野党勝利のためには自民党は「高市早苗新総裁」が望ましい 古谷経衡 猫と保守と憂国
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2024/08/21 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
古谷経衡氏(提供写真)
9月27日に行われる自民党総裁選で、出馬に意欲を示している者だけでも10人を超える混戦になっている。もっとも実際には、ここから数人が脱落するだろう。しかし自民党始まって以来の総裁候補者数になる可能性は高い。
自民党内力学の筋論で言えば、本命は河野太郎、林芳正、茂木敏充、加藤勝信あたりになるだろうが、党員党友票を加味し、きたる選挙に勝てる総裁でなければならず、そうなると石破茂、上川陽子、小泉進次郎、野田聖子、高市早苗などが十分に射程に入ってくる。総裁選は一度の投票では決せず、決選投票になろう。票読みは極めて難しい。
旧統一教会や裏金問題などのマイナスイメージの払拭、そして宏池会にもかかわらず第2次安倍政権よりタカ派色を鮮明にした岸田政権と一線を画するとすれば、石破、野田、林、河野、小泉あたりが次期総裁になると、ひとまず自民党の負のイメージは「なんとなく」刷新された印象を与える。早期解散となれば、議席は増えはしないが減りも少ない、という自民党にとって「理想的状況」が出現しよう。よって自民党政権はまず「延命」されることになるが、日本の根本的構造は何ら変わらない。根本的構造とは、旧態依然とした産業構造や団体と政官の癒着による、経済における新陳代謝の阻害である。新産業の勃興と、移民の受け入れ、それによる社会意識や民主的自意識の進歩が成されなければ、日本復興の可能性はゼロである。自民党政権である以上、これら諸改革は1世紀を経ても達成できない。
そうすると、次期総裁に最もふさわしいのは高市早苗になる。高市は前掲したすべての「進歩」と無縁どころか逆行する政治家だからである。そうなると対する野党は、高市総理総裁であれば強力な対立軸を生み出すことが容易となる。非改革、非人権意識、親米ならぬ「拝米」の高市総裁なら、野党は取り立てて対立軸を意識する必要はない。野党にとっては高市が最も戦いやすい。自民党政権がだらだらと延命するよりも、この宿痾に終止符を打つには逆説的に高市がふさわしいというわけだ。もし高市が総裁になれば、最後の自民党総裁として記憶される目が出てくる。
「日本がもっと酷くなった果てにある再生」。このような考え方を加速主義などと言うが、私もこの立場を支持する以上、なまじ「まとも」な人間が総裁になることには反対である。
だが、そうやすやすと「筋書き」通りにはいかないだろう。高市新総裁となれば、岩盤保守からの熱狂的な支持により、大手メディアは強く忖度する。加えて史上初の女性首相の誕生で、世論一般の批判は抑制される。海外メディアも「女性」という一点で称揚し、その評価が逆輸入され国内での支持率にはポジティブだろう。結局、翼賛体制は継続され、野党の低落は続く、というシナリオは容易に予想される。
さすれば、「意味不明な答弁」で墓穴を掘る小泉あたりが御の字だろうか。どのみち、私は次期総裁にまったく期待していない。誰が新総裁になっても、もはやそれを覆すだけの民主的パワーが日本には存在していない、という諦観もある。個人的には石破が好きだが、この中でもっとも「まとも」な政治家であるがゆえに、自民党総裁にはもったいないという気もする。
古谷経衡 作家
1982年生まれ。立命館大学文学部史学科卒。令和政治社会問題研究所所長。「左翼も右翼もウソばかり」「日本を蝕む『極論』の正体」「毒親と絶縁する」「敗軍の名将」「シニア右翼」など著書多数。
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