※2024年7月17日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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※2024年7月17日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
立憲民主の泉健太代表(C)日刊ゲンダイ
疑惑の女帝が余裕の3選を決めた東京都知事選、同日投開票された都議補選のショックは広がるばかりだ。
裏金事件でダウン寸前の自民党は独自候補を擁立できず、小池百合子知事に抱きついた上のステルス支援で大型選挙連敗を表向きストップさせたが、存亡をかけた補選は2勝6敗の大惨敗。判明分だけで2728万円もの裏金をつくりながら、小池とのパイプ優先で続投した党都連会長の萩生田光一前政調会長はきのう(16日)、辞任表明に追い込まれた。都連の幹部会合後、ぶら下がり取材に応じた萩生田いわく、「指揮を執った私の責任は大きかったと思ってます」「国政のさまざまな影響もあったというふうに判断しました」。今さら形ばかりのケジメではあるが、仕切り直して来年の都議選や参院選に備える構えだ。年内に解散総選挙へ突入する可能性も十分ある。
かたや相も変わらずグチャグチャやっているのが立憲民主党とその周辺だ。小池の対抗馬として送り出した蓮舫前参院議員はマサカの失速。ポッと出の前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏の後塵を拝し、3位に沈んだ。それでやり玉に挙げられているのが、共産党との連携である。
首長選おきまりで蓮舫は無所属で立ったが、立憲、共産、社民党と組んで戦った。現職の小池が裏金自民、その下駄の雪の公明党、日本維新の会とゆ党の座を争う国民民主党都連、特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」の全面支援を受けていたのだから、野党ががっちりタッグを組まなければ挑みようがなかった。そこへ案の定の猛批判だ。発信源は強烈な共産アレルギーで知られる連合の芳野友子会長。連合は立憲の支援組織であるにもかかわらず、「誰がトップであろうとも“知事与党”であることが絶対」(連合関係者)がスタンスの連合東京は勝ち馬とみた小池支援に回った。
その言い草に蓮舫もカンカン
それにしてもまあ、芳野氏の言い草は「それ見たことか」と言わんばかり。都知事選投開票から4日後、11日に行われた立憲の泉健太代表らとの会談で「4月の衆院東京15区の補選で共産党と並んで活動したことに、連合として看過できないという見解をまとめたが、今回の都知事選ではさらに共産党が前面に出すぎて、蓮舫氏が共産党の候補者のように見えてしまった」などとタラタラ。その後のぶら下がり取材でも、「東京の取り組みは全国に与える影響が非常に大きく、共産党が前面に出すぎて逃げた票があったのではと申し上げた。衆院選に向けて戦いやすい形は立憲民主党と国民民主党、それに連合がひとつのかたまりになることで、選挙区調整は両党の間で行ってほしい」とネチネチやっていた。
連合会長というのは裏金自民の回し者なのか。一緒になって小池を応援した連中が「共産党排除」を押し付けるなんて倒錯としか言いようがない。共産の小池晃書記局長は「根拠を示してほしい。共産党のせいにさえすれば何でも通用するというような非常にレベルの低い発言だと言わざるを得ない。看過しがたい」とカンカンで、当の蓮舫もX(旧ツイッター)にこう投稿している。
〈現職に挑戦した私の敗因を、現職を支持した貴女が評論ですか。
私は今回公契約を活用した労働条件改善を強く提案。若者の雇用環境改善も提案しました。
本来、労働者を守る連合が要求する内容でもあります。
組合離れはこういうトップの姿勢にもあるかもしれませんね〉
怒り心頭なのはもっともだ。
政府与党におもねる労働貴族に発言の資格なし
一体どこを見ているのか(連合の芳野会長)/(C)日刊ゲンダイ
都知事選を注視し、公式ユーチューブチャンネルなどで発信してきた精神科医の和田秀樹氏もこう指摘する。
「連合会長に『共産党排除』を言う資格があるのでしょうか。はなはだ疑問です。労働組合は何のために組織されるのか。労働者の賃金を引き上げるためです。30年以上も賃金は横ばいなのに、企業は550兆円超もの内部留保をため込んでいる。この間、労働者の代表を標榜する連合はストを呼び掛けるどころか、ろくにアクションを起こさなかった。労組の体をなしていません。彼らは労働貴族です。共産党は旧ソ連や中国のような体制をつくろうとしているのではなく、労働分配率を向上させるのが基本的な考え方。連合会長は立憲民主党が共産党と連携すると票が逃げると言いますが、勤め人を軽視する自民党をよしとするから小池知事に相乗りしたわけでしょう。『労使協調』とか言って政府や大企業におもねり、物価上昇を上回る賃上げを引き出せない。それでも労組なのか、という話ですよ。右往左往している泉代表はコトの本質が分かっていないのでしょう」
いま世論が求めているのは野党が中心となった政権樹立だ。ANNの世論調査(13、14日実施)でも、次期衆院選を経て「自公政権の継続を期待する」と回答したのは38%にとどまり、「政権交代を期待する」の43%を下回った。自民下野への圧力は強まっている。
自民党の手下か第2経団連か
一方、2021年10月に芳野体制に移行した連合は常に野党共闘に横やりを入れてきた。岸田政権発足直後の衆院選で共産と「閣外協力」に踏み込んだ立憲が公示前勢力を割り込むと、「(連合が一丸となる)困難さを増長させた」と批判。新年交歓会やメーデー中央大会に岸田首相を呼んだり、自民の麻生副総裁や小渕組織運動本部長(現・選対委員長)との会食にのこのこ出かけていた。
この間、実質賃金は過去最長の26カ月連続のマイナス。野党を分断させ、腐敗与党を増長させ、手取り減を傍観するだけの連合は百害あって一利なしだ。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言った。
「連合は一体どこを見ているのか。労働者を代弁する組織なのか。野党を応援しているのか。あるいは第2経団連を目指しているのか。はたまた第2自民党か。自民党の手下のように振る舞ったり、立ち位置がさっぱり分からなくなっている。連合の動きが野党に対する誤解を招き、ひいては国民にとってマイナスに作用しています」
立憲が排除すべきは腐りきった連合の方だろう。
女傑2人とは異質なトリッキーさで見せ物になった石丸に票を投じた有権者はどう見ているのか聞きたいものだ。政党不信を深め、小粒なポピュリストと一体化した無党派層は内ゲバを冷笑しているのではないか。
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