐敗も頬かむり。自民党の宿痾なのに、岸田退陣でチャラにしようというのだから当たり前だ。
票や人手欲しさで四半世紀超もベッタリしてきた反日カルト集団の統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との癒着もしかりである。
麻生派もやっぱり裏金づくり
裏金事件をめぐっては、新事実が発覚。2022年12月に政治資金規正法違反で罰金100万円などの略式命令を受けた薗浦健太郎元衆院議員(52)が、所属していた為公会(現・志公会=麻生派)の政治資金パーティー収入からの還流を裏口座で管理していたというのだ。少なくとも17年に380万円。東京地検に薗浦公判の確定記録を閲覧申請し、開示を受けた毎日新聞(2日付朝刊)が特報した。
毎日の報道はこうだ。17年当時、薗浦事務所全体の資金管理をしていた元公設秘書の供述調書(22年12月6日付)によると、事務所には「そのけん会口座」という「裏の口座」があり、「政治資金収支報告書に記載せずに選挙などに自由に使える資金を積み立てる」ために使っていたと説明。自作の経理資料を示し、カネの流れを明かしたという。別の元秘書も特捜部の調べに「政治資金パーティーの収入などを収支報告書には計上しない裏金として貯蓄するために開設した」と供述したという。ただ、この時点で公訴時効(5年)が成立していた。
麻生太郎副総裁の側近として知られる薗浦は、18〜20年分の自身の政治資金パーティーなどに関する収支計約4900万円の不記載で有罪が確定。公民権停止3年に処されたものの、「政界復帰は既定路線。党の密使よろしく飛び回っている」(自民党中堅議員)というが、どうなるか。有権者の審判に耐えられるのか。
ア然…自民党の4割近くが裏金議員
すっかり影が薄くなった…(C)日刊ゲンダイ
裏金事件で立件されたのは安倍派、二階派、岸田派だけだが、麻生派も同じやり方でカネをちょろまかしていたのは疑いようがない。そうでなくても、国会質疑などでたびたび指摘されてきた。還流したカネの「出と入り」が18年分以降の派閥・議員双方の収支報告書に記載されている一方、17年以前はないからだ。いつだって保身第一の岸田がブチ上げた派閥解散宣言を無視し、表向き唯一存続している麻生派は、17年7月に山東派などと合併。「為公会」から「志公会」に名称変更した。これを契機に収支報告書への記載へ転じ、裏金事件でシラを切り通した可能性が極めて高いのだ。自民党のアンケート調査が対象期間を18年以降の5年分としたのは、麻生への忖度だったのか。そう勘繰りたくなる。
総裁選に1票を投じることができる自民党議員は衆参両院合わせて367人。そのうち、80人あまりが裏金議員だ。麻生派も裏金づくりに手を染めていたとすれば、これに50人超が乗っかる。全体の4割近くを占める裏金議員票が決選投票でモノを言う「刷新茶番劇」。それが総裁選の実態だ。高揚なき虚ろな1週間となること請け合いである。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう指摘する。
「われもわれもと声を上げ、挙党態勢で刷新感を懸命に打ち出しているのは、人材はいると取り繕っているに過ぎず、刷新できない裏返し。立候補予定の面々は一様に世論が求める裏金事件の再調査に腰が引けていますが、麻生派をめぐる新たな事実が判明した以上、新総裁が着手するのは当然です。自民党全体が、そのあり方を問われている。岸田首相が中途半端に終わらせた政治資金規正法改正についても、踏み込んだ対応をする必要がある。金権腐敗の温床となっている企業団体献金、政治資金パーティー、政策活動費は禁止する。この程度のことができなければ、国民の理解は得られないし、信頼回復なんて到底できません。自民党は国家を食い物にし、詐欺を働いてきた犯罪者集団と言っていい。本来であれば、国民に謝罪し、解散するのが筋なのです」
戦争シフトの改憲を争点化
ところがどっこい、憲法改正を争点化して乗り切ろうとしているのだから度し難い。2日の党憲法改正実現本部で、自衛隊明記に向けた改憲の論点整理を了承。現行の9条を維持した上で「9条の2」を新設し、自衛隊を追記する案を軸とする内容だ。岸田は「複数のテーマを一括して国民投票にかけるべく議論を加速する準備が整った。一気呵成に進めなければならない」とハッパをかけていた。憲法改正に向けた機運はちっとも熟していないし、むしろ世論がせっついているのは選択的夫婦別姓制度の導入など、現実に即した法整備だ。にもかかわらず、伝統的家族観を押し付ける右派組織「日本会議」や統一教会に支えられる自民党は、主権者国民の声を無視し続けている。そもそも、法令を順守できない連中が憲法に手を付けようなんて倒錯だ。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「第2次安倍政権以降、『数の力』を謳歌してきた自民党は、国民主権国家であることを忘却している。それほど、われわれを愚民扱いしているのです。百歩譲って、憲法改正で平和国家をより強固なものにしようというのなら、まだ分かる。言うまでもなく自民党がやろうとしているのは、いつでも米軍にくっついて戦争ができる国づくりです。本命視されている進次郎氏が新総裁、新首相に選出されようものなら、この国はそれこそ一気に危うくなる。父親の小泉純一郎元首相のコネで、日本外交に絶大な影響力を持つジャパンハンドラー系シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)の研究員となり、日本がすべき振る舞いを叩き込まれています」
庶民が円安物価高に苦しむ一方、インバウンド客はエンジョイする「安いニッポン」を招いたアベノミクスを否定することもない。やはり政権交代しかないと確信する1週間となる予感である。
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